神の身元に
―後編―


天空の神殿に行ってアンドレに会うには1つの事意外全てのことを忘れなくてはいけない。
何が一番大切か。何を絶対に忘れたくないのか?
オスカルにとって辛い選択だった。

『ココが天空の神殿です。』
天空の神殿への道のりは遠いものではなかった。
ベルサイユ宮殿より素晴らしい神殿であった。
『ま、まってくれ!私はまだ心の準備が!』
オスカルは取り乱した。
するとソフィーヌは手をパンと叩いた。すると白い薔薇が現われた。
『喪失の白薔薇です。この花弁を1枚採るごとに1つの事を忘れられます。』
スフィーヌは喪失の白薔薇をオスカルに渡した。
1枚花弁を取ってしまえば1つの事を忘れてしまう・・・。
自分にとって大切な人・・・それは・・・。

自分を産み育てた父上、母上。
自分に地位を与えてくれた国王陛下、王后陛下。
自分を心から認めてくれた衛兵隊。
いつも暖かい目で自分を育てたばあや。
初恋の人フェルゼン。
自分の春風だったロザリー。
平民の在り方を教えてくれたベルナール。

自分を心から愛してくれた夫アンドレ。

忘れられない。生前にあった事、出会った人。
忘れられる訳が無い!忘れたくない!
たった一人にだけにする事はできない!

『オスカル様?どうなさったのですか?』
ソフィーヌは心配そうに聞いた。
『ソフィーヌ。私は天空の神殿で暮らさなくてもいい。』
『え?何をおっしゃるのですか!』
『生前の大切なことを全て忘れてしまうくらいなら地獄に落ちてもかまわない!』
オスカルは喪失の白薔薇をソフィーヌに返した。
『アンドレに伝えて欲しい。生まれ変わってもお前のことだけは忘れないと。』
天空の神殿に行ってアンドレに会いたかった。もう一度話をしたかった。
でも、それだけのために他の大切な事を忘れることはできない。
夫であるアンドレは何より大切だ。
しかし、他のひとも同じように大切だ。
忘れたくない。絶対に。

そのとき。

『オスカル様!お待ちください!』
腕を掴むソフィーヌ。
『合格です!天空の神殿は心が清い人しか入れません。だからこうやって試すんです。』
『試す・・・?』
『心が汚い人間ばかりの世の中で貴重な存在となった心の清い人。』
ソフィーヌはまた、パンと手を叩いた。
『天空の神殿で安らかに過ごしてください。』
そこに、アンドレが現われた。
『オ、オスカル!』
『アンドレ!』
かくして2人は天空の神殿で幸せな日々を過ごした。
天空の神殿。
それは、心の清い人が安らかにすごすための場所。


『大切な人1人以外のことは忘れてください。』
そういわれたら貴方はどうしますか?