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行者平の石仏 |
藤野木から林道に入る。心細い気持ちでゆっくり登って行き、道路わきに「峠道文化の森入り口」と書いてある柱が立つ所で泊まることにした。シカが二頭甲高い声を上げて山の斜面を走っている。
翌早朝、歩き始めるとすぐ左手下に橋が見えた。入り口に何も書いてないのが気になったが、目印のテープもあったのでそのまま進んで行くと送電線の鉄塔に出た。どうも送電線の巡視路らしい。そこで引き返せばよかったのだが、尾根まで行けば登山道に出ることを期待してどんどん登って行った。尾根に出ても道は反対側に続いていたので、ようやく戻る決心をした。2時間余りのロスであった。
気を取り直し、もう少し林道を進んで行くと、枝分かれした道の20メートルほど先に道標がちらりと見えた。何とわかりにくい登山道の入り口であろうか。治水工事で道が付け替えられてわかりにくいところがあったが、「行者平」というガイドブックと一致する標識を見て一安心。
「峠道文化の森」は旧鎌倉街道沿いに設定してあるらしい。いかにも古びた石像や馬頭観音像が路傍 に立っている。深い落ち葉を踏んで進めば、いかにも往時を偲ばせる苔むした石畳が現れる。さらにそこの小石を投げて生まれる子供の男女を占ったという「子持石」を過ぎれば御坂峠に着く。峠には朽ちかけた御坂茶屋が建っている。破れたガラス窓から覗くと布団などが見えて、昔は山小屋としても使用されていたようだ。裏手には御坂天神の祠がある。
いよいよ黒岳に向けての最後の登りだ。ブナやミズナラの下に背の低い笹が生えていて、白い木と緑の笹が絶妙のコントラストをなしている。ゆるやかなアップダウンを経て一等三角点のある頂上に着くが、そこは樹木に囲まれて視界は無い。200メートルほど先に展望地があるが、残念ながら今日は富士山の雄姿は見られなかったが、眼下には河口湖が輝いていた。
帰りは早かった。特に御坂峠からのふかふかの落ち葉の絨毯の道は快適に駆け降りることができた。車に戻ってインスタント焼きそばの昼食を食べて、一宮御坂ICから中央道にのれば、5時半ごろには自宅に戻っていた。
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