朝4時半に福井を出発して、10時半には登り始めていた。高速道路のおかげで本当に日本は狭くなった。黒檜山登山口を通り越して駒ケ岳登山口から登る。広くて整備された道だ。やがて急斜面が始まる。大沼(おの)はだんだん下になり2年前の7月に泊まった駐車場も見えてきた。
実は2年前、谷川岳に登っ た次の日この山に挑戦している。夜半からずっと雨。僕と末娘のRは車の中に寝たが、テントに寝たO先生など寝袋まで水浸しという有様だった。おまけに夜中にはバイクの音で悩まされ、翌朝早々に引き上げたのだった。
やがて急登が始まる。特に急な所には立派な鉄の梯子がか かっている。段と段の間隔が狭いので比較的楽だ。雲1つない青空が山の切れ目に見えてくると、ひょいと稜線に出た。反対側には山々や平野が広がっている。大きなまちは前橋であろう。
そこから駒ケ岳までの道は広々として気持ちのよい尾根歩きだった。口笛を吹きたくなるような散歩道である。前方には黒檜山が見事な円錐形の山容を見せている。左手奥には小沼(この)が神秘的な青い色に輝いていた。山上湖という点では夜叉ヶ池にも似ているが、すぐそばを車道が通っているのにはちょっと興ざめだった。
駒ケ岳からは黒檜山が一段と近づいてきた。駒ケ岳と黒檜山の鞍部にあたる大ダルミを過ぎると黒檜山の急斜面が待ち構えている。丁度経ヶ岳の切窓から頂上に至る 道とよく似ている。
頂上近くの黒檜山大神で昼食。人は少なくて、目の前には湖と山々が織りなす雄大な景色。とても満ち足りた気持ちであった。日差しは初夏のようにきつく、汗ばむほどであった。
頂上手前で40人位の団体とすれちがった。これだけの人がいなくなると頂上はだいぶ楽になると思ったが、狭い頂上にはまだかなりの人がごった返していた。燧ケ岳、武尊山、明日登ることになっている皇海山が雪で輝いている。
下りはたえず大沼を見下ろしながらの快適な道だった。ただ岩がゴロゴロして歩きにくいので気を付けなければならない。赤いモーターボートがミズスマシのようなシュプールを描きながら疾走していた。いよいよ観光シーズン到来といった所か。 |