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紙芝居「おこり神」

 みなさん、上中町の西の方の田んぼの中に一メートル四方ぐらいの小さなおじぞうさんみたいな形の石があるのを知っていますか。それがおこり神様です。
 明治のはじめ頃からあるそうです。あるおじいさんが田んぼの真ん中にあるのでじゃまだから動かしたところ、熱病になってしまったので、「おこり神」という名前がついたのです。熱病になった人は、そこへお参りすると熱病が治るそうです。しかし、お参りに行って帰るときは、来た道と同じ道を通ってはいけないという決まりがありました。
 昔、ある幼い子どもが、熱病になりました。
「おっかあ、おっかあ、つらいよ。つらいよ。」
「そんなにつらいのかい。それだったら、おこり神様のところに行くといい。おこり神様にお参りをすると、熱病が治るという言い伝えがあるから。」
 子どもはそこで、おこり神様のところへお参りに行くことにしました。
 子どもは、おこり神様の所まで、一生懸命歩きました。一人で行かないと効き目がないので、おっかあは行きませんでした。
「おこり神様、おこり神様、お願いです。私の熱病を治してください。」
 そう言うと、どこからか声がしてきました。
「うむ、わかった。熱病を治してやる。でも、今来た道をぜったい通って帰るんでないぞ。」
おこり神様の声を聞いて、こどもは、
「はい。」 と返事をしました。
 しかし、おこり神様の約束をこの子はすぐに忘れてしまって、同じ道を通ってしまいました。
 次の日になっても、熱病は治りませんでした。
「おっかあ、おっかあ、つらいよう。」
「もう一度行ってみなさい。ただし、おこり神様の言うことは、ちゃんと聞くんだよ。」
「わかったよ。」
 この子は、またおこり神様の所へ行きました。
「おこり神様、おこり神様、きのうはおこり神様の約束を忘れてしまって本当に申し訳ありませんでした。こんどは守りますから、許してください。」
「うん、いいだろう。ぜったい今度は約束を守るんだぞ。」
「はい。」
 幼い子は、今度こそ同じ道を通らないで帰りました。すると、熱病は一日、一日と治ってきました。
「おっかあ、もう熱病治ったよ。」
「そう、よかったね。」
 それから四十年たって、木村ゆかちゃんという赤ちゃんが生まれました。その子は、だんだん大きくなって、五才になりました。
 ある日、とても高い熱が出ました。
「お母さん、つらいからおこり神様の所へいってきてもいい?」
「いいけど、おこり神様の言うことを聞くんだよ。」
「わかったよ。行ってきます。」
ゆかちゃんは、おこり神様のところへ行きました。
「おこり神様、おこり神様、どうかこの熱病を治してください。」
そう言うと、どこからか声がしてきました。
「よし、いいだろう。熱病を治してやる。しかし、今来た道を通るでないぞ。」
ゆかちゃんは、
「はい、わかりました。」 と言いました。
 四十五年前の幼い子どもは、一回目に同じ道を通ったので二回も行ったけれど、ゆかちゃんは、一回目からちがう道を通りました。そして、熱病が治りました。
めでたし、めでたし。
 みなさんも、熱病になったら、おこり神様へお参りに行ってみませんか。お話に出てきたように帰るとき同じ道を通らなければ、きっと治りますよ。

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