ナビの案内が平岩から林道に入るようになっていたが、以前行った時のルートとは違っていたので一抹の不安があった。途中で地元の人に尋ねたら「道は間違いないが、今は通行止めになっている」と言われ、慌てて引き返す。
小谷温泉を目指す道は快適で、紅葉が素晴らしい。人気の山とあって平日なのに結構車が止まっている。霜の付いた木道を慎重に歩き始める。青空に紅葉が映えているが、登山口辺りから葉は落ちかけている。昨晩は冷えていたらしく、足元には霜柱ができている。
広い川原を歩いて行くが、やがて左の尾根の急登が始まる。葉の落ちた白樺が青空をバックに輝いている。道は単調そのもので、ただ黙々歩く。そしていろいろなことが頭を巡って行く。一人じっくり考え事ができることも登山の魅力の一つかもしれない。
水音が聞こえてくると荒菅沢に近づいている。所が天気は急変し、太陽は消えて寒々とした雰囲気になる。前回はたっぷりと雪渓が残っていたのに、今 は全く見当たらない。沢の上流に目をやると、布団菱が切り立った三角形に見える。
そこから一段と傾斜がきつくなり、ロープや梯子も現れる。おまけに雪が舞い出し、レインウェアの上着を羽織る。冬山の様相になり、やっぱりこの時期の登山は覚悟が必要だ。周りは濃いガスに囲まれ、全く視界が無い。笹平に近づいても、何回かアップダウンがあり気力が萎えかける。ようやくたどり着いた笹平もガスに囲まれ、以前に見たような広々さは感じられない。ここにも何回か起伏があり、最後の岩場の急登を行けば山頂に出る。
まず、石仏のある南峰に行き、頂上を示す標柱がある北峰に向かう。残念ながら展望は無い。ツェルトにくるまっている若者がいて、話声が異様に大きく感じられた。あまりにも寒かったので、パンを一口かじって下山にかかった。
荒菅沢の折り返しがきつかったが、思った以上に快適に下山できた。登山口近くの清流にアマゴが数匹悠然と泳いでいた。人の気配にも驚いて逃げる様子が無い。帰路、山田旅館で温泉に入り満足の一日となった。
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