KenYaoの週刊スクラップ



週刊スクラップ(2000年秋版)

新聞などの報道から、生命・宇宙に関する記事の気まぐれスクラップです。


◆2000/12/31版

  • ニュートンの専制
    12月26日、英国紙タイムズは(万有引力の法則を発見した)ニュートンが英王立協会会長の権力を乱用して有能な科学者の論文発表の機会を奪い、科学の進歩を遅らせたとする天才の影の側面を描いた伝記が出版されると報じた。
    この本はデビット・クラーク氏らが書いた「ニュートンの専制」という本。その対象はニュートンに嫌われていた天文学者のフラムスティードや、その友人で物理学者グレイ。
    ニュートンは自分の理論に利用するためプラムスティードの観測結果の発表を無理に急がせた。その結果データーに誤りが見つかると、ニュートンの側近ハレーと共に猛烈な攻撃に転じた。後にニュートンの主著「プリンキピア」の改訂版にプラムスティードのデーターを使用したが、彼の名前は載せていないという。また、グレイは先進的な電信機つくったが、その研究成果はニュートンが会長時代の24年間に1度しか発表を許されなかったという。(福井新聞12/27)

◆2000/12/17版

  • 発ガン促進物質の開発
    12月14日、柴崎正勝教授(東大)らのグループは、癌発生のメカニズム解明に使用される「発ガン促進物質」を効率よく合成する方法を開発したと、ホノルルで始まる環太平洋国際会議で発表する。
    合成法が開発されたのは、セリ科の植物が持つデカーシンでこれだけでは発ガン作用はない。ガンを引き起こす物質(イニシエーター)を補佐し促進する物質(プロモーター)の1つだという。デカーシンには、化学組成が同じで左右対称の構造を持つ「光学異性体」があり、プロモーターとして働くのはそのうち1方だけ。柴崎教授らは、希土類元素のランタンなどからなる触媒を開発し、プロモーターになるデカーシンの効率よい合成法を開発した。
    ガン研究の基礎技術として評価の他、この物質の構造を少しだけ変えることで予防薬開発の可能性も期待される。(福井新聞12/13)

◆2000/12/10版

  • 600万年前の猿人化石発見か
    12月4日、ケニア・コミュニティ博物館とフランスの合同チームは、ケニア北西部バリゴンで約600万年前の人類の直接の祖先である猿人の化石を発掘したと、発表した。
    これまで、最古の猿人化石はエチオピアで発見されたラミダス猿人(約440万年前)で、今回の発見が学界で認められれば、人類の直接の祖先を160万年さかのぼる発見になる。 研究チームによる厳密な年代測定が、今後の課題となる。(福井新聞12/5)

◆2000/12/3版

  • エボラ出血熱のワクチン開発
    11月29日、米国立衛生研究所(NIH)のチームは死亡率が高く治療法がないエボラ出血熱のワクチンを開発し、カニクイザルを使った実験で感染防止に成功。30日付けの英科学誌ネイチューに発表した。
    同チームは、エボラ出血熱の三系統ある原因ウイルスのDNAを取り出し組み合わせたDNAワクチンを開発した。さらにアデノウイルスにエボラ出血熱の遺伝子を一部組み込んだ追加ワクチンを作り、両ワクチンを4匹のカニクイザルに投与して効果を調べた。その結果4匹のうち3匹は、エボラ出血熱に感染せず。残る1匹は、一時血液中に同ウイルスが増えたものの1週間後には消滅し、症状は出なかった。(福井新聞11/30)

◆2000/11/5版

  • ヒグス粒子/存在の兆候
    11月3日、欧州合同原子核研究所CERN(ジュネーブ)の大型円形加速器LEPを使った実験で、物質の質量の素になると考えられている未発見の素粒子「ヒグス粒子」の存在を示す有力データーがでたことが関係者の話で分かった。実験関係者は現段階では「発見した」といえる段階ではないが、存在の兆光はとらえたと話している。
    ヒグス粒子は素粒子物理の標準理論として予言(英理論物理学者ピーター・ヒグス教授が提唱)された素粒子の中で、唯一未発見の粒子。(この理論では、素粒子は本来質量ゼロだが、空間に満ちて見えないヒグス粒子とぶつかることで、その度合いに応じた質量を持つように見えるというもの。)確認されれば、「電子」発見にも匹敵する物理の大発見になる。(福井新聞11/4)

  • ガンマ線バースト解明へ
    11月3日、天文学の謎とされる爆発現象「ガンマ線バースト」が、鉄を大量に含むガス雲の中で起きていることを示す確証を日本(文部省宇宙科学研究所の村上敏夫助教授)やイタリア(イタリア宇宙科学研究所のルイジ・ピロ博士ら)の研究チームがつかみ、米科学誌サイエンスに発表した。
    昨年12月、イタリアなどの人工衛星が地球から3億光年離れたオリオン座の方向でガンマ線放出を発見。研究チームはその37時間後、放射源のエネルギィーがより低いX線に変化する様子を、米衛星チャンドラで観測した。分析の結果、このX線は鉄を大量に含むガス雲を通過したことがわかった。村上助教授は(巨星の超新星爆発後中性子星になり、さらにブラックホールに崩壊するという)2段階の崩壊が起きたと主張する。(福井新聞11/3)

◆2000/10/29版

  • 土星の月・4個発見
    10月26日、米コーネル大などの天文チームは土星を周回する月を新たに4つ発見し、米天文学会惑星部会で発表した。これで土星の月は合計22個なり、天王星の21個を抜き太陽系最多となった。
    新たに見つかった4つの月は、土星表面から1500万km以上離れた軌道を回っており、その明るさから直径は10〜50kmとみられている。同チームは、この4つ以外にも土星の月の可能性がある天体を数個発見しており、確認されれば月の数はさらに増える。(福井新聞10/27)

◆2000/10/15版

  • アルフェロフ(露)、クレーマー(米)、キルビー(米)の3氏にノーベル物理学賞
    スウェーデン王立科学アカデミーは10月10日、2000年のノーベル物理学賞を、「情報技術の基礎を築いた」3人のロシア人ジョレス・アルフェロフ所長(ヨッフェ物理技術研究所・70歳)、ハーバート・クレーマー教授(米カリフォルニア大サンタバ−バラ校・72歳)とジャック・キルビー博士(米テキサツ・インスツルメンツ・76歳)に授与すると発表した。
    アルフェロフ氏とクレーマー氏は、高速で動く半導体の基礎技術を開発。キルビー氏は集積回路ICの発明者。(福井新聞10/11)

  • 白川(日)、ヒーガー(米)、マクダイアミッド(米)の3氏にノーベル化学賞
    スウェーデン王立科学アカデミーは10月10日、2000度ノーベル化学賞を、「導電性高分子の発見と発展」に寄与した3人の白川英樹(筑波大名誉教授・64歳)、アラン・ヒーガー教授(米カリフォルニア大サンタバ−バラ校・64歳)とアラン・マクダイアミッド教授(米ペンシルベニア大・73歳)に授与すると発表した。
    白川氏は1970年代に電気を伝える導電性高分子であるポリアセチレンンを開発。ヒーガー氏が研究を発展させた。日本人の化学賞受賞は1981年の福井謙一氏以来2人目。(福井新聞10/11)

  • カールソン(スウェーデン)、グリーンガード(米)、カンデル(米)3氏にノーベル医学生理学賞
    スウェーデンのカロリンスカ研究所は10月9日、2000年度ノーベル医学生理学賞を、「神経系の信号伝達に関する発見」に貢献したアービド・カールソン(イエーテボリ大名誉教授・77歳)、ポール・グリンガード教授(米ロックフェラー大・74歳)、エリック・カンデル教授(米コロンビア大・70歳)に授与すると発表した。
    3氏の発見により脳の正常な機能理解が進み、さらに神経・精神疾患の薬の開発にも貢献した。(福井新聞10/11)

◆2000/10/8版

  • おおくま座に巨大な分子雲
    10月6日、国立天文台の川辺教授と米ハーバード大スミソニアン研究所の松下聡樹研究員は、おおくま座のM82銀河に直径約700光年の水素分子でできた巨大分子雲があることを見つけ、日本天文学会で発表する。
    研究チームは、分子雲中央に(太陽の700〜100万倍の)中質量ブラックホールが位置することを既に(京大・鶴剛助手)発見。分子雲は超新星1万個に相当する巨大な爆発によって作られ、このときブラックホールも生まれたと推測している。
    野辺山宇宙電波観測所のミリ波干渉計を使った観測で、分子雲は秒速100kmで膨張を続け、中央には現在も超新星爆発を続ける超巨星の星団も確認された。(福井新聞10/5)


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