海外トレッキング日記  チロル・ドロミテの旅 2016年8月

8月3日(水) 
  早朝4時40分、S先生が迎えに来てくれた。先に着いていたYさんも乗せて中部国際空港へ。2時間半でいつもとめる「ブルー・テント」に着く。
 出発ゲートで浜松のSさんと合流。僕らが乗るフィンランド航空は満席。現地時間の6時過ぎミュンヘンに着く。両替所やバス乗り場を探したりしてだいぶ時間を取ってしまったが、無事エアポートバスに乗ることができた。
中央駅近くのホテルにチェックインして、市庁舎めがけて歩く。9時ごろイタリアンの夕食。ホテルに戻ったら11時近くになっていた。
8月4日(木) 

晴れ

ゼーフェルト


 セーフェルダー・ヨッホ(12:45)ゼーフェルダーシュピッツェ(13:25)鞍部(14:05〜
10)ライターシュピッツェ(14:35〜45)ネルトリンガーヒュッテ(15:00)ヘルメレコプフ(15:55)

 最初に、レンタカーを借りに行く。ヨーロッパはマニュアル車が主流で、しかも日本のマニュアル車と勝手が違うので下手するとエンストを起こしてしまう。慣れるまで非常に運転がしにくい。複雑なミュンヘンの道路に慣れるのも一苦労。ここは運転するSさんとナビをするS先生に頑張ってもらって、ようやくミュンヘンを脱出することができた。
 ドイツで一番高いツーク・シュピツェを前方に見ながらオーストリアに入る。オーストリアに入ってガソリンスタンドで高速道路の通行券を買う。これがあれば10日間オーストリアの高速道路を走ることができる。

 やがて高級リゾート地であるゼーフェルトに着く。ここへは以前訪れたことがあったが、ピークを征服できる数少ない山で、印象も非常に良かったので再訪もやぶさかではなかった。
 まず、ケーブルカーでロスヒュッテまで行き昼食を食べる。ソーセージとポテトを食べたのだが、ポテトの量の多さに閉口する。そこから右回りと左回りコースがあるが、左のゼーフェルダー・ヨッホの展望台へロープウェイを乗り継いで行く。展望台はまさに360度山に囲まれ、雄大な景色が広がっている。一つ目のピークであるゼーフェルダーシュピツェまではなだらかな稜線が続いている。高山植物もかなり残っており、まさに天空のプロムナードだ。ゼーフェルダー・ヨッホからトラバースするまでの急な下り坂と鞍部からライターシュピッツェまでの急登はかなり苦しかったが、頂上にたどり着いた時は一つの山を征服したという満足感があった。ネルトリンガーヒュッテからロープウェイの乗り場があるヘルメレコプフまでは整備された道だが非常に長く感じた。風を切る音で見上げるとグライダーが2機青空に舞っていた。
 
6時半ゼルデンのホテルに着く。ホテルの親父が酒を持ってきてくれて、皆で乾杯をした。すぐ近くのレストランへ行き、今日は3人分を4人で食べたらちょうど良い量だった。

8月5日(金)




 

  天気予報通り朝から雨。雨の中、オーバーグルグルのホーエ・ムート展望台に行くゴンドラ乗り場まで行く。ゴンド

 
黄金の小屋根

ラは動いていたが、何も見えない雨の中を歩く気は失せていた。チロルでも特に雄大な自然に出会えるというオーバーグルグルのトレッキングはあきらめて、インスブルックへ急ぐことにした。
 インスブルック駅のホテルの地下駐車場に、首尾よく車を止めることができた。エレベーターで地上に出た所でビデオカメラを忘れたのに気が付いた。駐車場に戻りたかったが、レセプションまで行かないと降りられないことになっていた。駐車場の前まで来ても、ドアは駐車券かホテルのキーがないと開けられないようになっていた。駐車券を持っている仲間とはぐれていたので、ビデオはあきらめざるを得なかった。
 雨の中傘をさして、マリア・テレジア通りから旧市街を目指す。前回訪れた時は電車かバスで旧市街へ行ったが、歩いてもそんなに遠くないことがわかった。まず、旧市街の象徴である黄金の子屋根を見る。黄金に輝く子屋根は、皇帝マクシミリアン1世が広場で行われる行事を見物するために造らせたと言われている。続いて訪れた王宮は落ち着いた白亜の建物だが、内部はウィーン風の豪華な造りになっている。

 8月6日(土)

 晴れ 

ガイスラー山群

ザンザー駐車場(10:45)グラッチ小屋(11:15〜30)カスナゴ小屋(12:40〜13:05)オドレ小屋(13:10)ダスレル小屋(13:45)ザンザー駐車場(14:15)

 インスブルック駅に隣接したイビスホテルは今回の旅行で唯一朝食が付かなかった。それで、駅の構内でパンとコーヒーの朝食をとる。全員の朝食の値段がホテルの朝食の1人分の値段だった。
 イタリアに入るとだんだん明るくなり、緑の牧草地に点々と建っている家がとてもかわいい。土曜とあってか広大な駐車場にどんどん車が入ってくる。トレッキングコースは幾つもあるらしく、みんな四方に散って行く。
 僕たちはガイスラー山群を目指して歩き始める。早くも目の前に山群の幾重にも重なった岩峰が現れる。グラッチ小屋ではトイレを借りる代わりにアイスクリームを注文する。こういった所は律儀な日本人だ。高山植物もかなり残っていて、紫や黄色、ピンクの花が彩りを添えている。特にアルペンローゼの赤い花やヤナギランの群落が見事だ。
 カスナゴ小屋から陽気なアコーデオンの音が聞こえてくる。民族衣装をまとって演奏しているおじさんが、アルプスの雰囲気を醸し出してくれる。頂上近くにかかっていたガスも晴れ、岩峰が青空によく映えている。素晴らしい景色を眺めながら、駅で買ったトマトや野菜の入ったパンをかじる。
 帰途寄ったフネス谷は、ガイスラー山群の下に牧草地、農夫の家、教会などが絵画のように広がっていて、いつまでも佇んでいたい所だった。

8月7日(日) 

晴れ 

ピズ・ボエ山

(3152m)

 
 サス・ポルドイ(11:55)フォルロラ・ポルドイ小屋(12:15)ピズ・ボ(13:15〜40)小屋(14:10)フォルロラ・ポルドイ小屋(14:55〜15:00)サス・ポルドイ
(15:20)

 今日は雲一つない青空。ホテルから岩山を見ると、上部がオレンジ色に輝いていた。今日は2ヶ所でのトレッキングが予定されており、まず岩峰の間にあるサッソルンゴの山頂駅を目指すゴンドラに乗る。
 立って乗る二人乗りのゴンドラは初めての体験だ。スピードが一定なので、乗る時と降りる時注意しないと転んでしまう。もっとも頑強な二人が補佐してくれるので、そんなに心配はいらない。ゴンドラの横を歩いている人もいる。急登にかなり辛そうだ。
 頂上駅に着いても見上げる岩峰がそびえている。何人かの人がロッククライミングをしている。ここは岩登りのメッカでもあるらしい。眼下には緑の牧草地が広がり、遠くドロミテ最高峰のマルモラーダの頂上部が、白い雪に輝いている。多くの人は反対側に降りて行ったが、次の予定があるわれわれは再びゴンドラに乗って山を下った。
 つづらおりの道をどんどん登って行くと、ドロミテでもっとも標高の高いポルドイ峠に着く。日曜日ということもあってか、広い駐車場にあきは無い。結局峠を少し下った所にある有料駐車場に車を止めることができた。ロープウェイで降りたところが展望台になっており、一段と迫力を増したマルモラーダ、そして鋭い岩峰を持った山々と緑の草原や森林とのコントラストが絶妙で、いつまでも見飽きることがない。
 山上レストランで腹ごしらえをして、いよいよピズ・ボエ山の頂上を目指す。月面のような灰色の砂地の上に饅頭のような頂上部がのっている。なだらかな道をしばらく進んで鞍部まで降りると、朱に縁どられたフォルロラ・ポルドイ小屋に着く。壁には2848mと書いてある。さらに砂礫の急登を登って行くと山小屋のあるピズ・ボエ山山頂だ。今回の山旅の最高地点でもある。山小屋のテラスでは大勢の人が食事を楽しんでいる。文字通り360度の大展望。マルモラーダが一段と迫力を増している。遠くに見える白い山はオーストリア・アルプスだ。
 下山は反対側の道を取る。ワイヤーの手すりのあるいきなりの急降下と日陰になっている所には氷が残っているのには驚いたが、やがて歩きやすい道に変わっていった。

8月8日(月) 

晴れ 

チンクエ・トッリ

 
トレ・チーメ


スコイアトッリ小屋(9:40)チンクエ・トッリ一周スコイアトッリ小屋(10:45)

オーロンゾ小屋(14:30)ラバレド小屋(15:00)展望台(15:20〜25)ランガルム小屋(16:15〜20)オーロンゾ小屋(17:00)

  明日の天気予報が良くないと分かっていたので、この旅のハイライトと言うべきトレ・チーメは予定を変更して今日登ることにした。その前に、ドロミテの中心地コルティナ・ダンペッツォの手前にあるチンクエ・トッリを訪れた。まずは、リフトに乗って2225mにあるスコイアトッリ小屋を目指す。小屋の目の前に見える5つの岩峰がチンクエ・トッリで、規模は小さいが近づくとなかなか迫力がある。枝道がいくつかあって迷う場面もあったが何とか時計回りに一周することができた。途中には第一次世界大戦の時の塹壕が残されていたり、ロッククライミングをしている若者がいたりして、思わず足を止める場面が何カ所かあった。
 さていよいよトレ・チーメだが、ミズリーナ湖あたりからすごい渋滞。平日だから大丈夫だろうと思っていた考えは甘かった。おまけにトレ・チーメの駐車場に向かう道路は警察によって封鎖されていた。すこし先の空き地に車を止めてとりあえず昼食のパンをかじる。話し合った結果「2時まで待ってまだ通行止めだったらホテルにチェックインして、明日の早朝に登る。」ということになった。明日の天気は良くないので、何とかして今日登りたいのが本音だった。 1時間ほど待って駐車場の入り口に戻ると、警官はすでにいなく、嘘のようにすいすい車を入れることができた。下山する人も多く、駐車場は空き始めたのだろう。さっそくオーロンゾ小屋から登り始める。半周したところにある展望台までは、アップダウンも少なく、幅の広い歩きやすい道だ。人も多く、マウンテンバイクに乗ったり、ベビーカーを押している者さえいて、今までの登山道とは一風違った雰囲気だ。
 幾つもの岩峰があって、どれがトレ・チーメかよくわからなかったが、展望台まで来ると全貌が分かり始めた。トレ・チーメとはイタリア語で3つの頂という意味だ。その名の通り3つの高い頂を持つ岩峰はよく写真で見かけ、おなじみだ。
 展望台からは、白い岩がごつごつした平原の中の道を歩く。これまでと違って、静かでほとんど人に会うことがない。トレ・チーメも歩くにしたがって形を変えていくが、だんだん逆光になり、岩に暗い影がでてきたのには少し残念だった。
 一周して戻ってくると、車はすぐそこにあった。コルティナ・ダンペッツォのホテルにチェックインして街へ食事に出る。中心部には歩行者天国などがあり、人でにぎわっていた。

8月9日(火)

曇り時々雨 

 コルティナ・ダンペッツォの駐車場に車を止めて買い物をする。朝早いのに駐車場はほぼ満杯だ。ドロミテに来て思うのは、車の多さと駐車場の少なさだ。それだけ駐車場にできる土地がないということだろうか。僕はスーパーでお土産にオリーブ油を11本も買ってしまった。後先を考えずに衝動買いをしてしまった。その時は何となく機内に持ち込めると思っていたのだが、最近液体の機内持ち込みは厳しくなったので、スーツケースに入れるより仕方がないだろう。
 時々雨が降る中、3時ごろミュンヘンに戻ってきた。ガソリンを満タンにして車を無事返却する。今回ほぼ一人で運転したSさんは心底ほっとしている様子だった。最後の夕食はフロントで紹介してもらった中華料理の店に行く。これまでピザやパスタが多かっただけに、中華の味はまた格別だった。










コルティナ・ダンベッツォの教会

8月10日(水)

曇りのち晴れ

駅前から出ているエアポートバスで空港へ。デューティーフリーで最後の買い物をする。

8月11日(木)

晴れ
 中部国際空港に着くと、まとわりつくような暑さ。チロルやドロミテがいかに涼しかったのか思い知らされる。山の日の影響か、車は一宮IC近くで大渋滞。東海北陸道で白鳥から大野回りで帰ることにした。3時ごろ自宅に戻ったが、また大野に戻らなければならないS先生に感謝。