騎士修行「前編」よりの続きです。
騎士になる貴族の子供は、おおよそ7歳から騎士になるための教育を受けます。
そして訪れる、さらなる教育。それが宮廷への出仕です。
14歳ごろになれば、小姓(騎士見習い)として王侯や城主の元に出仕する事になっています。
それぞれの身分に相応しい「宮廷」に出て、給仕や雑用をしながら、「作法」と「騎士道」を学ぶのです。
(「騎士道」の詳細については、他のトピックスにて。。)
もちろん同時に、よりいっそうの武芸に励むのですが・・・宮廷には軍事訓練などよりも、ずっと
魅力的な事象(恋愛など)が多くあったでしょうから、若い貴族の青年が、どれほど辛い訓練を真面目にやったかは
定かでは御座いません(笑)まあこれも、人それぞれでしょう。
ここで言う宮廷『court(コート,英)、cour(クール,仏)』とは諸侯が集う場所、と言った意味です。
先程書いたように、小姓は王侯や貴婦人『dame(ダム,仏)』に仕える召使いとなります。
例えば小姓は、王侯が起床したときに洗面のための水を持ったまま待ち続け、
それを手伝ったり、着替えの服を用意したり、武具の手入れをしたり、使い走りをします。(笑)
食事の席では、給仕、さらに手洗いのための水を持ったまま立ち続けます・・・。洗面と同じ(笑)
それまでは自分の実家などで「されてきた事」を自分が「する」側にまわるわけです。
しかし、身分が落ちたわけではありません。でも、まだ一人前の騎士ではないので、
騎士たちと同列に座ったり、一緒に飲食する事は叶いませんが、騎士階級の子弟として扱われます。
小姓となる目的は、子弟の忍耐力を養うものではありません。芸能界の下積みなどではないのです(笑)
貴族階級の日々の振る舞いや、礼儀作法を知るためなのです。
英語やフランス語には、「礼儀正しさ」を表す言葉の中にcourtesy(カーティシィ,英)、courtoisie(クールトワジ,仏)
と言う単語があると言うことらしいです。いずれも宮廷の礼儀から派生した言葉だそうです。
そうして言葉の語源となるくらいだから、宮廷の作法はかなり厳しかったようです。
宮廷に出入りするような貴族たちは、強烈な階級意識をもっています。かなり視野が狭いです。
新たに宮廷に出入りするようになった「新入り」は、常日頃から「その家柄や宮廷貴族」に相応しいかを、
日々の礼儀や振る舞いの中で見られているのです。非情に窮屈な、生活です。
いくら武功があっても、礼儀がなっていなければ即却下です(笑)
小姓としての生活は、「忠誠心」を育てるのにも役立つと言います。
王侯と常に顔を合わせたりしていれば、やがて主君となる彼らに親近感が湧くでしょう。
また、耳に入ってくる城内の会話や噂は、世間を知る一助になった事でしょう。
なかには常に王侯の傍についている小姓もいたかもしれません。
しかし、あまりにもべったりとくっついているかのような態度は、騎士としては相応しくないと考えられていました。
宮廷には、小姓はたくさんいます。だから、同じような騎士身分の子供たちが
深い絆で結ばれた戦場の友(盟友)を見つけ出すには、宮廷は最適の場所だったのです。
戦場では騎士は従者(歩兵)などによって補助されて戦いますが、盟友となった騎士もまた、「彼」に
注意を払ってくれるのです。この盟友関係は互いに深く信頼しあった場合に、誓約の形で結ばれます。
盟友を裏切る事は騎士にあるまじき行為、破れば非難轟々です。(笑)
そういった意味では、友達をとても大事にする人は「騎士」なのです!
そしてそのうち、「初陣」を飾る小姓も出てきます。
例えば、従騎士(楯持ち)として、主君である騎士のあとをチョコチョコついていったりします。
小姓のような何の名も通っていないデビュー直後の騎士、と言うのは戦闘でもあまり見向きもされなかったようで、
馬を御する事に集中したり、適当にうろうろしたりして、初陣で手柄を立てたり、戦死するのは稀でした。
そうして、小姓には苦労の末?騎士になる日がやってくるのです。
それは「騎士叙任式の日」。
騎士修行には資格試験などというものは無く、家族や主君が「そろそろ良いであろう」
と思ったときが騎士になれるときなのです。あいまい(笑)
しかし、中世では14歳がほぼ成人とされていたので、騎士修行をした人は、
14歳から18歳で騎士になるのが一般的でした。もちろん例外や事情によって色々ですけどね。
叙任式では、「騎士になる者」が鎧を身に着け、王侯(叙任者)の前にひざまずきます。
叙任者は、剣で該当者の肩を軽く叩く刀礼を行い、その剣を「彼」に与え、叙任することをつぶやきます。
そしてあとは、該当者が騎士に恥じない振る舞いを誓えば、完了です。
実にシンプルで、質素ではありませんか(笑)
しかし、時代が下ると、教皇(教会)が騎士階級を影響下に置こうとした狙いもあって、
騎士候補は、叙任式の前夜に聖堂で徹夜で祈り、神の戦士になるための誓いを立てるようになります。
そして、徐々にエスカレートしていき、王侯の叙任式は、神の祝福を受けながら、
大聖堂で盛大に行われるようになるのでした。
で、晴れて騎士になった若者には、これから新たに「騎士としての」修行が待っているのです。
それについては、「馬上試合」のページで^^