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紙芝居「岩ぶちのカッパ」

 むかし、むかしのことじゃがのー。荒川って川はなあ、あばれ川でなあ。雨が三、四日も降ると原目村はなあ、水つきになってしもた。
 そしてな、原目山のそばで荒川が当たるところはな、とてもとても深くなっていてな、気味の悪いところやったんや。  村のもんは岩ぶちへは近づかないもんだ。
 ところがある日の午後のこと、上中のやだぼうらが親にかくれて釣りに出かけたんやと。
 すると、つれるわつれるわ、フナもコイもナマズもアカモツもつれたそうや。
 あんまりつれるもんで、時間がたつのもわすれてしもうて、みんながつっていたんやと。
 日が落ちてあたりが薄暗くなったときらしいな、三本指の細い手がそろそろ川の中から伸びてきて、一人の足首をぐっとつかんだんやと。そして、ぐいっとひっぱるもんやから、どっぽんと大きな音がして、その子はぶくぶくと沈んでしもたんや。
 周りで釣っていたやだぼうどもは、おーいと探すんやけど、あとはしーんとしているもんで、うすきみわるくなって、 「わーっ」 というと、何もかも放り投げて飛んで帰ったんやと。
 薄暗くなってから、二人が真っ青な顔になって帰ってきたがきを見て親は、
「どうしたんや、どうしたんや。」
と聞いたもんは、
「まっちゃんが川に入ってしもたあ」
と言うもんで、ちょうちん持つやら、そしてくわやすきまで持っていったそうや。
 一生懸命探したが見つからなかったそうだ。真っ暗闇になったので、明日また探そうと言ってすごすごと帰ったそうや。
 それから一週間、村中のもので探したが、どうしても見つからなんだそうや。
 それからは、だれが言い出したんか知らんけど、まっちゃんはかっぱにさらわれたってことになったんやと。

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