福井を出る時は雨で、車内は重苦しい雰囲気が漂っていたが、上信越道の妙高を過ぎる辺りからどんどん天気は回復し、登山口の硯川の駐車場に入る頃には青空が見えてきた。現金なもので、天気が良くなると元気 も出てくる。
出発の時間が遅かったので、前山に登るリフトに乗ることにした。リフトを降りた湿原にはニッコウキスゲの群落が見られる。砂利を敷いた広い道を歩けば、渋池に出る。志賀高原で一番高い横手山をバックに、浮き島を浮かべた渋池が静かなたたずまいを見せている。
ほぼ平坦な樹林帯の中の道を進めば、四十八池湿原に行く道と、直接志賀山に登る道との分岐に出る。志賀山に登る道は急登なので、ここは予定通り右の四十八池湿原を目指す。女の子二人を連れたお母さんが我々の前を歩いている。たくましくもあり、ほほえましくもある。
樹林を抜けると、広い湿原に出る。四十八池湿原には、大 小70近くの池塘が点在するそうだ。湿原の中に木道が続いており、尾瀬を思い出させる。花はそれほどなく、目についたのは白くて丸いワタスゲである。対岸のベンチで昼食にしようか迷っていると、裏志賀山まで行こうという声が多く、志賀山神社の鳥居をくぐって急登を登り始める。山頂辺りから子供たちのにぎやかな声が響いてくる。東京からやってきた小学5年生の団体であった。元気よく挨拶をしてくれたり、話しかけてくれたりするのでこちらもとても元気が出てくる。ロープのあるザラ場あたりで、先生がわれわれのために 生徒にストップをかけてくれた。いつもはマイペースの女性群も、彼らに迷惑をかけてはいけないと思ったのか、信じられないほど早く急登の部分を通過することができた。
裏志賀山にはこれと言って頂上を示すものは無く、志賀山神社の小さな祠があるだけだ。昼食を食べられそうな場所がなかったので、ベンチがあった所まで戻ることにした。弁当を広げていると、一瞬のうちにガスが晴れてきて、コバルトブルーの大沼池が現れてきた。これにはみんな大興奮。疲れも吹っ飛ぶ瞬間だった。
いったん下って志賀山の急坂を登って行く。振り返れば、ガスの間から岩菅山が顔を出している。志賀山の頂上には三角点や標識があるものの、小さく開けただけの何の変哲もない所だった。周りはガスで真っ白だったので、いっそう印象が薄い。
志賀山からの下りは、石がごろごろしていて段差があるので一番苦労した所だ。あまりのつらさに、白山の観光新道の下りを思い出した人もいるようだ。予想以上に時間がかかりそうだったので、帰りのリフトに間に合うか心配になってきた。一足先に下って行って、木道が現れたので、何とか間に合うめどが立った。
宿に入って温泉に浸かり、美味しいビールと食事に舌鼓を打てば、疲れも吹っ飛び、苦しさは楽しい思い出と変わっていった。
翌日は快晴の下、横手山から笠ヶ岳を始めとする志賀高原の山々を眼下に見下ろし、志賀草津高原ルートを通り「鬼押出し園」を訪れ、軽井沢銀座をぶらぶらする。心配した渋滞も無く、7時前には福井に戻ってきた。
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