平成15年 300名山 No.11 朝日岳(2418m) |
@蓮華温泉(9:00)→アヤメ平(9:25)→平馬の平湿原(11:20)→瀬戸川橋 |
@4時45分起床、5時に家を出る。途中コンビニが無くどうしようかと思っていたが、平岩の駅前に昔ながらの菓子屋があり、なつかしいアンパン、ジャムパン、クリームパンを![]() 蓮華温泉から9時に歩き始める。キャンプ場を過ぎると木道が始まる。濡れた木道は滑り安くとても危険だ。慎重に体重移動をやり、真上から体重をかける。それでも、かたがった木道は縁に足底をつけて歩かないとどうしようもない。 やがて、「兵馬の平」という大湿原に出る。草が黄色く色づいていて見事だ。夏にはどんな花を見せてくれるのだろう。道は瀬戸川に向かってどんどん降っていく。予想以上のひどい道だ。急峻な流れに立派な鉄の橋がかかっている。きっとこれまでいくつもの橋が架け替えられた結果できたものだろう。さらに先の白高知沢は広い河原でうっかりすると迷いやすい。地図には「丸木橋増水時注意」と書いてあるが、今は建築現場で使われている鉄材で作った急ごしらえの橋だ。 カモシカ坂の樹林帯の急登を行くと、所々にヘリコプターで木材が下ろされていて、木道の工事をしている人がいた。草原に出ると、さらに5、6人の人達が働いていた。本当にご苦労さんだ。この人たちは一体どこから通っているのだろうと思っていると、簡単なプレハブが2棟現れてきた。夏からずーっとここで暮らしていたのだろうか。 青ザクというガレ場までは紅葉した草原と緑の中に点在する赤と黄色の木々が実に美しかった。そこから栂海新道との合流地点である千代の吹上まではアップダウンの続く悪路で、すっかり体力を消耗してしまった。時々ガスが晴れて、目指す朝日岳が全貌を見せてくれるのが救いだった。 朝日岳の頂上への登りは、草一本生えていないガレ場で歩きにくい。歩幅をせまくしてゆっくり登ったが、思いのほか早く頂上に着いてしまった。誰もいないので、セルフタイマーで証拠の写真を一枚撮る。残念ながら視界はない。 頂上を降りた所の朝日平に朝日小屋がある。てんぷらや肉じゃがなど心温まる料理が出され、器もりっぱな陶器だ。食前酒までついている。部屋は東京から来た若者と2人。夜行で東京を金曜日の夜発ち、白馬岳と雪倉岳の頂上を踏んで6時頃この小屋に着いた。明日は日本海の親不知まで抜けて、夜行で東京に戻り、着替えて出社すると ![]() A今日は快晴。5時には足元もしっかり見えるほどの明るさになったので出発する。早朝の一人歩きはいつも一抹の不安を感じる。草木はしっかり露をつけているのでスパッツをはく。所々に小さな湿原があり、またもやにっくき木道である。夜露でしっかり濡れているし、おまけに霜がついているところもある。こうなるとスキー場状態で、少しでも傾斜がかかるとお手上げである。 そんなわけもあってか、朝日岳との分岐に着くまで随分時間をとってしまった。途中、小桜ヶ原などいくつかの湿原を通ったが、夏ならば様々な高山植物が咲き乱れるであろうことが想像できた。今回は草紅葉。これもそれなりにいい。 一旦ツバメ平の鞍部まで降りて、いよいよ雪倉岳への登りである。一歩一歩確実にガレ場を登っていく。背面の朝日岳の紅葉が朝日を浴びで輝いている。北の方から見る朝日岳とは全く違う様子を見せている。やがて視界が開け、雪倉岳のなだらかな山容が見えてきた。尾根道が続いており、まだまだ遠い。夏の名残を残すタカネマツムシソウがたくさん残っていて僕を励ましてくれる。 最後の登りになったが、丸みを帯び ![]() 朝日岳に目を転じると、穏やかな山容の左肩に昨日泊まった朝日小屋の赤い屋根が見える。あんな所から歩いてきたんだと思うと、感慨もひとしおである。 誰もいない頂上に、若い夫婦がやってきたのを機に下山を始める。眼前に白馬の山並みを見ながらの登山道は山の醍醐味を充分に味わせてくれる至福の時である。 しかし、楽しみも長くは続かない。今日は鉱山道を降る事にしているのだがその分岐点にやってきた。なにしろ、小屋で聞いたら誰もその道を降りた事がないというのだ。幸運なことに登ってくる登山者が一人いた。「ここは鉱山道ですね」と聞いてもうなずくだけで、声もでない程ばてている様子だ。少なくとも今日登ってきた人が一人いるということがとても安心感を与えてくれた。赤い○印が丁寧に何ヶ所もついているのも心強かった。道はどんどん下っていくが、途中に・・・の素晴らしい群落があって何かおまけをもらって得した気分だった。ハクサンフウロも惜しげなく道端に咲いていた。 比丘尼飯場までくると、道幅も広くなだらかになり、これが昔鉱物を運び出されるのに使われた道の跡だということが納得できる。きっと馬車が通れるほどの道だったのだろう。鉱山事務所跡の草むらに錆びついたスコップ、ツルハシ、一輪車の残骸があった。そんなに昔のことでもなかったのかもしれない。 瀬戸川に着くと、白く泡立つ水の勢いに怖気づいてしまう。こんな川をどうやって渡ればいいのかと思っていたら、少し下流に板の橋が渡してあり、ほっとした。鉱山道で危険な所は、分岐を過ぎたあたりの広々して迷いやすい所とこの瀬戸川の河原であろう。 それにしても、長い単調な道だ。3時ごろ着くと計算して、「あと2時間」、「あと1時間」と大声で叫んで自分を励ました。こんな時僕がやるのは「歌謡ショー」。昔の歌を次から次と大声で歌うのだ。永遠に続くかと思われた樹林帯の道の先に蓮華温泉のロッジが見えてきた時は、ちょっとした生還者の気持ちだった。 |