‡ 愛の証 ‡

『そ、それを着るのか?ロザリー!』
ゆったりとした、マタニティドレスを見て後ずさりするオスカル。
『だいぶおなかも目立ってきました。ズボンではおなかを圧迫してしまいます!』
ロザリーはそう言ってオスカルを説得していた。
妊娠発覚から数ヶ月。オスカルのおなかのなかで命は育っていた。
幸せに包まれる毎日であった。
新しく生まれてくる命に誰もが喜びを隠し切れずにいた。

そんな幸せが続いて数週間がたった。
いつもどうりの朝を迎えた。
『アンドレ!遅刻するぞ!ベルナールにどつかれるぞ!』
いつものように、慌しい朝の始まりである。
オスカルは、最近造花を作る内職をロザリーと始めた。
『じゃ、いってくるよ。オスカル。』
この時今日の幸せに誰も気付かなかった。

お昼時の事であった。
『オスカル様!そろそろお昼にいたしましょう!』
そう言って、ロザリーはお茶を入れる準備をした。
『すまない。ロザリー。』
オスカルはシアンを抱きかかえて言った。
『だって、オスカル様のお腹はだいぶ大きくなってきていますもの。』
『シアンのように元気な子が生まれると良いな。』
『まぁ!きっとオスカル様に似た元気な子がお生まれになりますわ。』
そう言って、ロザリーは紅茶を差し出した。
『ありがとう。ロザリー。』
その時、ドアをノックする音が聞こえた。
『はーい。』
ロザリーがドアを開けて立ち尽くした。
『オ、オスカル様・・・・あ、あの・・・。』
『どうした?ロザリー?あ、シアンのミルクもうないぞ。』
そう言って立ち上がったオスカルは自分の目を疑った。
『オスカル・・・生きていたのだな・・・。』
そこには、ジャルジェ将軍と夫人が立っていた。
『父上!母上!』
革命。バスティーユの時もう会えないと思った両親。
『オスカル。元気そうで何よりです・・・、そのお腹・・・。』
ジャルジェ夫人はオスカルに歩み寄りお腹をに手を当てた。
『アンドレとの子ですね。元気そうですね。』
そして、優しい顔でお腹をなでた。
『父上!母上!どうして此処を!今、貴族がフランスにいてはあぶのうございます!』
オスカルはちょっと取り乱した。
『私たちももう、フランスには住んでいない。外国へ亡命したのだ。』
『ロザリー、元気そうですね。』
『は、はい。奥様。あ、あのお茶を。』
ロザリーはお茶を出そうとお湯を沸かす準備をした。
『オスカル。お前の元気そうな顔をみて安心した。本当に良かった。』
将軍はオスカルを抱きしめた。
『私もです。もう会えないと思っていました。・・・・。』
オスカルはその場に倒れこんだ。
『い、痛い・・・・・。』
まさに陣痛スタートである。

数時間後
『貴方!アンドレ!生まれましたよ!』
喜びに満ちた顔で夫人が出てきた。
『旦那様。アンドレ。元気な女の子です。』
ロザリーは生まれた赤ん坊を抱いて出てきた。
『女・・・女の子・・・・ふぅ・・・。』
アンドレは気が抜けて腰を抜かした。
『お!おいアンドレ!』

幸せの天使。
神よりの愛。
そう、愛の証。

赤ん坊には聖母マリアのように優しく育つようにと「マリー」と将軍によって名づけられた。
『マリー。元気に育つのだよ・・・。』
願いをこめた命名。

マリー。
健やかに育て!