仕事が終わって6時頃福井を出たので、登山口の毛木平に着いたのは(少し迷ったこともあったが)1時近くであった。しかし快適な車のベットにもぐり込んでぐっすり寝たので、体調はGoodである。それにしても夜中にカモシカの甲高い鳴き声が時々静寂を破ってはいたが。
毛木平からの登山道は、日本一長い千曲川の源流を訪ねる旅でもある。遊歩道と言う名のとおり、ほとんど急な斜面はない。千曲川にかかる小さな気の橋を何度も横切り、つかず離れず道は続いている。
やがて立派な千曲川水源地標がある広場に出る。左手の一段下がったところに水がこんこんと湧き出ており、なるほど確かに川はそこから始まっている。
道はぐっと傾斜を増し、本格的な山道となる。国師ヶ岳との分岐を過ぎると傾斜はゆるくなり、両側にシャクナゲの木が現れてきた。そうだ、ここはシャクナゲで有名な山なのだ。
頂上近くのガレ場あたりから、樹氷のついた木々が現れだした。寒々とした冬景色である。春先に登った九州の祖母山を思い出したが、あれほどのスケールではない。
頂上には凍るほど冷たい風が吹いていた。朝方あれほど晴れていた空が、登るつれて悪くなり、今は鉛色で視界はまったくない。登る時もそうであったが、頂上でも30分いたが誰にも会わなかった。こんなに寂しい百名山は初めてであった(さすがに帰りは何人かの人に会ったが)。今まで撮ってきた頂上での記念写真は無理かなと思ったが、セルフタイマーで何とか撮ることができた。ちょっと早い昼食にしたが、寒さで手がかじかんできたので、早々に下山する。
皮肉なもので、下山するにしたがって天気が回復し、毛木平に着く頃には雲ひとつない青空になった。カラマツの黄色い色が太陽に映えて美しい。
三国峠に向かう車を、均整の取れた甲武信岳が「頂上から何も見えなくてゴメン」とばかりに、いつまでも見送ってくれていた。 |