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紙芝居「たつの山」

 むかし、むかし、今の藤島駅のそばには、たつの山って小高い丘があった。  その岡は、一丈ほどの高さだった。おなご竹がたくさん生えていて、トンボつりや、すぎでっぽうがほしいもんで、子どもたちが出かけたそうな。
 なお、秋になると、あけびがさがってな、先を争って取りに行ったもんや。
 ほやけど、この丘にはきつねやたぬきがすみついていてな、よく子どもを化かすっていう話もあったもんで、一人で出かけるのは怖かったっていうことや。
 ところがあるとき、田んぼの最中の忙しいときにたっちゃんというその子が一人でたつの山に行って帰って来んから大騒ぎしたことがあった。
 たっちゃんは、学校から帰って田んぼで働いている母ちゃんのところへいってぐずったらしい。何でも、友達の持っている竹でっぽうを作ってくれってな。
 ところが忙しい最中や。そんなことで怒って帰ったらしいわ。それからのことはだれもしらん。
 暗くなってもたっちゃんがいないもんで、田んぼから上がったうちのもんが探しにいったらしい。
 どうしてもおらんもんで、近所のもんに聞いて歩いたらしいわ。近所のもんは、
「そりゃおーごっちゃー。」
そうゆうことで、つぎつぎ集まり、そんならきっとたつの山に行ったんじゃないかって、みんなで出かけたそうや。
 みんなでちょうちん持ってたつの山に行ってみると、ちいさい丘やもんですぐ見つかった。
 草の上で寝ていたそうや。
「おーい、たっちゃん。」
と言うと、びっくりして飛び上がり、きょろきょろ見回して泣き出したんや。みんなよかったよかったっていって引き上げたんやが、あれはきつねかたぬきにばかされたということになったんや。
 それで、たつの山へは、この村のもんは、だれも一人では行かんようになったんや。

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