KenYaoの天文資料館
1998/4/5製作

シリウス


古代バビロニアでは犬星、中国では天狼と呼ばれ世界各地で親しまれてきた星です。

現在シリウスは青白い色で輝いていますが、古代バビロニア・ギリシャ・ローマの記録では赤い色をしていたと書かれています。これが本当だとすると、この1000年ほどで赤い低温の星から青白い高温の星へ急変したことにんりますが、現在の天文学では未だ説明がついていません。古代語の解釈上の問題かもしれませんが・・・。

●シリウスA
  • 星 座:オオイヌ座
  • 明るさ:−1.5等
  • 距 離: 8.6年
シリウスは全天で最も明るい恒星です。シリウスの質量は太陽の約2.4倍、半径は1.8倍、表面温度約2倍(1万1000度)で白く輝いて見えます。

●シリウスB
  • 星 座:オオイヌ
  • 明るさ:8.5等
  • 距 離: 8.6年

シリウスBの発見

はじめて恒星の距離測定に成功したドイツのベッセルは、1844年シリウスが50年周期でよろめくような運動していることを発見し、暗い伴星を持つ連星であると予言しました。
それから18年たった1862年、当時レンズ磨きの天才といわれたアメリカのクラークが口径0.47m望遠鏡の調整テスト時にこの伴星(シリウスB)を発見。

1914年アメリカのアダムスは、口径1.5mの望遠鏡を使ってシリウスBの観測を行い、表面温度など詳しいデーターを明らかにしました。シリウスまでの距離がわかっていましたので星の半径が、また連星の軌道解析から質量が計算され、シリウスBは「白色わい星」と呼ばれる老年期の恒星であることがわかりました。

古代エジプトのシリウス

●古代エジプトの民衆暦

古代エジプトでは、1年が3つの季節(アケト・ペレト・シェムウ)に分けられ、1年は12ヶ月(4ヶ月+4ヶ月+4ヶ月=12ヶ月)、360日(30日X12ヶ月)としていました。そして年と年の間に追加日(エバゴメン)5日間を置き、神を祀る特別な祭日として使用。すなわち1年365日として運用されていた。
古代エジプトは閏年を採用しなかったので、約4年に1日の割合で実際の季節と民衆暦がずれていきます。

●シリウスとナイル川の増水

ナイル川流域で農業で生活していた古代エジプト人にとって、毎年夏になるとナイル川の増水で流域の耕地が冠水する出来事に最大の関心を持っていた。ナイル川の増水に先立ちシリウスのヘリアカル・ライジング(早朝薄明の東の空にシリウスが姿を現す現象)が見られたため、古代エジプト人は「シリウスの出現」といって祝い、観測記録を残した。

この現象が民衆暦の季節アケトの第1月(トト)の初日に見られる年は、実際の季節と民衆暦が一致する特別な日とされた。アポカスタシス(古代ギリシア人が銘々)と呼ぶ。

1460年ごとに起きるこの現象を、パピルスに記載された祝祭記録の中から探し出し、古代エジプトの年代決定(±3年の精度)に利用できるという。

ヘリアカル・ライジングの記録(※が計算基準年)

祝祭記録推測年統治王とその年代記録日
イルラフン・パピルスBC1871年頃センウセレト3世   第7年ペレト 第4月16日
エーベルス・パピルスBC1540年頃アメンヘテプ1世   第9年シェムウ第3月9日
エレファンティネ島の碑文BC1464年頃トトメス3世   治世年不明シェムウ第3月28日
カノポス勅令BC 239年頃プトレマイオス3世  第9年シェムウ第2月1日
ケンソリヌスの記述(古代ローマの作家)AD 139年 アントニヌス・ピヌス帝第2年アケト 第1月1日※

●アポカスタシスとソティス周期

1年が365日の民衆暦は地球が太陽を約365.25日で1周するため、季節がおよそ4年に1日の割合でずれていきます。つまり約1460年かかって、元に戻ることになります。この1460年をソティス周期と呼びます。
アポカスタシスの起こったAD139年を基準としてソティス周期をさかのぼると、その前回はBC1314年(-1452年)、さらにその前はBC2768年(-1454年)になります。(M.インガム氏の計算値)

ソティス周期の正確な値を求めるのは、現在でも大変です。少なくとの地球の歳差運動(約26000年かかって春分点移動が1周する)と、シリウスの固有運動を考慮する必要があります。さらに地球の自転軸は月や他の影響で周期的な揺れを起こしています。歳差運動に周期18.6年、振幅幅約18"のふらつきを与えます。これを章動といいますが、一般の研究では無視しても良いようです。


▼参考文献
  1. 吉田正太郎著「望遠鏡発達史」1994、誠文堂新光社
  2. 近藤二郎著「エジプトの考古学」1997、同成社
  3. Robert Bauval他著「オリオン・ミステリー」1995(近藤隆文訳)、日本放送出版協会


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