海外トレッキング日記  ニュージーランド 2000年〜2001年

12月26日(火)
 晴れ
 KEの15:40発で関空からソウルに向けて出発。ソウルではタラップを降りてバスで空港ターミナルへ。マイナス7℃という身を切るような厳寒を体験!
12月27日(水)
 晴れ
 オークランド経由で14:35クライストチャーチに着く。気流の関係かクライストチャーチの上空でかなり揺れたのには肝をつぶした。それにしても長い長いフライトだった。
 我が校のALTをしていたニックと待ち合わせ、レンタカーで後をついていって彼のお母さんが予約しておいてくれたモーテルへ行って一休み。さすがゆったりとしたいい部屋だ。
 クライストチャーチのダウンタウンのパーキングでニックと別れる。僕らと同じ飛行機でニックの奥さんのご両親らがいらして、その世話で忙しいのだ。でも知らない土地でこうして迎えてくれる人がいるということは精神的にとても安心する。大聖堂→コロンボ通り→追憶の橋→アートセンターと一通り周る。コンパクトできれいな街だ。
 夕食は約束していたレストランで待ち合わせ、ニックにご馳走になった。ベニソン(鹿肉)を食べたが、やわらかくて結構おいしかった。ニックの家族や日本からきた一行を加えると20人位のにぎやかな夕食会となった。
 10時頃モーテルに戻る。やっと日が沈む。ヤッパリ夏だ。
12月28日(木)
 曇り時々雨
 5:30起床。5人全員で昨晩買っておいたサンドウィッチで朝食。寿司も買ったが、これはパサパサして余りおいしくなかった。6:30出発。何しろ今日はティアナウまで700km近くを一気に走るのだ。
 高速道路でもない道をどうして一日700kmも走れるのか不思議だったが、すぐ訳がわかった。街を離れると制限速度はすぐ100kmになり、高速並みのスピードが出せるのだ。そして絵葉書でよく見られる緑の木の生えていない山と羊の景色がどこまでも続くのだ。
 ニックの故郷のオマルを通り、ダニーデンで昼食。人口11万人はクライストチャーチについで南島では2番目だ。ゴアとかクリントンとか思わず笑ってしまうような小さな町を過ぎるとフィヨルドの山々が見えてきた。いよいよ来たんだという思いで感慨深い。
 5時過ぎティアナウに到着。ホテルにチェックインして早速街をぶらつく。小さな町だが、ちょっとした繁華街があり観光客でにぎわっていた。夕食は中華。これはおいしかった。スーパーでトレッキング用の最後の買い物をする。昼食用のパン、ジャム、トマト、レタス、リンゴ、オレンジなどを買う。
12月29日(金)
 曇り時々雨

 
ミルフォード・
 トラック

 トレック1日目
グレイド・ワーフ(15:30)→クリントン小屋(17:00)
6:45起床。ホテルでバイキングの朝食。初めて朝食らしい朝食を食べた気がする。
 朝から雨でなんとなくさえない。10時頃チェックアウトして30分ほど離れたマナポウリという小さなリゾート地へ行ってみる。マナポウリ湖は1960年代にダムの建設計画に対して反対運動が起こり、今の景観が守られた湖で、ニュージーランド国民の環境への意識の高さを示す象徴的な出来事として捉えられている。しかし、雨の中ではどうしようもなく、ティアナウに戻って早い昼食とする。
 1:30予定通りバスは出発。14:00発のボートで1時間半程かけてトレッキングの出発点であるグレイド・ワーフへ。船から下りるとき靴を脱いでズボンをまくりあげるように言われた。桟橋が低くなっていて水の中を歩かなければならないのだ。水は凍るように冷たい。先に進もうにも人でつかえて進めず死ぬ思いだった。岸に着いて雨の中で靴をはいたり雨具をつけたりしていると情けない気持ちになった。
 しかし記念すべきトレッキングは今まさに始まろうとしているのだ。「ミルフォード・トラック」の看板の前でまずは記念撮影をして3:30雨の中を歩き始める。15分ほどでガイドトレックの小屋に着く。しかし僕らの小屋は2km先だ。川沿いの道を進んで行く。流れる水の勢いとその音がすごい。昆布のような苔が木を覆っており、地面にも水分を一杯含んだ苔が密集している。
 5:00無事1日目の小屋「クリントン・ハット」に着く。雨具や靴は外において、中には持って入れないことになっていた。これはいいシステムだと思ったが、スペースがあってのことだ。さっそく夕食の準備。ご飯を炊くのは僕の役目だ。今日はカレーライス。トマト、レタス、缶詰もついて豪華な食事となった。食べ終わったのは7時。5人もいれば何かと時間もかかる。9時就寝。
12月30日(土)
雨後時々晴れ

 トレック2日目
クリントン小屋(7:55)→Hirere滝(9:50)→昼食(12:05〜25)→バス・ストップ(13:00)→クィンティン滝(13:55)→ミンタロ小屋(15:15)
6:15起床。昨晩の残りのご飯を食べる。Wさんがお焦げをみんなに分配する。味噌汁、のり、ふりかけ、漬物の朝食。
昨日はガスで見えなかったが、小屋の背後には雪をかぶった高い岩山がそびえていた。
 7:55雨具をつけて出発する。しかし間もなく小雨になり、やがて日が射してきた。相変わらず流れの速い川を右手に、左手には高い山を見ながら歩く。途中道が川のようになっている個所があったがそれ程深くなくてホッとした。僕の298(に・きゅっ・ぱ=2980円)の完全防水の靴はそろそろ防水があやしくなってきた。この靴は平ケ岳に登る時忘れたのに気が付いて小出で買ったもので、結構重宝していたのだがやっぱり安物はダメか。
 やがて道はひと目でU字谷の底だとわかる両側が山に囲まれた広々とした所に出た。今まで狭いところを歩いていたので気持ちの良い開放感があった。突然、足元にチョロチョロ動く茶色い物体が・・・・野生のキュウイだったが思ったよりすばしっこくはっきり姿を確認できなかった。
 両側の岩山からは無数の滝が流れ落ちており、水量の多い小川があちこちに見られ本当に美しい風景だった。前方にはマッキノン峠も見えてきた。明日はあそこを越えるのだ
 やがて道は登りになって、3:15ミンタロ小屋に着く。これといってすることが無いので、4時ごろ食事の準備にかかる。最初、ガス台を使うのは競争で、遅く着いたのではなかなか順番がまわってこず大変な思いをするのかなと思っていた。でもどの小屋にもガス台と流しが充分設置されており、いつ行っても自由に使用することができ、全く不便を感じなかった。今日は牛丼にする。8:00就寝。
12月31日(日)
 雨のち晴れ           トレック3日目
ミンタロ小屋(8:30)→マッキノン峠(10:35〜11:00)→マッキノン小屋(11:30〜12:00)→Dudleigh滝(14:10)→クィンティン小屋(14:40)→サザーランド滝(15:35〜45)→クィンティン小屋(16:30〜40)→ダンプリン小屋
(17:50))
6:15起床。二段ベットの下に寝ていた外人さんのイビキがすごく、何回も起こされ少し気分が良くない。小屋の人から「峠まで様子を見に行くので8:30まで出発しないよう」に言われる。そこでいつになく朝の時間が取れ、小屋の周りの様子やキュウイなどいろいろな鳥をゆっくりビデオに撮ることができた。
 8:30小雨の中を出発。このトレックのマッキノンパスを超えるのだと思うと何となく力が入る。高度が増すにしたがって雨は雪へと変わっていった。足元の雪もだんだん深くなっていく。ジグザグの急登にかかると小屋の主人と7歳ぐらいの彼の息子に会う。彼らが峠の状況を見に行って無線で知らせてくれていたのだ。ありがたいことだ。子供が「上では雪が降ってたよ」とかわいい声で挨拶してくれたのが嬉しかった。
 ようやく道が平坦になると吹雪の中にマッキノン記念碑が忽然と現れた。NHKの番組で田中好子が感動の涙を流した所だ。じっとしているとブルブル震えてくる。さすが気温が低い。鷹が一羽記念碑の上で寒そうに風に吹かれていた。
 太陽が出てくると一面の銀世界は目を開けているのもつらいほどだった。そしてウソのように雲が上がり、僕らが歩いてきたティアナウ方面の展望が開けてきた。白い雪をかぶった山に囲まれたU字谷が回廊のように続いている。このトレッキングで一番の感動的な光景だった。きっとはるばる日本からやってきたわれわれにご褒美をくれたのだろう。
 峠の最高地点から少し下りたところに避難小屋があり、そこで昼食とした。スーパーで買ったイチゴジャムがみずみずしくておいしかった。12:00出発。ガイドトレックの「クインティン小屋」がはるか下に見える。やがてものすごい水量の滝がすぐ左手にいくつも現れてきた。滝・滝・滝のオンパレードだ。
 小屋に荷物を置いて、このトレッキングの2番目のハイライトとも言えるサザーランド滝を見に行く。580mから2段になって落ちる滝はまるでスローモーションの映画を見ているようで迫力があった。近づくと、しぶきと風で嵐のようになり、あまり長居はできなかった。
 今日の宿泊地のダンプリン小屋に着いたのは5:50。日が長いからいいようなものの、一日中よく歩いた。7:30からミーティングが始まる。いろいろな国籍の人が来ていてびっくりした。大晦日のパーティをやるとはりきっているグループもある。後で食堂へ行ってみると紙テープで飾り付けがしてあり、紙の帽子をかぶり大はしゃぎだった。しかし、われわれ日本組は9時ごろ早めに寝る。
 夜中にカウントダウンの大合唱で目がさめた。そして"Happy New Year!"とご機嫌で部屋に戻って来た人に起こされてしまう。山小屋で迎えた始めての新年だ。そして記念すべき2001年の幕開けである。
 1月1日(月)
  晴れ

 トレック4日目

ダンプリン小屋(7:00)→ボート小屋(8:30)→Mackay滝(8:55〜9:05)→ジャイアント・ゲート(11:15〜25)→
サンドフライ・ポイント(13:20)
5:20起床。われわれが一番早く起きた。薄暗い中で朝食の準備をする。お正月らしく、雑煮に鰹節を一杯かけてなかなかおいしかった。
 7:00出発。今日は船の時間があるので少しペースを上げる。やがてエイーダ湖が右手に見えてくる。鏡のように穏やかな水面に山々が映し出されている。鴨の親子だけがその表面を波立たせている。岩山を爆破させて作った道もある。この道を作るのには囚人や日雇い人夫も使ったらしい。一世紀も前のことだ。
 終点のサンドフライ・ポイントはあっけなく着いたという感じだ。もう少し先だと思って心の準備ができていなかったので余計にそう感じたのかもしれない。サンドフライというブヨに似た虫がいることで有名なところだが、思ったほどではなかった。もっとも2箇所刺されてしまったが・・・
 小さなボートに乗りミルフォード・サウンドの桟橋まで行く。何とか実現したいと思っていたミルフォード・サウンドのクルーズはスケジュールの都合でだめだったが、このボートに乗ることで、ほんの入り口ではあったが雰囲気は充分味わうことができた。そこからバスで2時間程かけてティアナウに戻る。車中ではみんなぐっすり眠っている。冷房がかかっていたので寒くて仕方が無かった。時々太陽が出て日が射し込むとほんわりと暖かく、「太陽って何てありがたいんだろう」と変なところで感心していた。
 ティアナウにはほんの数日離れていただけなのに妙に懐かしかった。先日と同じ中華料理店で夕食。
 5:30クィーンズタウンに向けて出発。一度も休まないで走って、8:20到着。ベランダから湖が見える素敵なホテルだった。一風呂浴びて名物のゴンドラに乗ろうと出かけたが8:00で終了していた。残念。12時就寝。
 1月2日(火)
  晴れ

マウント・クック 
キャンプ場(11:40)→第1のつり橋(12:00)→第2のつり橋(12:30)→シェルター(12:50)→ターミナル湖
(13:15〜45)→シェルター(14:40)→第1のつり橋(14:55)→キャンプ場(15:15)
6:00起床。6:45ホテルを出発。一路リゾート地ワナカへ向かう。8時過ぎに着いて、ワナカ湖に面したパン屋で各自好きなものを選んで朝食。どんなものでも自分で選ぶのは楽しいものだ。
 9時ごろマウント・クックに向かう。11:40キャンプ場を出発。昨日までのトレッキングで足が痛かったが、不思議なものでしばらく歩くと痛みは消えてきた。それにしても5人いたから歩く気にもなったので、一人だったらひょっとしてやめていたかもしれない。昨日で目標を達成した気になっていたからだ。
 つり橋を2つ渡ると両側に花が咲き、前方にマウント・クックという木道が現れる。天気はいいし最高の気分だった。1時間半程歩くと、氷河が溶けて乳白色をしたターミナル湖に着く。所々に氷河が浮かんでいる。マウント・クックの上部は残念ながら雲に隠れていたが、しばらくするとどんどん流れて行き、遂にその全貌を目にすることができた。あちこちから思わず歓声があがる。帰りは振り返ってはその雄姿を目に焼き付けながら、ゆっくり歩く。プカキ湖から見たマウント・クック
 テカポに行く途中、ポカキ湖越しに見たマウントクックは最高だった。雲もすっかりあがり、空の青と湖の青に白いマウント・クックがはさまれていた。
 5:45テカポのホテルに着く。テカポ湖に面しており、部屋からすぐ外に出られるすばらしいロケーションだった。一休みして「善き羊飼いの教会」と「バウンダリー犬の像」を見る。夜は日本料理店でシェフのお任せコースを食べる。刺身やてんぷらなどかなりの品数が出て1500円位とは安い。M先生が山までずっと持ち歩いた貴重なワインで最後の夜を乾杯した。
 1月3日(水)
  晴れ
この旅行中初めてのんびりした朝だった。8:50ホテルを出て、昨日は時間の関係で入ることができなかった「善き羊飼いの教会」の内部を見た。普通ならステンドグラスがあるところの祭壇の後ろは大きな窓になっており、それが額縁の役割を果たし、その中の湖と白い山々が自然の絵画となっている。
 9:10クライストチャーチに向かって出発。途中羊や花を撮るために休んだだけだったので、クライストチャーチには11:30に着いてしまう。まず、おみやげ屋さんに走り、それぞれニュージーランドのおみやげを買い込む。昼食はステーキ。Wさんは650gの骨付きにしたが、僕らは自信が無かったのでビーフ・ハンバーガーにした。1時間以上も待たされたのでウェイトレスに文句を言うと、「私は時間がかかると最初に言ったはずですよ」と逆にやられてしまった。
 その後4:30まで解散。僕は本屋に寄って詩の本を1冊買った。空港に向かう途中スーパーで最後の買い物。スーパーには面白いものが一杯あって時間が足りないくらいだった。
 空港でニックとお別れ。今度いつ会えるだろうか。20:40予定通り離陸。長い旅の終わりであり、長いフライトの始まりである。
 1月4日(木)  ソウルの待ち時間は長かった。15%OFFだったので免税店でクィーンズタウンで無くした時計を買う。自分への唯一のおみやげだ。
 関空へは予定通り着いたが、オークランドで機内に預けたM先生の荷物が届かない。最後もハプニングで締めくくった感じだ。福井は雪だった。