くらしの漢方
漢 方 Q & A 
「くらしの漢方」(愛育堂)によくよせられる、みなさまからのご質問とその回答をまとめてみました。ぜひ参考にしてみてください。(目次表示)
◇ 漢方薬全般に関するご質問 ◇

Q. 漢方薬は高価だという印象がありますが、本当ですか?

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A. 一般的に高価になりがちですが、そうでない漢方薬もあります。

  漢方薬の原料となる生薬(動植鉱物)にはそれぞれ、最も育ちやすい環境である「環境産地」というものがあります。
  また、生薬そのものの品質を高める(有効成分が安定して、一定量含有されている状態にする)ためには、それなりの管理が必要になります。
  漢方薬は、このように手間暇かけてつくられた貴重な生薬を、一定の処方に従って調合して作るわけですから、(調合する生薬の数にもよりますが)どうしても高価にならざるをえない傾向にあります。
  薬剤師にとって、患者さんの様態や薬そのものに関するご相談に応じることはもちろんですが、漢方の価格を含めた、包括的なご相談に応じることもまた、重要な役割であると考えています。
  一方、患者さんにとっても、価格のことを含めて、あらゆることを心置きなく、きちんと相談できる薬局、薬剤師を見つけ出すことも必要になってくると思います。
Q. 漢方薬の購入代金を医療費控除の対象とすることはできますか?

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A. ケースバイケースです。薬剤師にご相談ください。

  「医療費控除」とは自分自身や家族のために、病院や薬局その他医療機関に支払った代金(=医療費)が、年10万円を超えた場合、10万円を超えた分に対する税金が税務署から戻ってくる(=還付される)という制度です。
(還付を受けるためには、確定申告で、1年間に支払った医療費を申告する必要があります。)
  質問の主旨は、漢方薬の購入代金を、その医療費に含めることができるかどうかということですが、購入した漢方薬が、治療、療養ため必要であることが明らかな場合は、医療費として含めることができます。しかし、単なる病気予防や健康増進のためのものは含めることはできません。
  また、法律で「医薬品」として認められていないものについても、医療費に含めることはできません。
  ただ、購入した漢方薬が医薬品に該当するかどうか、治療、療養のために必要であるかどうかを判断するのは、きわめて繊細な問題です。
  個々の詳しいケースについては、服用している薬にきちんと責任をもち、信頼できる薬剤師に相談してみてください。

※なお、「医療費控除」の詳細につきましては、お近くの税務署または、国税庁にお問い合わせください。

Q. 普通の病院で漢方薬の処方箋を書いてくれるように依頼することはできますか?

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A. 医師に処方箋を依頼することはできます。医師、薬剤師にご相談ください。

  病院で処方される薬は、お医者さん(医師)の検査、問診によって決定されます。従って、処方される薬を西洋薬にするか、漢方薬にするかの判断は基本的に、お医者さんの責任によって行われます。
  しかし、単に漢方薬についての知識が不足しているため、漢方薬の処方を行わないというお医者さんもいらっしゃいますので、今服用している漢方薬が調子が良いといった場合には、お医者さんに相談してみるのがよいと思います。
  その場合、お医者さんと薬剤師との間で、処方について相談する必要が出てくるかもしてませんが、そのときは、お医者さんに 「漢方薬の処方をお願いしたいため、愛育堂の高岡宣子にお電話していただけますか」 と言っていただければ、私が患者さんとお医者さんの間に立って、 お医者さんとお話させていただく頂きます。ご遠慮なく、お申し付けくだ さい。

※処方箋に基づいて漢方薬を購入すると保険が適用されますので、一般の薬と同様、3割負担で漢方薬を購入できるようになります。

Q. 漢方薬による治療は時間がかかるというのは本当ですか?

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A. 治療期間は、病気、病状、患者さんの体質によって異なります。
  一般的に漢方薬には即効性がないように思われがちですが、風邪などの症状には、即効性のある漢方薬で対処します。
  患者さん個々人の状態にもよりますが、たとえば慢性疾患や成人病などは、その病態にいたるまで、おそらく何年にもわたって蓄積されてきた病根があると考えられます。漢方では、そのような症状に対しては、一過的な対処療法によるのではなく、根源治療を目指した体質改善からアプローチします。
  その際、結果的に治療期間がどのくらいかかるかは、患者さんの病状や体質によって異なってきますので、かかりつけの薬剤師に相談してみてください。
  一般論ではありますが、病気を早く治すためには、患者さん本人が病気治療に対する明確な自覚を持っていただくことが必要になってきます。
  薬にのみ頼るのではなく、食生活等、ご自身の生活スタイルを、真摯に見直すことが重要です。
Q. 市販の薬と漢方薬を併用しても大丈夫ですか?

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A. 薬によって異なります。薬剤師にご相談ください。
  最近、胃腸薬や風邪薬、咳止め等の西洋薬にも、生薬(漢方薬の原料)から抽出したエキスを混ぜ合わせているものや、漢方薬自体を加えているものが多く見受けられるようになりました。
  市販の薬では、詳しい処方内容が記述されていない場合があります。そのため、服用されている漢方薬と、成分が重複する可能性があります。
  漢方薬を服用されている方は市販の薬を購入する際に、逆に、市販の薬を服用されている方は、漢方薬を購入する際に、それぞれの薬剤師に相談してみてください。
Q. 漢方薬は、食前、食後のいずれに服用するのが正解ですか?

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A. どちらが正解というわけではありません。
  一般的に空腹時が最も薬の吸収がよいとされていますので、食前または食間(朝食と昼食、昼食と夕食、夕食と朝食の間の意味です。食事中という意味ではありません。)に服用されることが多いようです。
  しかし、患者さんによっては、漢方薬といえども胃に負担のかかる方がいらっしゃいますので、一概に、食前、食間がよいというわけではありません。
  いつ薬を服用すべきかについても、薬剤師に相談してみてください。
Q. 漢方薬をオブラートで包んで飲んでも大丈夫ですか?

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A. 大丈夫です。問題ありません。
  漢方薬には、錠剤、丸剤のあるものもあります。また、エキス剤のようにお湯に溶かして飲むものもあります。
  どうしても、粉剤が苦手という方は、薬を処方してもらう際に、薬剤師に相談してみてください。ただ、私の経験からすると、服用していくうちに慣れてしまわれる方が多いようです。
  最も重要なことは、継続して薬を服用することです。粉剤が苦手なために、服用できないということになれば、本末転倒ですので、服用方法についても、薬剤師に相談してみてください。
Q. 同じ病気なら、家族で同じ漢方薬を服用しても大丈夫ですか?

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A. そのようなことはなさらないでください。
  たとえ家族でも、1人1人の体格や顔かたちが違うのと同様に、体質についても異なってきます。
  薬剤師が問診をし、患者さん本人に合わせて処方した漢方薬であれば、その薬は、その患者さん本人に対してのみ有効な薬だと考えてください。他人の薬は服用しないようにしてください。
  ただ、風邪のような症状であれば、数種類の薬を常備しておき、家族で服用するというようなことは可能です。しかし、その場合でも、どういった薬を常備しておくべきなのか、薬剤師に相談する必要があります。
Q. 漢方薬に塗り薬はありますか?

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A. あります。
  塗り薬を1つ紹介いたします。江戸時代の名外科医 華岡青洲 考案の「紫雲膏」という塗り薬があります。
  その名の通り、紫色をしており、消炎、鎮痛、殺菌、止血等の効能があり、皮膚の新陳代謝を高め、新しいきれいな皮膚の再生を手伝います。あせもや水ぶくれ、外傷、やけど、痔、しもやけ等に広く試用されます。  

◇ 病気に関するご質問 ◇

Q. ダイエットに効果のある漢方薬はありますか?

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A. あります。ただし、肥満のタイプ、原因によって、処方する薬は異なります。
  肥満に対する漢方薬の処方は、肥満のタイプと原因によって異なってきます。
  最も一般的な皮下脂肪型の肥満に対しては、「防風通聖散」、小太り型の肥満に対しては「防已黄耆湯」を処方します。
  しかし、冷え性、便秘、血流の悪さ、胃腸の弱い人、ストレスの多い人など、肥満を引き起こす根本的な原因を解消しない限り、ダイエットの成果をあげることはできません。肥満もまた体質の問題です。
  直接ダイエットに関係ないと思われがちですが、体質を改善しない限り、例え一時的にダイエットに成功したとしても、再び元の体型に逆戻りしてしまいます。
  ダイエット成功の秘訣は、体質改善であり、それはイコール生活改善です。
Q. 花粉症に効果のある漢方薬はありますか?

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A. あります。ただし、花粉症の症状、体質によって、処方する薬は異なります。
  一口に花粉症といっても、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、頭痛と、人によってその症状は千差万別です。漢方薬の処方を行う際にも、それぞれの症状の原因を見つけることが大切になってきます。また、患者さんの体質によっても処方が変わってきます。
  とはいえ、症状が出ているときは、一刻でも早くとめたいものです。花粉症に対する漢方としては、「小青竜湯」「葛根湯加川弓辛夷」「越婢加朮湯」等が一般的です。ですが、これらはすべて、対処療法に近い処方になります。
  花粉症は、アレルギーです。従って、花粉症の根本的な治療もまた、そのアレルギー体質を改善することにあります。
  アレルギー体質の改善に対する漢方としては、「補中益気湯」「六君子湯」「六味地黄丸」がよく処方されます。
Q. 便秘に効果のある漢方薬はありますか?

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A. あります。ただし、便秘の原因によって、処方される薬は異なります。
  便秘には「センナ」「アロエ」「ダイオウ」が良いとされています。これらは腸を冷やすことによって腸に刺激を与え、排便を促す作用があります。そのため、人によっては、腸のけいれんを引き起こし、腹痛を誘発する恐れがあります。
  また、「センナ」「アロエ」「ダイオウ」による腸への刺激は、比較的慣れやすいため、結果的に摂取量が多くなる傾向にあります。摂取量が多くなると排便作用は増しますが、その分、腸の冷え具合も増加し、けいれんによる腹痛は更にひどくなる可能性があります。最悪の場合には、不妊や生理痛の原因にもなりかねませんので、気をつけてください。
  便秘にもタイプがあります。老齢の方は、食事の量、体の水分が少ないため、便秘になることが多いのですが、この場合には「麻子仁丸」を処方します。また、ストレスによる場合は、「加味逍遥散」を処方します。
  いずれにしろ、便秘の度合いと症状によって、処方する薬は変わってきますので、健康的に便秘を解消したい方は、薬剤師に相談する必要があります。
Q. アトピー性皮膚炎に効果のある漢方薬はありますか?

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A. あります。ただし、アトピーに完治はないと思ってください。
  アトピーは、西洋医学であっても東洋医学であっても完治させることはできないと考えています。寝不足、食生活のみだれ、ストレス等で悪化することを常に頭においてください。
  とはいえ、通常の生活を送れるレベルまでは良くなります。そのためには、薬による治療ももちろんですが、なによりも、食生活を含めた生活習慣を変えることが必要になってきます。自分の体と体質に素直に正面から向かい合うことが大切です。  
Q. 不妊症に効果のある漢方薬はありますか?

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A. あります。ただし、体質、症状によって、処方される薬はことなります。
  私の経験からすると、不妊症の方には冷え性の方が多いようです。従って基礎体温をみながら治療を行うのが良いと思われます。
  ほんの一例ですが、冷え性の方には「温経湯」、血流のめぐりが悪い方には「桂枝茯苓丸」、水分代謝の悪い方には「当帰芍薬散」、ストレスの多い方には「加味逍遥散」を処方することが多いようです。
 「桂枝茯苓丸」と「当帰芍薬散」の入った「フジンゲ」という商品もあります。
  また、不妊症という病気は、その性質上、大変デリケートな病気です。いろいろなことを安心して相談でき、信頼できる薬剤師を見つけることが何よりも大切なことだと思います。
Q. ガンの予防に効果のある漢方薬はありますか?

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A. 普段からの心がけこそが、なによりの予防薬です。
  ガン細胞が、体が本来的に持つ自己免疫力の攻撃に耐え、ついには数センチに及ぶまで増殖しつづけるには、相当な期間に及ぶ自己免疫力の低下状態が続いている必要があります。ガンは、そのような自己免疫力の低下状態によってもたらされる病気だと考えて下さい。
  逆に言うと、ガンを予防するためには、自己免疫力の低下を防ぐようにすれば良いということです。そのためには、体のバランスが崩れたときには、一日も早く元の状態に戻すように心がけることが必要です。
  常日頃からの健康状態に対する配慮こそが、何よりも有効なガン予防であるということです。

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監修の責任はすべて、くらしの漢方にあります。