日本300名山 No.68  黒法師(くろぼうし)2068m) 
             
                                        平成27年10月4日(日)晴れ  
 

   戸中川林道ゲート(5:15)→登山口(6:40)→ヤレヤレ平(7:50~55)→
  ジャンクションピーク(9:15)→黒法師岳(9:50~10:05)→ジャンクションピーク
  (10:40)→ヤレヤレ平(11:30~35)→登山口(12:15)→戸中川林道ゲート
  (13:35)

 この山は登る前から不安で一杯だった。長い林道歩きと長い急登、ルートハンティングが強いられることと遭難者が多いということがその理由だ。ネットで調べると麻布山を経由して登っている人も多い。しかし、前黒法師山から先は地図にも載っていない。遭難を一番恐れるので、ガイドブックにきちんと掲載されている戸中川林道コースを歩くことにした。
 前日、熊伏山から
水窪(みさくぼ)ダムを目指し、30分以上の長い林道を走ってゲート前に入って車中泊をしていた。5時ごろ先行する人がいたので、僕もあわててまずいパンをコーヒーで流し込み、ヘッドライトをつけて出発した。時々びっくりするほど立派な滝がすぐ横に現れる。長い林道も0.5キロごとに標識があるので励みになった。
 等高尾根への取付きである登山口からいきなりの急登。尾根に出てしばらくは勾配も緩むものの、両側から張り出した灌木の枝に進路をふさがれる。杉の植林地を越すと、あとは急登の連続だ。大きな猿が声を上げてゆっくり山を登っている。痩せ尾根を跨ぐようにして大木が立っているが、やがて広い斜面のジグザグ道に変わる。 急坂にうんざりする頃やっと平な所に出た。誰が名付けたか「ヤレヤレ平」である。再び急登が始まるが、赤いテープのサインが明瞭なので安心感がある。少し行った所に「市川戻り」という標識があるがどういう意味かはわからない。リスらしき小動物がものすごい勢いで木をかけ登って行く。日差しが強くなってきたが、大木におおわれた山道まで光が届かず、涼しくて気持ちがいい。足元に笹が出てくるとピークが近いことを感じさせてくれる。左手の丸盆岳や右手のバラ谷山が木立の間から顔をのぞかせている。「弁当転がし」という急坂を登れば等高尾根の最高地点であるジャンクションピークに着く。そのあたりの広葉樹はきれいに紅葉している。
 いよいよ笹の中の踏み跡をたどる道である。ストックでかき分け、足でなぞりながら進んで行く。目標が目の前に見えているだけに不安は少なかった。左手に富士山が顔を出してくれたのはもうけものだった。直下のガレ場をよじ登り、写真でよく見たバラ谷の頭への標識を過ぎれば平坦な頂上であるが、思ったより時間がかかった。
 平らな頂上にはテントが一張晴れるほどの空間があるのみで、あとは笹におおわれ、周りが木立におおわれていて見晴しはよくない。しかし、この山の三角点は「+」印が、「×」印になっているのでマニアには特に注目されている。ここまで苦労して登ってきたので、「やった」という征服感で一杯だった。
 怖いのはむしろ下山である。ザレ場で足を滑らせ転倒してしまい、ストックの上に倒れ込んでストックを曲げてしまった。また、笹の踏み跡をたどって行くと急に踏み跡がなくなってしまうこともあった。その時は下から登ってきた人がいて助かったのだが、実際の道はかなり下の方についていた。ちなみに山の中であった人はたった2人だけであった。広い尾根は危険が潜んでいる。谷を一つ間違えば遭難してしまう可能性が高い。長い林道歩きを経て、車の所にたどり着いたときは心からほっとした。  
 1時45分に車を走らせ、家に着いたのは8時であった。本当に長い一日だった。

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