KenYaoの週刊スクラップ



週刊スクラップ(1999年夏版)

新聞などの報道から、生命・宇宙に関する記事の気まぐれスクラップです。


◆1999/9/26版

  • 反陽子観測成功
    今年8月、折戸周治教授(東大理学部)が代表を務める日米研究チームは、カナダで2ton 余りの観測機器を積んだ大型気球を成層圏に飛ばして、宇宙から飛来する反陽子を千個以上観測するのに成功した。
    研究チームが毎夏気球を揚げるのはカナダ北部のリンレークで、地球磁場の北極に近く、エネルギーの低い宇宙線の観測に適しているという。地球上の自然界に存在しない反陽子や反ヘリウムという「反粒子」を探るのが目的で、普通の物質を構成する粒子と質量は同じで電荷だけが反対。
    観測された反陽子の大部分は宇宙線が星間ガスに衝突してできるとみられるが、英国のホーキング博士が予言したミニブラックホール蒸発で放出された可能性もあると、折戸教授は言う。(福井新聞9/24)

  • 地球環境概況2000
    9月19日、国連環境計画(UNEP)は世界の専門家約200人の意見も基に、人類が直面する環境問題の評価報告書「地球環境概況2000」を発表した。
    報告書の内容は、地球温暖化対策は既に手遅れで、京都会議の目標達成は難しい。熱帯林の破壊は取り返しが付かない状況で、森林消失とともに生物の多様性が失われる。さらに、2050年頃には環境中の有害物質は現在の3倍になり、水不足も極度に深刻化しするというもの。(福井新聞9/20)

  • 植物3万種絶滅の危機
    9月18日、ワシントンにある民間研究機関「ワールド・ウォッチ」は世界で3万種以上の植物の「種」が絶滅の危機にあるとの報告を発表。
    ある植物の「種」の多様性が失われると、予測できない災害が起きたとき、種として対応できなくなり絶滅に結びつくという。
    報告は病害虫に強く多収穫となるように遺伝子組み換え技術を使った農産物の品種改良が進み、植物の多様性を失わせる一因と指摘。世界でも最も絶滅の恐れのある植物が多いのは米国で、4669種が危機にあるという。(福井新聞9/20)

◆1999/9/19版

  • すばるのM57詳細画像
    9月17日、国立天文台と東大の研究グループは、こと座の「環状星雲M57」のマウナケア山頂にある大型望遠鏡「すばる」による詳細な画像を公開した。
    M57は地球から約1600光年の距離にあり、中心には太陽の質量の0.8〜8倍程度の恒星の老いた姿である白色わい星がある。その周囲に直径0.7光年のリングが輝き、さらにその外側にハローが広がっている。
    今回の観測でハローは、内側に直径約1.2光年のバラの花びら形状で多数のループ構造が複雑に重なり合っており、さらに外側に直径約1.8光年の円形状にハローが広がっている。恒星の進化を解明する貴重なデーターになると期待される。(福井新聞9/18)

◆1999/9/12版

  • 今年のオゾンホール
    9月8日、気象庁は南極大陸上空に出現した今年のオゾンホールは(9月初めの状況から予測すれば)過去最大規の昨年を若干下回るが、大規模なホールに成長する可能性が高いと発表した。
    オゾンホールは成層圏に達したフロンなどの物質が分解して出来た塩素原子がオゾンを破壊し、オゾン層の希薄な部分が南極上空に(9月〜11月頃)現れる現象。1992年以降は大規模なホールが毎年出現するようになり、今後10〜20年は続く可能性が高いという。(福井新聞9/9)

◆1999/9/05版

  • 木星の衛星イオ画像
    8月31日、米航空宇宙局(NASA)は木星探査衛星ガリレオが撮影した衛星イオの精密画像を公開した。
    ガリレオは1995年12月に木星を周回する軌道に到着して以来、衛星イオに最接近した今年7月3日に撮影した。月よりやや大きおイオは地表には多数の火口があり、噴火した溶岩が赤く写っている。アリゾナ大の研究によると、イオの溶岩温度は1700度以上で地球の溶岩より熱いという。(福井新聞09/02)

◆1999/8/29版

  • 隕石から塩水発見
    8月26日、米科学者らの研究で米テキサス州で発見された隕石に塩水が含まれていることを確認。8月27日発売の米科学雑誌サイエンスに発表した。太陽系誕生の謎の解明に役立つものと期待される。
    この隕石は1998年、少年7人が落下するのを目撃。直ちに回収され、米航空宇宙局(NASA)ジョンソン宇宙センターの科学者らが分析した結果、隕石に多数含まれていた紫色の結晶が塩と判明。その結晶中に、液体状の水が微小な粒として存在していることが確認された。(福井新聞8/28)

  • 10億年後の地球、海消滅
    東京工業大学の丸山茂人徳教授らの研究グループは、大陸プレート沈込みで地中深く運ばれる水と地中から吹き出る水の量を比較すると、地球内部の水の大循環で地中に失われる量が5倍近くあり、約10億年後に地球表面から海がなくなるという新説を提唱した。
    同研究グループは、地下の高温高圧下で鉱物に含まれる水量を実験で測定したところ、地下410〜660Kmに大量の含水鉱物の存在を確認した。大陸プレートの表面温度や地震観測データーから、地球全体で地中に運ばれる海水は年間約11億2000万トンと算出。一方、火山や中央海嶺などから供給される水は年間約2億3000万トンで、差し引き8億9000万トンの海水が地球内部に吸収される計算になる。この量は1億年で海水面を250m下げることになり、約10億年で現在平均深度約3800mある海が干上がる計算になるという。(福井新聞8/24)

◆1999/8/22版

  • トルコで大地震・死者1万人超る
    8月17日午前3時(日本時間同日午前9時)、トルコ北西部で強い地震が発生し、大都市イスタンブールを中心に、建物の崩壊などのよる多数の死傷者が出た。
    震源はイスタンブールの東100Kmにある工業都市イズミト付近で、マグニチュードは7.4と推定されている。発生から4日経過した21日現在で、死者は1万1000人を超し、さらに増加するものとみられる。がれきの中には、3万人余りが閉じこめられていると推測している。今回の地震でこれぼど大きな被害がでたのは、ずさんな住宅建設がトルコでは蔓延しているのが原因という。(福井新聞8/18、8/22)

◆1999/8/15版

  • 今世紀最後の皆既日食
    8月11日(日本時間11日夜)、今世紀最後の皆既日食(太陽が月に全部隠れる)が欧州からインドなどで観測された。
    あいにく英国は小雨で見えなかったが、仏ノルマンディー海岸では雲の切れ間から黒い太陽が現れ、多数の見物客の歓声が上がったという。21世紀最初の皆既日食は南アフリカや南大西洋で2001年6月21日、日本では奄美大島などで2009年7月に出現する。(福井新聞8/12)

  • 猿人から原人への進化説に野菜調理法
    8月10日、米ミネソタ大のグレゴリー・レイデン博士らは人類の祖先は190万年前ころ、火を使った野菜の調理法を発明し栄養を多く摂取出来るようになり、猿人から原人へ進化したとする説を発表した。
    未調理の硬い植物の根や木の実を食べていたアウストラロピテクスなどの猿人(300〜150万年前)は大きな歯と頑丈な顎が特徴である。ところが約190万年前出現した直立原人は歯が小さくなり、逆に体や脳が大きくなった。その進化の説明として博士らは、「火の利用を発明し、植物の根などの野菜をやわらかく調理して大量に食べられるようになったから」という。(福井新聞8/12)

◆1999/8/08版

  • 陸上植物にもイブ仮説
    8月4日、日本を含む12カ国の科学者グループは、陸上の全ての植物は少なくとも4億5000万年以前(オルドビス紀後期)に淡水に生息した、たった1種類の原子植物から進化したと、米国で開催中の国際植物学会議で発表した。
    この科学者グループは、遺伝子分析などの研究成果を持ち寄って、生物の系統樹を作り直す作業を5年間かけて行った。地球上の細胞核を持つ生物は、陸の緑色植物・海藻などの赤色植物・褐色植物・キノコなどの真菌類・動物の5つに大別できた。
    このうち緑色植物の進化は定説と大きく違っていた。「コケと花をつける植物は、海に生息した別々の祖先から進化した」とされていたが、遺伝子配列から陸上の全植物は淡水にいた1種類の原始植物に行き着くことが判明した。新説は、海のけい藻のような植物のうち、たった1種が川や湖など淡水に進出することに成功。その1種から50万種とされる現在の陸の植物が生じたことになる。(福井新聞8/5)

◆1999/8/01版

  • 米探査機を月に衝突
    7月31日、米航空宇宙局(NASA)は月に氷が存在する証拠を求めて、米国月探査機ルナプロスペクターを7月31日PM6:52(日本時間)月南極付近に激突させた、と発表。
    探査機の使用期間が6月で終了したため、最期の仕事として月南極近くのクレーターに命中させ、氷の存在を直接確認する激突計画が実行された。目標のクレーターは直径約50km、深さ約4kmで底は地球から直接見通せないという。探査機が衝突した際、氷が存在していれば衝撃で水蒸気が立っているはずだが、今のところ各地の天文台から衝突の瞬間をとらえたとの報告はない。研究チームはハッブル宇宙望遠鏡などの画像分析を急ぐ予定。(福井新聞8/1)

◆1999/7/25版

  • すばるで冥王星にエタンの氷を観測
    7月19日、国立天文台はハワイのマウナケア山頂にある大型望遠鏡すばるによる観測で、神戸大学の中村良介助手らは太陽系最外周を回る惑星/冥王星にエタンの氷、衛星カロンには水の氷の存在を初めて観測したと発表。
    観測した冥王星は、地球と太陽の距離のおよそ30倍の距離にある。すばるの赤外線望遠鏡と高性能分光器を使って、冥王星と衛星カロンの物質を調べた。赤外線観測に関していえば、ハッブル宇宙望遠鏡より高精度な観測ができるという。(福井新聞7/20)

  • 世界人口60億人
    7月18日、米商務省統計局がホームページに掲載している「世界の人口」は日本時間7月19日昼頃、60億人になると発表した。
    1960年に30億人を超えてから、わずか39年で2倍になる。既婚女性の出産調整の普及で人口増加率は1971年以降低下しているが、同局の予想では2015年までは毎年1%以上増え続け、2013年に70億人、2027年に80億人を超えるという。ワシントン大学のピーター・ワド氏は「人口増加は深刻な環境破壊を招いている。地球は持ちこたえられない」と話している。(福井新聞7/19)

◆1999/7/18版

  • 銀河衝突多数の銀河団観測
    7月15日、米航空宇宙局(NASA)は約80億光年離れた銀河団で多数の銀河同士が衝突する様子をハッブル宇宙望遠鏡で観測に成功したと発表した。
    観測したのは欧州の天文学チームで、約80億光年の距離にある銀河団MS1054-03の銀河81個のうち、13個が衝突合体直後か衝突の過程であることが分かった。この結果で、銀河は衝突を繰り返し徐々に成長してきたことを示しているという。(福井新聞7/17)

  • 遺伝子組み換え(GMO)大豆
    7月15日、京都大学食糧科学研究所(宇治市)の村田幸作教授らの分析で、豆腐や食用油の原料として輸入された米国産の大豆で、遺伝子組み換え(GMO)大豆の混入率が急増し、1998年で1/3に達したと発表した。
    GMOの作物は生産の省力化・大量生産を目的に開発されたもので、栽培時に「特定の除草剤をまいても枯れない大豆」や「殺虫成分を持つトウモロコシ」が作られた。村田教授らは滋賀県工業技術センターと共同で1995〜1998年に輸入された米国中西部産の大豆を国内卸商から入手し、実際に栽培して耐除草剤能力を調べ、比率を算出した。一部、有機無農薬大豆と表示された原料からも、GMO大豆の成分が検出されたという。(福井新聞7/16)

◆1999/7/11版

  • ヒマラヤの造山運動
    昨年5月、酒井治考教授(九州大学)は日中共同で組織した学術調査隊に参加し、エベレスト頂上近く約8500mの北壁で百数十mにわたる断層を調査隊が発見した。酒井教授の分析で、海底にたい積して出来たインド側の地層が、隆起によるヒマラヤ造山の上部地層になり、その層が約2000万年前から自重で北側に滑り落ち、風雪に浸食されて現在の形になったと発表した。
    ヒマラヤ山脈は、約5000万年前にインド亜大陸が沈み込む形でアジア大陸にぶつかり、高温になった広域変成岩の層が隆起し、その上にあったインド側の海底たい積石層が押し上げられて出来たという。酒井教授は、たい積岩が滑り落ちる前は、エベレストは高さ15000mはあったと推測する。(福井新聞7/5)

◆1999/7/04版

  • ラニーニャ現象終息
    6月29日、米航空宇宙局(NASA)は、太平洋熱帯海域の海水温が低くなるラニーニャ現象が消えつつあると発表した。
    NASAは米仏共同の海洋観測衛星で監視を続けていたが、6月18日の観測で太平洋熱帯海域の水温上昇が進み、同海域は一時期冷たい海水におおわれていたが、赤道沿いにわずか残るだけとなった。(福井新聞7/1)


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