KenYaoの週刊スクラップ



週刊スクラップ(1998年秋版)

新聞などの報道から、生命・宇宙に関する記事の気まぐれスクラップです。


◆1998/12/27版

  • IPCCの地球温暖化予測修正
    12月26日、地球温暖化に関する世界の研究者でつくる政府間組織(IPCC)が来年4月に発表予定の「温暖化予測のシナリオ」についての概要が明らかになった。各国研究者による多数の提案から選ばれた4つのシナリオのいずれも、21世紀末までの気温上昇が約3度と、温暖化予測が1度近くも上方修正される見通しとなった。このシナリオはさまざまな地球温暖化予測の前提となるもので、CO2や硫黄酸化物の排出量、人口や経済成長率などの2100年までの変化を仮定するものである。

    新シナリオではいずれも、工場などからでる硫黄酸化物の総量が各国の大気汚染対策が進み2020年〜50年にかけて急速に減少する。硫黄酸化物からできる硫酸の微粒子は、太陽エネルギーの到達量を減少し温暖化を抑制する作用がある。IPCCのこれまでの予測では、硫黄酸化物の排出量は直線的に増加すると仮定していたため、今回の見直しで修正が必要になる。
    関係者によると、2100年には地球全体の平均気温が+2.8度上昇。CO2の増加がもし産業革命前の濃度の2倍程度で安定化できたとして+2.5度となるという。海面上昇の脅威を受けている島国などから温暖化対策強化を求める声が強まり、今後の国際交渉にも影響を与えそうだ。(福井新聞12/27)

  • 小惑星エロス探査計画延期
    12月24日、ジョン・ポプキンズ大は米無人小惑星探査ニアが撮影した小惑星エロスの写真を公開した。ニアはエロスに接近した際、約5000〜1万Kmの距離から1万枚以上の撮影に成功した。細長いジャガイモのような形が確認され、今後正確な地形解明にあたる。
    残念ながら、今回ニアは来年1月10日エロスを周回する軌道に入る予定だったが、12月20日エンジン噴射直後地上との交信が約1日にわたって途絶え、軌道投入の機会を逃がした。エロスとニアが次回接近する2000年5月に、あらためて周回軌道投入を試みる予定。(福井新聞12/26)

◆1998/12/20版

  • 小惑星エロス探査計画
    12月14日、米国の無人小惑星探査ニアの運用計画を担当しているジョン・ポプキンズ大は、来年1月10日地球と火星の間にある小惑星エロスに接近し観測を始めると発表した。
    小惑星は木星軌道より内側におおく、既に1万個程度発見されている。小惑星は太陽系を形成した物質の残骸で、太陽系形成過程の解明につながると期待される。エロスは表面がでこぼこのの細長いジャガイモ形の小惑星で、長さ40km、直径14km。探査機ニアは約15kmまで接近して、岩石の組成を調査する予定。(福井新聞12/16)

◆1998/12/13版

  • 世界最古の猿人化石発見
    12月9日、南ア・ウィットウォーターズランド大の研究チームは、ヨハネスブルグ近郊で、推定360万年前のアウストラロピテクス(猿人)の全身化石をほぼ完全な形で発見したと発表した。
    化石は1930年代以降多くの化石が発見されたスタークフォンテーンの石灰岩の洞窟で見つかった。360万年前洞窟付近は熱帯林でおおわれ水に恵まれた環境で、見つかった猿人は深さ15mの穴に転落死したため、動物に食い荒らされずにすんだという。化石の身長は推定120cmで、発掘にはあと1年かかる。(福井新聞12/11)

  • 病原性大腸菌O157の遺伝子研究
    大阪大微生物病研究所の品川日出夫教授らの研究グループは、O157に赤痢菌の遺伝子のほかサルモネラ菌の病原遺伝子や多剤耐性遺伝子など、通常の大腸菌にないさまざまな遺伝子が組み込まれていることを確認した。
    品川教授らは東京大医科学研究所や信州大と協力して昨年の夏から、1996年大阪府堺市で流行したO157株のノゲム解析を続けてきた。解析の結果、赤痢菌のベロ毒素の遺伝子のほか、DNA本体にサルモネラ菌や、大腸炎の原因となるディフィシレ菌の病原遺伝子に似た遺伝子が組み込まれていることをつきとめた。今後、ワクチンや治療法の開発に役立つと期待される。(福井新聞12/09)

  • 火星の氷は予想以下
    12月6日、米国マサチューセッツ工科大学などの研究チームは、米火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーが観測したデーターを解析し火星北極の地形図を作製した結果、火星北極の氷の体積は予想より少なく地球のグリーンランドの氷の半分以下であることが分かったと、発表した。(福井新聞12/08)

◆1998/12/06版

  • 宇宙の年齢は150億年
    12月1日、文部省宇宙科学研究所のオーストラリア人研究員ジム・レベル氏とフィリップ・エドワーズ氏らは、重力レンズの作用でリング状に見える遠方の電波天体を観測し、リング両端で電波到達時間が約26日ずれていることをつきとめた。
    途中の重力レンズの質量は太陽の約1000億倍、地球から重力レンズまでの距離は約80億光年、観測している電波天体までは約140億光年であることが分かった。この天体は1991年に見つかったが、地球から遠ざかる速度はHSTの観測で分かっており、それを基に計算するとビッグバンから現在までの宇宙の年齢は150億年になるという。(福井新聞12/2)

  • ラニーニャ現象続行
    米航空宇宙局(NASA)は、太平洋赤道域の海水面温度の低下(ラニーニャ)現象をとらえた衛星画像を公開した。
    この画像は11月8日トペックス・ポセイドン衛星から撮影したもので、平年の海水面温度より低い部分が太平洋赤道のやや南に広がっている。研究者によると今年の春ころ始まったラニーニャ現象は約5ヶ月間続いているという。(福井新聞11/30)

◆1998/11/29版

  • HSTによる遠方の宇宙
    11月23日、米宇宙望遠鏡研究所と米航空宇宙局(NASA)はハッブル宇宙望遠鏡(HST)がとらえた南半球から見える遠い宇宙の画像を公開した。南の空の観測としては、これまでで最も遠い宇宙の風景を写し出している。
    今年10月、HSTが小マゼラン星雲がある巨し鳥座の一角を10日間かけて観測し撮影した画像で、地球から120億光年離れた天体がとらえられている。この観測で数千個にのぼる銀河が見つかった。(福井新聞11/25)
    HSTで遠方の宇宙を撮影する場合、長時間露光するため近くに明るい天体があっては邪魔になる。以前公開された北斗七星近くの遠方宇宙の撮影では、キャットピーク天文台にある4m望遠鏡で、邪魔な天体のないことを確認したうえで撮影されたとのこと。

◆1998/11/22版

  • 6500万年前の隕石破片
    11月18日、フランク・カイト博士(米カリフォルニア大ロサンゼルス校)は、6500万年前メキシコ・ユカタン半島に衝突し気候の大激変を起こして、恐竜類を絶滅させたと考えられている巨大隕石の破片を発見したと、19日付英科学誌ネイチャーに発表した。
    破片は1982年、日本とハワイの中間付近の北太平洋海底を海底掘削船で採取した地質資料の中から発見したもので、直径2.5mmの小さなもの。(福井新聞11/20)

  • しし座流星群出現
    11月18日未明、日本各地で33年ごとのしし座流星群出現ピークが観測された。この夜日本列島は冬型の気圧配置となり、北日本や日本海側は悪天候。よく観測できたのは太平洋側の一部にとどまった。地上から観測された報告では、1時間当たり60個程でやや期待はずれ。
    国立天文台によると、(日本時間の17日午前)欧州で1時間当たり約2000個の流星が観測されたということで、出現ピークが早まった可能性があるという。(福井新聞11/19) 続報に期待したい。

  • 孵化前の恐竜皮膚化石アルゼンチンで発見
    11月17日、米自然史博物館などの調査チームが、南米アルゼンチン中部ネウケンで大型草食恐竜ティタノサウルスのものとみられる数千個の卵化石と、卵の中にあった赤ちゃん恐竜の骨や皮膚の化石を発見したと、19日付英科学誌ネイチャーに発表した。
    場所はパタゴニア山地のネウケン北方で、7000万〜9000万年前の白亜紀後期の化石とみられる卵が1平方キロにわったて足の踏み場のないほど多数発見されており、そのなかで少なくとも40個程の卵の中から孵化する前の恐竜の骨や皮膚の化石が見つかった。調査チームによれば、ここは数百頭のティタノサウルスが集まる産卵場たったと推測しているとのこと。(福井新聞11/18)

  • 富士山頂に電波望遠鏡
    東大理学部初期宇宙研究センターと国立天文台の共同グループは、この夏富士山頂に設置した新型のサブミリ波望遠鏡を使って本格的な観測を始めた。衛星通信を利用した遠隔操作の観測にも世界で初めて成功し、10月後半から順調にデーター収集が続いているという。
    サブミリ波は波長が0.1mm〜1mmまでの電波。分子や原子ごとに発生する電波の波長は決まっていて、炭素など宇宙の星間物質が放つのがサブミリ波。大気中の水蒸気が邪魔するので、3000m以下の低地では観測できないという。研究グループはオリオン座の一角を観測し、炭素の分子雲が10光年以上に広がっていることを発見するなど、早くも成果を挙げた。(福井新聞11/16)

◆1998/11/15版

  • 北極グマの危機
    11月9日ブエノスアイレスで開かれている気象変動枠組み条約第4回締約国会議で、環境保護団体グリーンピースが地球温暖化が原因とみられる北極周辺の環境変化でホッキョクグマやトナカイ、セイウチなどの動物が危機にひんしていると発表。
    北極西部は地球上の他の地域に比べ温暖化が2倍の速さで進行しているため、ノルウェーの研究機関の観測で1978年〜1994年で約6%の氷が減少したという。氷の下の藻類が減少すると>動物プランクトン>タラ>アザラシといった食物連鎖が崩れ、ホッキョクグマの餌が枯渇するという。
    トナカイはカナダの科学者の調査によると、この36年間で生息数が9割以上減少しているという。これは気温上昇で風が強まり雪が固まりやすくなって、雪の下の餌とりが難しくなっているのが原因とみられている。(福井新聞11/10)

◆1998/11/08版

  • 大型望遠鏡すばるの主鏡到着
    11月5日、日本の国立天文台がハワイ島マウナケア山(4205m)の山頂に建設中の大型望遠鏡すばるの主鏡(直径8.2m、重量55トン)がトレーラーに載せられて山頂に到着した。
    米ピッツバーグの工場を出てから約1ヶ月半に及ぶ輸送作戦は無事終了し、世界最大級のすばる望遠鏡は来年の完成に向けて1つ山を越えたようだ。(福井新聞11/7)

◆1998/11/01版

  • 新型の光合成現象
    10月27日、海洋バイオテクノロジー研究所前研究員・胡強(現:米アリゾナ州立大研究員、中国人)と文部省基礎生物研究所のグループは、植物が光合成に使っていない近赤外線を利用して光合成している海洋細菌を見つけ、米科学アカデミー紀要に発表した。
    この細菌は「アカリオクロリス・マリナ」と呼ばれ、西太平洋パラオの海岸に住むホヤに付いているのを海洋バイオテクノロジー研究所の宮下英明研究員が1993年に新種として発見している。光合成で酸素を出すシアノバクテリアに近いという。
    葉緑素には、光合成の主役であるクロロフィルa、光を集めるだけの色素、役割不明の色素もある。この細菌にはクロロフィルaがわずか3%、役割不明のクロロフィルdが97%もあった。研究グループはdの役割を調べた結果、波長740ナノmの近赤外線の光を吸収していることが分かった。
    酸素を出さない細菌は光合成に800ナノmの赤外線、植物は700ナノmの赤色光を利用して光合成を行っている。dが吸収する近赤外線の波長は、これまで知られていた光合成仕組みとは違う新しいタイプで、植物進化の重要な手がかりになると考えられる。(福井新聞10/27)

◆1998/10/25版

  • ハッブル宇宙望遠鏡の画像毎月公開
    10月20日、米航空宇宙局(NASA)はハッブル宇宙望遠鏡(HST)が撮影した天体画像を公開した。画像の一つ、銀河NGC7742「目玉焼き銀河」は中心部にブラックホールがあると考えられており、周囲では活発に星が形成されているという。
    1990年に打ち上げられて以来、HSTがこれまで研究用に撮影した13万を超す天体画像の中から今後も厳選し、毎月発表する計画とのこと。(福井新聞10/22)

◆1998/10/18版

  • 海王星表面の画像で超高速の風
    10月14日、米ウィスコンシン大の研究チームはハッブル宇宙望遠鏡で撮影した海王星の画像から、海王星表面では音速(時速1225Km)を超える時速1440Kmの猛烈な風が吹き荒れていることがわかったと、発表した。
    地球の風や嵐は太陽のエネルギィーが原動力であるが、海王星は太陽から遠く太陽のエネルギーは地球の1/900しかない。研究チームのローレンス・スロモフスキー博士は「風が何をエネルギー源にして吹いているのかは不明。海王星のなぞが増えた」と指摘している。(福井新聞10/16)

  • ラフリン(米)、シュテルマー(米)、ツイ(米)3氏にノーベル物理学賞
    スウェーデン王立科学アカデミーは10月13日、1998年度ノーベル物理学賞を、「量子流体の新しい状況」を発見した米国のロバート・ラフリン(スタンフォード大・47歳)、ホルスト・シュテルマー(コロンビア大・49歳)、ダニエル・ツイ(プリンストン大・59歳)に授与すると発表した。
    シュテルマー、ツイ両氏は82年極低温下で平面に広がった電子の集まりに強い磁場をかけたときに、電子が特異な動きをする「分数量子ホール効果」を発見した。(福井新聞 10/14)

  • コーン(米)、ポープル(米)2氏にノーベル化学賞
    スウェーデン王立科学アカデミーは10月13日、1998年度ノーベル化学賞を、「量子化学の計算手法の開発」を行ったウォーター・コーン(カリフォルニア大サンタバーバラ校・75歳)、ジョン・ポープル(ノースウェスタン大・72歳)に授与すると発表した。
    コーン氏は60年代に電子の状況を近似的に計算する「密度汎関数法」、ポープル氏は50年代以降「CNDO法」などの計算手法を開発した。(福井新聞10/14)

  • ファーチゴット(米)、イグナロ(米)、ムラド(米)3氏にノーベル医学賞
    スゥーデンのカロリンスカ研究所は10月12日、1998年度ノーベル医学賞を、「循環器系の信号物質としての一酸化窒素(NO)」を発見した米国のロバート・ファーチゴット(ニューヨーク州立大学教授・82歳)とルイス・イグナロ(カリフォルニア大ロサンゼルス校教授・57歳)、フェリド・ムラド(テキサツ大教授・62歳)の薬理学者3人に授与すると発表した。
    同教授らは70年代〜80年代にかけて、血管の内皮細胞から血管を拡張させる「内皮細胞性弛緩因子」が出ていることを発見し、それがNOであることを突き止めた。その仕組みは今年春米国で発売され話題となった性的不能治療薬「バイアグラ」の原理にもなった。(福井新聞10/13)

◆1998/10/11版

  • アンデス高地で恐竜の足跡化石
    ボリビアのアンデス高地にある古代の湖の地層から恐竜の足跡化石が発見された。ボリビアの古代生物学者、デービット・ケレンバ博士の調査によれば新種の恐竜の足跡らしい。
    20Km以内のこの地域では、竜脚類など他の恐竜の化石も多数見つかっていて、恐竜研究にとって世界でも最も重要な地域の1つになったという。(福井新聞10/8)

  • しし座流星群の規模予想
    10月5日、米航空宇宙局NASAは来月(11月17日)に出現する「しし座流星群」は、32年ぶりの大規模な光のショーになるが、一方地球を回る人工衛星にとっては衝突事故などの驚異になる、と発表した。
    この流星群は、テンペル・タットル彗星の尾に含まれるちりの中を地球が通過することで起こるが、今年はじめ頃同彗星が太陽に最接近したため尾のチリが通年よりも大きい。降り注ぐチリの大部分は砂粒程度の大きさだが、しし座流星群の場合は通常の流星より速度が4倍ほどあり、人工衛星にあたえるダメージは大きい。人工衛星の向きを変えるなどの対策をとるという。
    流星群の観測に関しては、中国東部から日本にかけて観測条件はよく、11月18日未明(日本時間)のピークには1時間に千個の流れ星が予測されるという。(福井新聞10/7)

◆1998/10/04版

  • 関東近海のカレイに雌化現象
    9月25日、橋本伸哉(東京水産大学助手)らは関東近海で捕獲された雄カレイの15%の精巣に卵が見られ、雌化現象が起きている可能性があると、函館で開かれている日本水産学会で発表した。
    都市河川が流入する関東近海で採取した雄カレイ24匹の精巣組織を調べ、3匹から卵を発見した。卵は数個程度で雌化はいずれも軽度であったが、環境ホルモンの影響が少ないと見られる北海道知内町沖の雄カレイ84匹には精巣卵はなかった。橋本助手らは、関東近海の雄カレイの血清中に雌にしかないはずの卵黄タンパク質(ビテロゲニン)を検出しており、女性ホルモンの影響を指摘している。なお、日本近海の野生魚群から精巣卵が見つかったのは初めてという。(福井新聞9/28)


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