200名山 No.77     ペテガリ岳(1736m)

                
平成19年8月6日(月)〜8日(水)   
  【1日目】8月6日 曇り一時雨
  林道ゲート(8:30)……約1時間30分歩いたところで車に乗車…… 神威山荘
  (10:15)→滝(11:40)→飯場・昼食(13:10〜25)→
  ペテガリ山荘(14:30)
  【2日目】8月7日 曇りのち雨
  ペテガリ山荘(4:00)→1050mコブ(5:25)→1301mコブ(7:25)→
  ペテガリ岳(9:20〜40)→1301mコブ(11:05)→1050mコブ
  (13:30)→ペテガリ山荘(14:30)
  【3日目】8月8日 曇りのち晴れ
  ペテガリ山荘(6:15)→飯場(7:15)→尾根乗越(8:00)→滝(8:35)→
  林道入口(9:35)…約2時間30分歩いたところで車に乗車……
  林道ゲート(12:40)

ペテガリ山荘
  【1日目】前日夜8:30着のフェリーで苫小牧に上陸し、少し先の「道の駅みついし」で寝た。昔は静内からペテガリ山荘まで車ではいれたそうだが、今はその道は通れず神威山荘経由でペテガリ山荘に行くのがルートらしい。浦河町のおぎふし荻伏から山に向かって進んだが案内などは一切なく不安であった。舗装されていない道をどんどん行くと後からトラックが来たので聞いてみると、道は間違っていないが、途中にゲートがあってそこから3時間以上歩かなければならないらしい。登山者の車と林業関係の車がトラブルを起こし、今年から通れなくなったらしい。
 仕方なく覚悟を決めて歩き出す。山小屋泊なので荷物が多くずっしりと肩に食い込む。林業関係の車が何台か通るが、乗せてくれそうな気配はない。1時間半ほど歩いて少し休憩しようと思ってリュックを下ろすと、小型トラックが止まって「乗って行け」という。小躍りして乗り込むと東京からの先客がいた。途中で大阪からの登山者を拾い、おやじ三人組の結成となった。
 神威山荘から林道を少し戻り、造林道を入りいきなり川を徒渉した。それからはほとんど道のない沢をどんどん遡っていく。幸い目印の赤いテープがついているので迷うことはなさそうだが、一人だったらとても不安だっただろう。沢が無くなり笹の密集した急登を行けば尾根の乗越で、今度は反対側の沢が始まる。
 林道に出ると人が住む世界に戻ったようで一安心。しばらく行く伐採作業の大きな音で騒がしくなった。雨も降ってきたので飯場の小屋に入れてもらって昼食を食べた。道は次第に良くなり、1時間も歩くとペテガリ山荘に到着した。噂通りの二階建ての立派な小屋だ。三人で山の話しをするととどめなく、次から次ぎと興味のある話が出てくる。分かったのは、二人は僕なんぞよりはるかに経験を積んだベテランであるということだった。

 【2日目】二人は今日中に神威山荘まで戻り、明日神威岳に登る予定なのでまだ薄暗い4時出発となった。沢沿いにしばらく進んで行くと、いよいよ西尾根の急登に取り付く。濃いガスの中に緑の葉っぱが浮かんでいる。全く展望のない今日のような日は、ただ下を向いて黙々と歩くだけなので、苦しい行をしている気になる。
 目的のある二人の足は自ずとはやくなり、僕は遅れ気味になる。やっと追いつくと「大丈夫か」の声はかかるものの待っていたように出発するので僕は休まらない。いくつものアップダウンを繰り返し、最後の登りにかかる。このころ僕はペテガリ山荘にもう一泊する事を決心し、二人には先に行ってもらうことにした。
 コルから山頂までは500m以上の標高差がある。ここが本コースで一番苦しいところだ。ようやくダケカンバの樹林帯を抜け出しハイマツが現れると頂上らしい峰が現れたが、何度も何度も騙されてガクンと力が抜けてしまう。二人の姿を目にしてようやく頂上を確信することができた。
 さっそく頂上で写真を撮ってもらった。ひょっとして写真を撮るために僕を待っていてくれたのかと思うと、何だかとても悪い気がした。二人は駈けるように下山していった。ここでお別れだが、二人のおかげで安心して念願のペテガリ岳に登ることができたのだ。頂上では携帯が通じ、さっそく妻にメールを送る。一瞬だけサーッとガスが晴れて周りが見えたのがせめての慰めであった。
 帰りは5時間と計算して、「後○時間、後○時間」と時間が減るのを唯一の楽しみに下山した。登り返しが多いので、下山だからといって大して時間の短縮にはならない。途中で雨が降り出し気分は最悪。最後の1時間がとても長く感じたが、山荘が見えたときは心底ほっとした。
 今日は全く一人の宿泊。まだ日が沈まない内にぐっすりと寝入ってしまった。

 【3日目】早く起きたつもりだが、準備に手間取って出発は6時をまわってしまった。林道には意外と枝道が多く、来たときとは全く違った風景に見えて迷いそうなところが数カ所あった。そんな時は後ろを向いてじっくりと来たときの風景を思い出したり、赤いテープを探したりした。尾根乗越を越えれば後は下るだけなので、まず迷う心配はない。
 来るとき靴を脱いで渡った最後の徒渉も、慎重に足の置き場を決めれば何とか靴を履いたまま渡ることができた。造林道は何台ものトラックや機械が入っていて来たときとは雰囲気が一変していた。つり上げた木はそのまま両端を切り揃え、枝打ちまでやって積み上げられていく。あまりの手際良さに思わず見入ってしまった。
 今までは緊張して歩いていたからか背中の重さは余り気にならなかったのに、林道歩きになったとたん荷物が肩に食い込んできた。30分ごとに休憩をとりながらようやく見覚えのある景色の林道に戻ってきて安心していると、前から乗用車がやってきて止まった。「そこに熊がいたから、少し待ってから行った方がよい」ということだった。困った顔をしていると「これから少し作業をしてすぐ戻るから、乗って行け」と言われ、乗せてもらうことにした。
 作業というのは材木の消毒だった。「虫が入ったら売り物にならない」「近頃の若いもんは頭はいいがこんな知識がない」とか言いながらポンプで消毒している。話は林業行政にまで及び、とても話し好きのおじさんだった。おまけにクーラーボックスにたくさんジュースが入っていて、「何本でも飲んでいいよ」と言う。渇いたのどに炭酸飲料がどんどん吸い込まれていった。頂上からの景色は見えなかったが、念願のペテガリ岳に登ることができ、最後にこんなに人のいいおじさんに親切にしてもらい気分上々であった。
 みついし昆布温泉「蔵三」で3日ぶりの汗を流してさっぱりしたところで夕張に向かった。昨年と同じ広場に車を止めて寝る。ふるさとに戻った気分だった。