200名山 No.84        笈ヶ岳(1841m)

          
平成20年4月28日(月)〜29日(火) 晴れ           
  @    中宮(8:20)→貯水池(10:10〜15)→カンタ山(11:05〜15)→山毛欅尾山
   (13:20〜25)→
冬瓜かもうり平(17:15)
  A
 冬瓜平(5:45)→笈ヶ岳(8:00〜10)→冬瓜平(9:50〜10:05)→山毛欅尾山
   (13:25〜35)→カンタ山(14:20〜15)→貯水池(15:00〜10)→中宮(16:30)
 
 @この時期にしか登れないので長年登る機会をうかがっていたのだが、ようやく実現する。でも、正直言ってうれしさより不安の方が大きい。なにしろ雪の上にテントを張って寝るのは初めての経験である。5年前に買ったGPSを探し出してきてやっと使い方を覚える。こういうものは本当に好きでないと、土壇場にならなければ覚えないものだ。
 
夕方までにテント場に着けばいいと、6時半頃家を出る。思ったより早く中宮温泉に着いた。林道は通行止めなので覚悟して歩き始める。かなり歩いたが貯水池の登り口であるコンクリートの階段が見あたらない。また戻って、ちょうどやってきた地元の人に聞くとそれでよかったらしい。なんと引き返した10メートル先にその階段があった。いきなり30分ほどのロスである。
 
階段は見上げてもすっと上まで続いておりその傾斜の急さに閉口するが、両側にはカタクリの花が満開で疲れを忘れる。カタクリといえばその先の貯水池の上あたりから杉林まで1キロ以上に渡って延々と咲き乱れていた。これだけ大きな群落は今まで見た中で最高の規模だった。
 2つ目の杉林を過ぎると所々雪が現れてきた。かろうじて道らしいものは続いているし赤い布や木につけられたペンキの目印があって迷うことはない。左手の木立の間にちらちらと笈ヶ岳がみえてきたが、ずいぶん遠いところにある。山毛欅尾山は広い雪原を持っていて、目の前に白山が見えた。

 
そこからは正面に笈ヶ岳を見ながら歩くことになるが、とくに1271mピークまでのヤブは半端ではなかった。何本もの雑木が横に伸びていてどこを歩けばいいのかわからない。道らしきものがあるところもあるが、アップダウンが激しく体力が消耗する。いつもは軽い荷で登っているが、今回はテント一式担いでいるので、休憩の回数も多くなり時間も長くなる。ただ、途中で僕を追い越していった広島の人の新しい足跡が雪上にあって、僕はそれをたどっていけばいいので少し気が楽だった。
 
予定の倍の時間をかけて、テントを張ることになっていた冬瓜平にたどり着いた。奥の方に3張りほどのテントが見えたが手前の平らなところにテントを設営する。さっそくみそ汁とおにぎりコンビーフの夕食とする。しばらくラジオなど聞いていたが、いざ寝ようとすると下からしんしんと冷気が上がってきて、寒くて寝られない。ガスバーナーをつけて暖をとるがガス中毒がこわくて火をつけたり消したりしていた。風がテントを揺らし、何か小動物が歩き回っているような気がしてぞっとする。「そういえばコンビーフのふたを外に出して置いたが、においをかぎつけてやってきたのかな」と余計なことまで考えてしまう。ただ落ちてくるほど間近に見えた満天の星はため息が出るほど感動的なものであった。

 
A4時頃からごそごそ起きだし、パンとコーヒーの朝食。雪でお湯を沸かそうと思ったのだが、夜のうちにすっかり凍っていて、少しの雪を掻き出すのにも一苦労。寝袋をたたみ、テントを撤収しリュックの整理をしているといい時間になってしまった。
 
サブザックに水と軽食をつめていざ出発。荷が軽いというのは何とありがたいことか。雪は適度のしまりがあって歩きやすい。ひょっとして先頭かと心配したが、ずっと先に4人ほどの先達があった。1640mのピークに出るまでが急登やアップダウンが多く苦労したが、尾根に出ると一気に視界も開け足も軽くなる。天気は予想に反して曇りがちで風は冷たく冬山の様相を呈している。はや下山する人に励まされて、頂上には意外とあっさり着いてしまった。ヤブが一個所もなかった分早かったのだと思う。
 
頂上には2人の男性がいて「2人合わせて150才だ」と自慢していた。少し視界は悪かったが何一つさえぎるものがない大展望。ようやく笈ヶ岳に登ることができた実感がこみ上げてきた。これだけ苦労して登ってきたけれど、たった10分の頂上だった。
 
下山を始めると、途中からどんどん人が登ってくる。ジライ谷の方から日帰りで登ってくるそうだ。そういえばネットで見たことがある。朝4時に登り始めたそうだが、荷物が少ない分有利かも知れない。早めに気付いてよかったものの、足跡に従ったら1640mのピークから思わず彼らが登ってきた方向へ行ってしまった。
 
帰りは山毛欅尾山への延々と続く登りが一番つらかった。そしてそこからの下りで膝が痛くなり始め、かすかな不安がよぎる。カタクリの花に慰められて何とか林道にたどり着いたが、肩に食い込む重さのために長く長く感じた。携帯の電池がなくなり山では一切電話できなかったが、中宮の公衆電話で無事を知らせて下界に急いだ