２００名山　No.８１　　荒沢岳（１９６９ｍ) 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　平成１９年９月１６日（日）
登山口（６：１０）→前山（６：５０〜５５）→前�ｰ（９：００〜１０）→荒沢岳 　　（１１：１０〜３５）→前�ｰ（１３：００〜１０）→前山（１４：５０〜５５）→ 　　登山口（１５：３５）
荒沢岳から見た中ノ岳 　　天気予報ははずれで、朝から上天気。こんな日に登らない手はないのだが、一抹の不安は左ひざである。屈伸運動を試みるが何とか痛みもなさそうだ。 　何度も通い勝って知ったる道を通り登山口に着き、歩き始めたのが昨日と同じ６時１０分だった。少し行くと貯水槽から水があふれている。とてもおいしい水だ。帰りにこの水を飲めるのが今から待ち遠しい気分だ。 　前山を過ぎ順調に登っていく。登りの時は余りひざに影響は無いようだ。昨日の中ノ岳に対する日向岳のように、荒沢岳の前にはもっと急峻なまえぐら前�ｰが行く手をさえぎっている。まえぐら前�ｰに近づけば急登になり、あえぎながら登れば「ここから岩場が始まります」とかいてある所に出る。いよいよ噂の鎖場だ。ストックをたたみ、ひと休みして心の準備をする。 　まえぐら前�ｰの左にもうひとつのピークがあり、鎖や梯子で右回りに登っていく。小さな尾根の肩に出るとほっとするが、目の前には岩壁がそそり立ち、ピークに人が立っているのが見える。「えー、あんな所まで行くの」と思わず口に出る。いったん下がり、トラバースして、いよいよ最後の核心部だ。角度が垂直ではないので恐怖感はそれほどなかったが「三点確保、三点確保」とつぶやきながら慎重に登っていった。鎖、鎖の連続で、このスケールはこれまで経験したことがない。 　体力的にもきつくなってきた頃、ようやくまえぐら前�ｰに飛び出した。眼下には５月に宿泊した銀山平温泉の建物や、ヘビのように伸びた奥只見湖が見える。荒沢岳をさえぎるものはもはやなく、コウモリが羽を広げたような形の山容は堂々としている。 　近づくに釣れて道は急峻になるが、荒沢岳の姿も刻々と変わっていく。頂上直下の笹の中の道は夏の低山を登っているように暑く、じりじりと照りつける太陽がエネルギーを奪い、かなりばててしまう。 　稜線にでてからも岩稜が続きほっとする間もない。岩山を四つん這いになって進み、ようやく頂上にたどり着いた。誰もいない頂上だった。標柱の少ない陰に隠れるようにして倒れ込み、まづは呼吸を整えた。 　元気になって顔を上げると、昨日登った中ノ岳が飛び込んできた。昨日はあの山からこの山を見ていたんだと思うととても不思議な気がした。右手には越後駒ヶ岳が続いているがこの角度からの姿は余り良くない。奥の巻機山には昨日かかっていたガスはない。前方には燧ヶ岳や奥白根山の特徴ある姿が見える。この大展望に今日の苦労は一瞬にして吹っ飛んでしまう。 　帰りは時間を気にせずゆっくり歩こうと決めた。特に急勾配の道はひざにくる。安全に登山口に戻ることが第一だ。前山から登山口の間はさすがにつらかったが、思っていたより早くあの水にありつけて生き返った心地がした。