早朝4時ごろから待っていたのに誰も来ない。天気が快晴であるだけに焦る気持ちも強い。5時半近くになって、ようやく1台の車がやってきた。それは73歳のおじいさんでカギがかかっていることは知らなかったという。そのときひらめいた。「24十勝」は「2468」ではないかと。案の定カギは簡単に開いてしまった。二人は大喜び。
駐車場には5台の車があった。避難小屋で宿泊しているのだろう。件のおじいさんが「一緒に登ろう」というので、先頭に立つ。スピード加減が分からないので、年齢のことを考えて、ややゆっくり歩く。2キロ地点の標識の前で立ち止まると「ゆっくり行ってます」と先に行ったが、それから2度と追いつくことはなかった。そのおじいさんは僕なんかよりずっと健脚だったのだ。
しばらく林道跡を歩いて、左側の急登の登山道に入る。アカエゾマツの林を進んでいくと、大きな岩が登山道に現れる。両側のアカエゾマツやハイマツが岩に絡み合って不思議な光景を作っている。ここが「天然公園」と言われるところだ。松の間から美瑛富士がきれいな三角錐を見せている。
森林限界を超えると、左手に石垣山、ベベツ山、オプタテシケ山の山並みが見えてくる。そしてハイマツの奥に美瑛富士避難小屋が見えてくる。
避難小屋から進路を左手に取り、ゴロゴロとした岩の道を登って行く。目指すオプタテシケ山まではいくつものピークを越して行かなければならないが、ガイドブックで頭に入れておいたので、ニセ頂上に惑わされてがっかりすることはなかった。ここにもニセイカウシュッペ山に劣らずたくさんの高山植物が咲いていた。特に地を這うようにして咲くシャクナゲの群落には目を見張るばかりだった。
6時間近くかけて到達した頂上には達成感があり、眺望も格別であった。東にはニペソツの山々、南には美瑛岳から十勝の山々、北にはトムラウシ山や大雪の山々と、一人悦に入っていた。
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