ゲーテ作
『人間の限界』おごそかな手で
父なる神が
雷雲のなかから
祝福のいなずまを
地上に投げるとき、
わたしはうやうやしく
もすその端に
そっと口づけをする。
素朴な恐怖を
胸にいだいてなぜなら
人間は神々と
力を競うべきでない。
無理にも天にのぼって、
星々の世界に
頭がとどけば、人間の
おぼつかない足もとは
どこにも足場(よりどころ)がなく、
風や雲に
もてあそばれるだけだ。しっかりと
踏みしめた両足で
びくともせぬ
堅固な大地の上に立てば、
何のことはない、人間は
ただかしの木や
ぶどうの木と
身の丈を比べるにすぎぬ。神々と人間の
区別はどこにあるか。
神々の世界は、
波また波、
永遠のはてしなき大海原。
しかし、一波に押しあげられ、
一波に呑みこまれ、
水面に浮き沈みするのが人間だ。人間の生命(いのち)は ちいさな
一つの輪でしかない。
多くの世代が
つながり つながりー
存在の
無限のくさりをつくるのだ。
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「確かにこの世にはサタンも神も存在する.あなたのそばにも神はいるんですよ」との小篠先生のお言葉に強く心を惹かれていました,私はクリスチャンではありませんが,詩を選ぶにあたり,この「人間の限界」という詩に目がとまりました.人間は自分の分をわきまえ,足元を見つめ,人間らしく謙虚に生きるべきだと,気付きを与えてくれる詩であると思います.