KenYaoの天文資料館


2004/01/02作成
銀河地図 Galaxy


最初に、天の川を見てみましょう。街明かりのない、山奥に行くとこんな満天の星空が見えます。
このあたり、ぼんやりと白く、川のようにつながっているのが「天の川」です。天の川は星の集まりです。


天の川

天の川が無数の星の集まりであることに最初に気がついたのは、17世紀のイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイでした。オランダで発明された望遠鏡を、自分で作り、改良したガリレオは、天の川の他にもたくさんの発見をしました。

その1つに、木星にある4つの月(イオ・エウロパ・ガニメデ・カリスト)の発見です。 この写真の大きな丸が木星です。その横に白い小さな点がいくつか見えますが、毎日観測したガリレオはその点が動いていることに気がつきました。木星をまわる月の発見です。

<この4つの月をガリレオ衛星といいます。>


光の速さと距離

17世紀後半頃、ガリレオ衛星を観測していた天文学者が、こんな発見をします。1676年、デンマークの天文学者オーレ・レーマーがパリ科学アカデミーで「光が宇宙を伝わってくるには、(有限の)時間がかかる」と発表しました。それまでは、ものは瞬間に見えると信じられていました。

レーマーの発見は木星の衛星の1つ「イオの観測」から推理されました。当時、イオは42時間で木星の廻りを1周することがわかっていました。ところがイオが木星の裏側に消える時間が、予想より遅かったり早かったりして不正確でした。彼は、妙なことに気がつきました。地球は太陽を1年かけて廻っていますが、地球が木星に近い時、イオが消える時間は早くなり、地球が木星から遠く離れるとだんだん遅れる。レーマーはこの遅れが、「光が空間を伝わるのに時間がかかるせいだ。」と見ぬいたのでした。

レーマーの発見は、天文学に革命を起こしました。天体が遠くにあれば、その光が届く時間だけ、さかのぼった「過去」を見ていることになります。
現在の測定では、光は秒速約30万km進みます。1秒で地球を7回半廻ります。

  • 月は地球から約38万km離れているので、1秒と少し前の姿です。
  • 太陽の光は、約8分前のものです。
  • 木星までは地球が最も近づいたとき約16分です。
そして、光で1年かかる距離を「1光年」と呼んでいます。 この「光年」という単位は宇宙をはかる大切なものさしです。覚えておきましょう。


銀河宇宙モデル

18世紀、ドイツ生まれのイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルは、天の川の多くの星や星雲の観測データから星の分布を解析して、星は凸レンズ状をした形に並んでいると発表しました。これは人間が考えた「初めての銀河系モデル」でした。

地上から見ると天の川(銀河)が天球を取り巻くように見えますが、これは、太陽の位置から銀河面を見ると、多くの星が密集して、ちょうど白い川のように見えることだったのです。

<現在の銀河モデルは…・>

  • 天の川銀河は太陽が属する約2000億の恒星からなる渦巻銀河です。直径は約10万光年で、太陽は銀河中心から約2万光年の距離を毎秒約250kmの速度で約1億3000万年をかけて公転しています。

  • 銀河面に近い領域、とくに銀河中心方向には、恒星以外にもガスや塵の集まりである星雲(散光星雲、暗黒星雲)や、若い星の集まりである散開星団などが多く集まっています。また、中心から銀河ハローにかけて(さきほど説明したM15などの)球状星団が分布しています。
<銀河の構造>
  • 天の川銀河をもうすこし詳しく見てみましょう。銀河の渦このあたりを、オリオンの腕といい、太陽系があります。
  • ここを拡大しますと、太陽系がこの辺で、近くにデネブ、アルタイルなどの1等星があります。肉眼でみえるほとんどの星は、天の川銀河系の星々です。
ハーシェルは、星までの距離をその明るさで計算しました。「星が全て同じ明るさで輝いているとすれば、暗い星ほど遠くにあることになります。」ところが、星にはいろんな種類があって、ある星は他の星より何万倍も明るい星があることがわかりましたので、ハーシェルの方法では正しく距離の計算ができないことになります。

しかし、ハーシェルのアイデアは悪くありませんでした。ある決まった明るさをもつ星の仲間を見つければ、距離の計算ができることになります。


銀河の距離--変光星の発見

決まった明るさの星を見つけるのは大変でした。この難問解決は20世紀まで待つことになります。

アメリカの女性天文学者リービィットは、ハーバード天文台で変光星の研究に従事していました。大量の写真乾板を調べて、たくさんの変光星の発見しました。1912年南方の天文台から送られてきた写真乾板の調査研究から、小マゼラン雲の中のセファイド型変光星に「周期と光度の規則性」を発見しました。ついに銀河の距離測定に重要なものさしを手に入れることができました。

セファイド型変光星の代表はさきほど見たケフェウス座δ(デルタ)星です。セファイドは、一般には太陽より1万倍明るい大きな巨星で周期的な脈動変光星。変光範囲は0.2等〜1.5等、周期は1日から50日ほど。周期と光度に比例関係があります。周期の違う変光星でも距離の計算ができるということです。
最近では、セファイド変光星には2種類あって、新しい世代(「ケフェウス座δ型」)をT型、古い世代(「こと座RR型星」や「おとめ座W型星」)をU型にと、分けられています。



アンドロメダは星雲か、別の銀河か

天の川が星の集団であることがはっきりした18世紀になると、哲学者でもあるカントは「このような星の集団は他にもあるかも知れない。星雲の中でいくつか楕円形をしたものがあるが、それは遠くにある同じ様な島宇宙であろう」と予言しました。

アンドロメダ銀河=M31がわれわれの銀河系の外にある「別の銀河」であるということがはっきりしたのは20世紀になってからのことです。

1923年になって、アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルがアンドロメダ銀河の中にセファイド型変光星を20個あまり発見し、距離を計算した結果90万光年で、私達の銀河系の外であることがわかりました。

アンドロメダ銀河までの距離90万光年は、変光星の種類T・U型の研究などで修正され、現在では230万光年の距離にあるとされています。230万年前に放たれた光を、今私達は見ているのです。現代人(ホモサピエンス)が登場したのがおよそ10万年前頃と言われていますので、230万年前、私達人類の祖先はどこでどんな生活をしていたのでしょうか…。


銀河の分布

20世紀後半になると大型望遠の登場で、たくさんの銀河が見つかるようになりました。その銀河が宇宙にどんな風に並んでいるのか研究をした天文学者がいます。アメリカの天文学者ハクラ博士とゲラー博士です。1970年代に限られた範囲の方向・奥行き5億光年、約1800個の銀河を観測調査して「宇宙地図」を作りました。

銀河は鎖のようにつながった「泡構造」をしていたのでした。立体的に見ると、ちょうど泡の表面に銀河が並んでいるように見えます。そして泡の中心部には、ほとんど銀河がありません。


この大発見に刺激されて、より大規模な宇宙地図づくりがいくつかの研究グループで進められています。銀河の泡構造は、遠い宇宙まで広がっていることがわかってきました。
最近、日本も参加している大規模な宇宙地図づくり国際研究プロジェクトに「スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)」があります。アメリカ・ニューメキシコ州のアパッチポイント天文台に専用の2.5メートル望遠鏡があります。観測データなどが、インターネットで公開されていますので、興味の在る方は覗いてみてください。


いろいろな銀河









▼参考文献
  • マーチン・ゴースト著(松浦俊輔訳)「憶万年を探る」2003、青土社
  • NHK取材班著「NHK銀河宇宙オデッセイ」1990、日本放送出版協会

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