No.73        五竜岳(2814m)

        平成13年6月9日(土)〜10日(日)    晴れ 
   @第一ケルン(8:50) → 第二ケルン(9:10) → 八方ケルン(9:25) → 
   丸山ケルン(10:45〜55) → 唐松岳頂上山荘(11:45) → 唐松岳頂上
   (12:00〜25) → 唐松岳頂上山荘(12:35) → 鞍部(13:40)→ 
   五竜山荘(15:05〜15) → 五竜岳頂上(16:20〜45) → 五竜山荘
   (17:35)
   A五竜山荘(6:30) → 中遠見山(8:00〜05) → 小遠見山(8:25) → 
   一ノ背髪(8:45) → アルプス平駅(9:25)   

 『1日目』
 朝4時、目覚し時計が鳴る直前に目覚める。気持ちが入っていると不思議とその時間に目覚めるものだ。
 8時過ぎ、ゴンドラリフトの八方駅に着く。30年前の夏、学生村に滞在していた時に訪れて以来だ。黒菱平には水芭蕉が見事に咲いており、霧の中で幻想的な雰囲気をかもし出していた。3つ目のリフトを降りると、いよいよ登山道にはいる。
 10人ほどの登山客がいたが、みんな最初はオーバーペース気味で、どんどん先に進んで行ったが、「ゆっくり着実」の僕が八方池の所で結局は先頭になってしまった。池は9割ほど雪で覆われていた。心配されたガスは登って行くにつれてどんどん晴れて、丸山では行く手の唐松岳、左手の白馬連峰と大パノラマが出現した。その間に位置する不帰の剣はさながらミニ槍ヶ岳といった感じだった。
 12時丁度に唐松岳山頂に着く。誰もいない。左手には目指す五竜岳が圧倒的な迫力で迫っており、正面奥には剣岳や立山が屏風のように並んでいた。
 唐松岳頂上山荘から五竜山荘までの縦走路は想像以上に大変だった。もろい岩の連続で、崩れた岩のかけらが音を立ててどこまでも落ちて行った。途中で誰にも会わなかった。「そんな馬鹿な」と心でつぶやいていた。
百名山でこんな経験はあまり無い。鞍部からハイマツ帯を登って行く時はもうかなりバテていた。休憩すると、もう立ちあがりたくない気分だった。
 ようやく今日の宿泊場所である「五竜山荘」に到着したが、手続きを済ませると荷物を置いて思いきって頂上に向かうことにした。この天気が明日も続く保証が無かったからである。
 ゆっくり歩いて行った。頂上に近づくにつれて、厳しい岩場に変わってきた。鎖場の所にピッケルが3本置いてあった。僕もそれに習ってステッキを置いて素手で登り始めた。かなり厳しい鎖場の連続を覚悟していたが、あっけなく頂上に着いてしまった。
 予想通り、頂上には3人の先客がいた。もう2時間近くもいるという。風の無い穏やかな日だったのできっと気持ちが良かったことだろう。下の方に雲が立ちこめていたが、頂上からの展望には大満足であった。鹿島槍ヶ岳が一段と大きく双耳峰を見せていた。昼食を食べた唐松岳は意外にも小さくそして低く見えた。登ってきた縦走路が延々と続いている。4時間かけてあそこを通って来たのだと思うと、人間の足はつくづく偉大である。
 山小屋は300人収容という割にはには10人程の客しかいなかった。この季節はこんなに空いているとは思わなかった。僕には個室が与えられ、しかも部屋の窓から五竜岳がデンとそびえていた。何と言う幸運であろうか。

 『2日目』
 帰りは遠見尾根を下ることにした。小屋から尾根を見下ろすといくつもの山の重なりが続いていて、万里の長城を思い出させた。五竜山荘から目標の縦走路までは雪渓の上を一気にトラバースしていった。ここではアイゼンの必要性を強く感じ、忘れてきたことが悔やまれた。滑り落ちたら止まらないのではないかという恐怖心を感じながら慎重に足を進めていった。
 遠見尾根は登りに使うと大変かもしれないが、降りはルンルン気分で歩くことができた。右手の鹿島槍がいろんな表情を見せてくれるのがいい。また登山道沿いにいろいろな花が現れる。カタクリの花の大群落は今まで見たこともないような大きな規模であった。
 この道でも誰にも会わなかったが、地蔵の頭で、大勢のツアー客に会う。一気に下界に下りてきたことを実感させられた。ゴンドラを降りてから神城駅まで歩いたが、大糸線は1時間以上待たなければならなかったので、八方の駐車場までタクシーを使った。それで2時にはもう家に着いていた。