日本百名山 五竜岳2814m)

            平成24年7月28日(土)〜29日(日) 晴れ

  【1日目】地蔵ノ頭(9:05)→見返り坂(10:10)→小遠見山との分岐(10:55)
  →中遠見(11:15)→大遠見・昼食(11:55〜12:15)→西遠見(12:50)
  →五竜山荘(14:45)

 【2日目】五竜山荘(4:10)→五竜岳頂上(5:15〜20)→五竜山荘(6:10〜25)
  →大遠見(8:10)→中遠見(8:55〜9:05)→小遠見山との分岐(9:25)
  →見返り坂(9:55)→地蔵ノ頭(10:20)

 【1日目】 なぜか、五竜岳と鹿島槍ヶ岳の間を縦走したいと言う思いがずっとあった。昨年の秋は鹿島槍ヶ岳の手前の(つべた)(いけ)山荘まで入ったが、翌日は凍結していてキレット方面は行かないように言われて、泣く泣く引き返してきた。 今年は満を持して、五竜岳から入ることにした。 神城駅から無料のシャトルバスに乗って、テレキャビンの乗り場まで行く。テレキャビンではパラグライダーをやる人と一緒になり、いろいろ面白い話を聞くことができた。さらにリフトに乗り地蔵ノ頭まで行く。地蔵ノ頭からテレキャビンの乗り場までは高山植物園になっており、早くも大勢の観光客が歩いている。
 小遠見山までは割りと軽装のハイカーが多い。小遠見山の手前の分岐で、右手の巻道に進む。小さなアップダウンを繰り返し、立派なケルンの建つ中遠見に出る。ガスのために回りは見えない。いったん鞍部まで下り、階段のある厳しい登りを折り返せば大遠見である。手前の日陰で昼食にする。このあたりはイワカガミが多い。
 いくつかの小さな雪渓のある道を進めば、前方に(しら)(たけ)の大きな山塊と左下の五竜山荘が見えてくる。ここからの登り返しが、今日の行程で一番つらいところだった。ただ、一番のお花畑があり、ゆっくり花を観賞しながら登れば天上の楽園である。チングルマの白、ハクサンフウロのピンク、シナノキンバエの黄色、クルマユリの朱色などが印象的だった。
 連休が悪天候だったこともあり、今日の山小屋は布団1枚に2人という大変な混みようであった。最近はめっきり高山に弱くなり、頭痛に悩まされた。八峰キレットを歩いてきたと言う人とキレットを歩いたことがあると言う人がその怖さを話していた。10時間もかかり相当の体力が必要とされるようだ。もう僕は若くないし、ガレ場の10時間に耐えられるだろうか心配になってきた。おまけに数日後にカナダのトレッキングを控えており、怪我でもしたら仲間に迷惑がかかるなどと考えていたら、僕の心は「縦走はしない」に傾いていた。

【2日目】縦走しないにしても、五竜岳の頂上だけは登っておこうと思い、4時過ぎ小屋を出た。すでにヘッドライトの列が見える。途中でご来光が見れたらと期待したが、雲が多くいつの間にか太陽は出てしまっていた。リュックサックは小屋に置いてきたが、ガレ場の急登は息が切れる。左手に双耳峰を持つ鹿島槍ヶ岳が見えていたが、視界が利いたのもそこまでで、あとは白いガスの中だった。平らな頂上部に通じる最後の岩場を登りきると、鹿島槍への縦走の分岐に出た。単独行の人が降りていく。昨日まではここを進もうと意気込んでいたのだが。数分で頂上に出た。前回登った時は、大パノラマを展望できたのに、今日は白の世界だ。
 早々に下山を開始する。鎖場などで時々流れが止まり、糞詰まり状態になる。みんな忍耐強く待っているが、僕は単独なので合間を縫って下山させてもらう。皮肉なもので、小屋につくころにはガスが切れ、青空がのぞき出した。五竜岳の全貌が現れ、頂上にいる登山者さえ確認できた。この山は角度によって極端に姿を変える。小屋から見ると台形に見えるが、唐松岳から見ると割りとなだらかな山塊に見え、遠見尾根から見ると人を寄せ付けない急峻な岩山に見える。
 小屋に戻って朝食を食べ、遠見尾根を下山する。高度を下げるにつれて焼け付くような暑さになる。日曜日とあって地蔵ノ頭は観光客でごった返していた。高山植物園の中をテレキャビンの乗り場まで歩く。コマクサやエーデルワイス、青いケシの花などが咲いていた。テレキャビンに乗る前に、しっかり冷えたお手拭を渡してくれた。これはとても気が利いていて、僕ら登山者にとっては最高のプレゼントだった。