@早朝白馬の近くを走っていると、白馬三山を始め、唐松岳、五竜岳、そして今日の予定である鹿島槍ヶ岳までスカッと見えた。何回も通って いるが、こんなに下から上まできれいに見えたことはなかった。
右回りにぐるっと巻いて走り、扇沢から柏原新道にはいる。よく手入れされたいい道だが、モミジ坂と言われる急登がかなり続く。背後に大町の市街が見える所にくると、間もなくケルンが現れる。眼下には扇沢のバスターミナルや駐車場が見え、自分の車も確認することができた。
稜線に目をやると赤い屋根の種池山荘が見える。「あんなところまでどうやっていけるのかなぁ」と不安になるほど遠くに見える。
「一枚岩」(どの岩のことを言っているのかよくわからなかったが)とか「石畳」とかいわれる地点を過ぎると「少人数で静かに渡りましょう」という看板のある沢を横切る。この季節は残雪も水もない。
途中、40人のグループと90人のグループを追い越した。40人のグループは7〜8人の
グループに分かれていたので良かったが、90 人のグループには閉口した。列は切れ目なく続いており、「急行3名あり!」とか叫んで道を開けてくれるので、疲れていても休むこともできずかなり大変だった。
種池山荘は急坂のお花畑を登りきった所にあり立地は抜群である。小屋の横から鹿島槍ヶ岳が均整のとれた双耳峰を見せており、右手奥には爺ヶ岳が三角錐の大きな山容を見せていた。登ってきた道を振り返れば針ノ木岳が雲海から頭を出している。
爺ヶ岳を目指して気持ちのいい道を進んでいくと、爺ヶ岳の南峰、中峰、北峰の連なりや今日の宿である冷池山荘とその上の赤茶けたテント場が見える。そしてその上に鹿島槍ヶ岳の南峰と北峰が鋭く天を突いている。左に目を転じると、剣岳はいつも見る形よりもひときわ険しく、北の俊英の貫禄充分である。あまりにもすばらしい景色に思わずシャッターを押す回数が増える。しかし結果的にそれは正解であった。爺ヶ岳の南峰には怪しい雲が流れていたが、頂上に着くとあたりは真っ白なガスに覆われ、それらの山は二度と見ることが出来なかったのだから。
A早朝であれば、しばらくでも視界がいいのではないかと期待したが、無理だった。稜線に出ると風が強く、雨も降り出して雨具をつける。雨具をつけて登ったのはいつ以来だろう。それほど今までが恵まれていたということだろう。
あこがれの山の頂上には着いたが、横殴りの雨と風では立っていることもできず、写真だけ撮ってそそくさと下山にかかる。雷鳥も寒そうに風にふるえている。それにしても、この山では何回も雷鳥にあった。布引岳あたりでは僕らの前の登山道をどこまでも歩いてくれて、まるで先導してくれているかのようだった。
帰りは、何にも見えない中をただ黙々と下った。「台風が近づいてきているのでしかたがないか。」と、昨日すばらしい景色を見ているのであきらめも早かった。 |