中世ヨーロッパ世界は・・・まあ現代でもそうですが、「キリスト教」とかなり深い繋がりがあります。
それは騎士たちも例外ではありませんでした。戦いに身を置き、人の生命を奪い続ける・・・と言う「罪」を
背負い生きていく彼らにとって、信仰は心のオアシスとなっていたのです。

だからと言って、全ての騎士がそうだとは限りません。中には「邪悪な騎士」もいたでしょう。
また、信仰と利益が天秤にかけられる事態に直面した時は、利益を取る騎士も多くいました。
信心深い騎士、上辺だけの適当な騎士、まあいろいろですね。それは現代人と何ら変わりません。
さらに、騎士の上に立つ高位の騎士、つまり「王侯」は、度々「教皇」と対立したりしています。
(王権と教会の対立については、また別のところで扱います。)

そんななか、キリスト教のカトリック教会は、信者の手本となる歴史上、伝説上の人々を
ラテン語で「聖人」と言う意味の、BeatusSanctus(ベアトゥス、サンクトゥス)として定めています。
聖人は信仰の手本となりうる立派な人物であり、また守り神のようなものでもあります。
何でラテン語かといえば、ラテン語は今で言う英語のような役割を果たしていました。ヨーロッパ世界共通語と言うか、
重要な言語だったのです。教会などでの説教なども、聖書も全てラテン語だったといいます。

で、「騎士の守護聖人」・・・と言うのは、ヨーロッパ中の騎士たちがカリスマ的存在と仰ぐ人物なのです。

その名は聖ゲオルギウス。神の戦士としての理想の騎士であり、騎士の絶大な支持を集める人物。
いざ戦闘に臨む際には、騎士たちはゲオルギウスの名前を呼び守護を祈りました。
それぞれ言語別の発音は、以下のようらしいです・・・↓

United Kingdomイギリス

Saint  George(セント・ジョージ)

Franceフランス

Saint  Georges(サン・ジョルジュ)

Italyイタリア

San  Giorgio(サン・ジョルジョ)

Germanyドイツ

Sankt  Georg(ザンクト・ゲオルグ)

伝説によれば、聖ゲオルギウスは「邪龍を征伐し奇跡を起こした英雄」だという事です。
彼の伝説は、子供に話して聞かせる、おとぎ話のようにして初めて触れるのがポピュラーだったようです。
もちろん教会での説教の中にも、あったかもしれません。
その伝説を簡単に紹介するとこうなります。↓

∞かつて、「リビア」に「シレナ」と言う街があった。だが、街の近くには悲運な事に、邪龍が棲む湖があった。
人々は、邪龍の吐き出す毒の息に苦しめられていた。作物も実らず、死人が続出。
そこで街では、一定の周期で羊を生贄として邪龍に捧げ、邪龍の気を鎮めはじめた。
しかし、羊の数にも限りがあるし、毒の息により作物も実らず街は貧困を極めていた。
遠くから羊を買う事もできない。苦渋した人々は、さらに酷い方法を始める。

くじ引きで選ばれた「人間の若者」ひとりを生贄にし始めたのだ。
しばらくその哀しい事態は続く。
そんななか、ついに街を治める侯爵の愛娘であるお姫様に、運命のくじが引かれた。
侯爵自らが取り決めを破る訳にも行かず、お姫様はひとり、邪龍の棲む湖畔に立たなければならなかった。

その場にたまたま通りかかったのが、敬虔なキリスト教信者である騎士ゲオルギウスであった。
彼はお姫様から事情を聞くと、いきなり湖に巨石を投げ込み、邪龍を出てこさせた。
ゲオルギウスは、騎槍を振るって果敢にも邪龍に挑んだ。戦いは長く続いたが決着がつかない。
そんななか、ゲオルギウスは閃く。お姫様の腰帯(ガードル)を借り、それを邪龍に向かって投げつけた。
ゲオルギウスはそれを「手綱」として使い、邪龍をおとなしくさせる事に成功した。
そこでゲオルギウスは邪龍を街まで引っ張っていき、街の人々の見守る中、剣で邪龍を成敗した。

ゲオルギウスの勇敢な行いに神の加護を見た人々は、侯爵を始め次々とキリスト教徒になった。
そしてゲオルギウスが「ここを掘れ」と言った場所を街の人々が掘ってみると、
綺麗な泉が湧き出てきた。その水は病を癒す聖水であった。

侯爵はゲオルギウスに巨万の富を与えたが、彼はそれを新しく建った教会や貧しい人に全て与えた。
そして彼は街の新しい教会の司祭になる者に対して、キリスト教の教えを説く。

その後、ゲオルギウスはお姫様の求愛を厭味なく丁重に断わり、何事も無かったかのように何処かへ去った。∞


ゲオルギウスの非の付け所の無いトレビアンさ、そしてキリスト教の奇跡をいやと言うほど
示してくれる伝説ですね。キャンペーンにこれほど相応しい伝説は御座いません(笑)
この聖ゲオルギウスのモデルとなった人物は、いるのです。

それは真の?と言うか歴史上のゲオルギウス、その人は3〜4世紀のローマの軍人でした。
ローマ皇帝によりキリスト教迫害が為された時代、彼はそれに対抗したのですが、消されてしまいます。
その哀しい運命と立派な信仰心?が後に評価と言うか、尊敬されるようになったのです。
では何故、そのような遠い国ローマの人物が中世ヨーロッパ騎士のカリスマとなり得たのか。
それは、西欧人の大遠征である、「十字軍遠征」によって伝わったのだと言う事みたいです。
異教徒(イスラム)からの聖地エルサレム(Jerusalem)の奪還と巡礼を大義としたその遠征。
それは過酷をきわめたのですが、戦う術を持たない平民たちを異教徒から護る存在として、
赤い十字がサーコウト(鎧の上の上衣)に描かれた騎士の噂&存在がありました。
異教徒(邪龍)からキリスト教徒(お姫様)を護る・・・伝説と現実が絡み、
聖ゲオルギウスは中世ヨーロッパ騎士の間の理想として、瞬く間に広がったのでしょう。

面白い話もあります。イギリスの現在の国旗、ユニオン・ジャックですが、
3人の聖人を表す3つの十字を組み合わせたものです。
3人の聖人とは、イギリスを構成する3つの国の守護聖人だそうです。

聖ゲオルギウス:イングランドの守護聖人、白地に赤十字
聖アンドルー:スコットランドの守護聖人、青地に白のX形十字
聖パトリック:アイルランドの守護聖人、白地に赤のX形十字

聖ゲオルギウスは、騎士がいなくなった現代でも、いまだ崇拝し続けられているらしいです。
無宗教の私には、ピンときませんけど、尊敬する人やそういった守護人物を見つけるのもいいかもしれませんね。