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紙芝居「りゅうが火をけした」

 今から六百年の昔、明とう三年ごろ、このあたりには、藤島城がありました。
 ある日、本願寺というお寺のお坊さんと、藤島城のお殿様が相談をしました。
「この藤島城をこわして、お寺を建てようと思うのじゃが、協力してくれるかのう。」
「いいじゃろう。」
 そして、お寺が建ちました。それが藤島の西超勝寺です。
 そのお寺には、左甚五郎の龍の彫刻がありました。
 ある日、お寺が火事になりました。
「わあ、火事だ、火事だ。お寺が火事だ。」
「川から水を汲んできて火を消してくれるものがおればいいのじゃが。」
「だれか、助けてくれえ。」
と、人々は、叫ぶように言いました。そして、心の中で「神様、神様」と祈りました。
 その時、左甚五郎の龍の彫刻が本物の龍になりました。龍は、前に流れている川におりて、川の水をごぶごぶ飲みはじめました。
「この龍は、火を消してくれるのか?」
「水を飲んでいるから、いい龍かもしれないな。」
「でも、村を水びだしにしてしまうかもしれないぞ。」
「避難したほうがいいかもしれんぞ。」
「うん、そうだ、そうだ。」
みんなは、口々に言いました。
 龍は、水を飲み終えると、お寺に向かって水をものすごい勢いで吹きかけました。でも、なかなか火は消えませんでした。
 村の人たちは、
「がんばれ、もう少しだ。がんばれ。」
「火はもう少しで消えるぞ。龍よ、がんばれ。」
「がんばれ、がんばれ。」
と、応援しました。
 龍もがんばって水をお寺に吹きかけました。
 とうとう、火は消えました。村の人たちは、喜びました。
「やったぞ、お寺の火は消えたぞ。この龍は、いい龍だぞ。」
「やっぱり、この龍はいい龍だったんだ。」
「やった。」
「ありがたや、ありがたや。」
 そして龍は元の彫刻の龍に戻りました。
「龍の彫刻は、村を救った英雄だ。」
 その後、彫刻の龍は戦や争いがあると本物の龍になってみんなを助けたそうです。
 西超勝寺は、今も東藤島の宝物として残っています。
 不思議な龍のお話です。

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