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紙芝居「おさきばさん」

 むかしむかし、おさきさんという人がいてのー、とっても働き者でのー。
 十五才の時に、上中のごんさんの嫁になったそうや。
「パンパカパーン、パンパカパーン、パンパカパンパカパンパカパーン」
「苦労もあるかもしれんけど、いっしょにがんばろうのー。おいらも手伝うからのー。」
 だんなさんのごんさんはの、草ずもうが強うてのー、草ずもうがあれば、いつも出かけて行って、必ず賞品を持って帰ってきたそうな。
「今日も賞品もらったぜー。」
「またもらってきたんかいな。もううちは、賞品だらけや。」
 このようにごんさんは、家の仕事は全部おさきさんに任せて、自分は何もせんかったそうや。
 おさきばあさんはのー、朝はよ起きて、いろいろ働いてのー、毎日毎日、目の回る忙しさやったそうや。
「今日は草とり、その次は納屋の仕事。がんばるぞー。」
 毎日毎日仕事ばっかりで外に遊びに出たことはまったくなかったそうや。
 だんなさんのごんさんが亡くなったときには、五十才になっていた。
 だんなさんが亡くなり、子どもも大きくなったので、ようやく暇な時間ができてきた。
 そんなある日、おさきさんはおたねさんに誘われてお寺参りに行った。
「初めて外に出たからのー、どこがどこだかわからんわい。」
 そんなおさきさんを見て、村中が大騒ぎしたそうや。
「仕事をしているおさきさんなら見たことあるんじゃけどー。お寺参りに来るおさきさんは見たことないわい。」  
 それから、しばらくたったある日、おさきさんは初めて上中の村を出た。通り道にある物が何もかもめずらしくて何もかもわくわくしたそうな。それからは一本道、ようやく隣村の寮に着いた。
「広い広い田んぼじゃ、日本は狭いって聞いたが、ひろいのー。」
「おさきさん、なにいってるの。まだ隣村やのに。もっともっと日本は広いのにのー。」
 おさきさんが感心しているので、おたねさんは開いた口がふさがらなかったそうや。

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