数の世界


2002/ 1/14作製
フェルマーの最終定理(1)

Story of math-master


解決への道のり

歴代数学者の挑戦

●フェルマー自身の証明(n=4)(1640年)
フェルマーは、最終定理について「この真に驚くべき証明を私は得たのだが、それを書くには、この余白は狭すぎる」と書いている。
彼はどんな証明を考えていたのか・・・。
フェルマーはメルセンヌにあてた手紙の中で、証明に言及している。

2+Y2=□ X2−Y2=□    (式1)
式1を掛合わせて  X4−Y4=Z2  (式2)
式2に自然数解X1,Y1,Z1があると仮定すると、ピタゴラスの定理を使って
式1の2連方程式に別の自然数解X2,Y2,Z2(X1>X2)が存在することになる。
この操作を続けるとX1>X2>X3>・・・・
となり、無限に続く減少列があることになり、矛盾する。
この方法を使って、n=4の場合は証明できる。
  X4+Y4=Z4 → Z4−Y4=(X2)2
このフェルマーの証明方法を無限降下法という。(参照1:p84)
●オイラーの証明(n=3)(1753-1770年)
スイス生まれのレオン・ハルト・オイラーは18世紀最大の数学者で、数学のあらゆる分野で業績がある。数論の分野は1730年頃から研究をはじめている。
最終定理に関しては、n=3の場合を虚数を使って証明した。(1753-1770年)

オイラーの証明した「フェルマーの小定理」は
「自然数pが素数であり、pとaが互いに素であるとき、ap−aはpで割り切れる」
というもの。
さらに、最終定理の関する大きな功績としてはゼータ関数を生み出したこと。
ゼータ関数:ζ(s)=1/1s+1/2s+1/3s+・・・・・・    ( sは自然数)
      ζ(2)=1/6*π2
      ζ(4)=1/90*π4
      ζ(6)=1/945*π6
      ζ(8)=1/9450*π8
      ζ(10)=1/467775*π10

フェルマーやオイラーの証明はいずれも無限降下法であるため、nが4の倍数、nが合成数の場合はその素にあたる素数の証明があれば、自動的に合成数の証明がなされる。(参照2:p61-71)
あと証明が必要なのは「nが素数」だけ!

●ディリクレとルジャンドルの証明(n=5)(1825年)
ディレクレは縁故を頼ってパリに行き、21才のとき「5次不定方程式の不可能について」という論文をパリ学士院に提出。これは最終定理n=5の場合の証明であった。
この証明には不充分なところがあって、整数論の大家ルジャンドルがその証明を補って、n=5の場合を解決。
ディレクレの論文は評判になり、幸運にも1827年ドイツで大学講師、1831年ベルリン大学に移る。
また、ディレクレはゼータ関数の1種であるL関数を使って素数定理を証明した。
●ソフィ・ジェルマンの証明(1823年)
フランスの富裕な家庭に生まれたソフィは、ドイツの大数学者ガウスの「整数論」を読み数論の魅力にひかれ、独自に研究を開始する。ついに研究結果をルブランという男性名で書簡にし、ガウスに送るようになった。書簡をみたガウスはその研究成果に驚き、絶賛した。やがてルブラン氏はガウスに正体を知られてしまうが、ガウスは彼女の才能と努力に賞賛の言葉を送っている。

1823年、最終定理Xp+Yp=Zp  「奇素数pが、2p+1も素数である場合、最終定理は<場合1>のとき正しい」を証明する。
<場合1> xyz≡/0(mod p) つまりx,y,zのいずれもpで割り切れない場合
<場合2> xyz≡ 0(mod p) つまりx,y,zのいずれかがpで割り切れる場合

ガウスは彼女の研究を認め、ゲッチンゲン大学教授会に名誉博士号を送るように勧告したが、学位を受ける前にソフィはパリで没している。(参照2:p89)

彼女の研究成果が公にされる日は遅くなり、ルジャンドルによって学士院に提出される。
後に、ソフィの証明はルジャンドルによって拡張され、n=197より小さい素数の場合は証明される。

●ディレクレはn=14の場合を証明。(1832年)


●ラメはn=7の場合を証明(1839年)。

n=7の場合はラメによって証明された。

1847年3月、パリ学士院の集会でラメは最終定理の一般的証明に成功したと、宣言した。 彼の証明は複素数を使って、素因数の積に分解するものだった。
しかし、その証明には乗り越えがたい困難「素因数分解の一意性」があることをリュービル氏が指摘する。
個々のn(指数)に対する攻略するのも、そろそろおしまい。


▼参考文献
  1. 足立恒雄著「フェルマーの大定理が解けた」1995、講談社
  2. 富永裕久著(山口周監修)「フェルマーの最終定理に挑戦」1996、ナツメ社
  3. A・D・アクゼル著(吉永良正訳)「天才数学者たちが挑んだ最大の難問」1996(1999訳)、早川書房
  4. E・T・ベル著(田中勇・銀林浩訳)「数学をつくった人びと」1937(1997訳)、東京図書


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