海外トレッキング日記  ノルウェーの旅 2015年8月

8月3日(月) 
 娘に福井駅まで乗せてもらい、午後6時近くの「サンダーバード」と「はるか」で関空へ。エミレーツ航空のチェックインカウンターは長蛇の列。1時間近くかかって搭乗手続きを済ませ、福井県人としてはなつかしい「おろしそば」で軽い夕食とする。  
 エミレーツ航空は満席。「こんなに大勢の人とたくさんの荷物を載せて大丈夫だろうか」という思いがあったからか、離陸にかなり時間を要した気がした。日本映画のラインアップが豊富だったので「祈る人」と「風に立つライオン」を見て就寝した。
8月4日(火) 

晴れ


 ドバイ経由なので、オスロまでは7時間以上かかる。「バンクーバーの朝日」など映画を3本見て、昼の12時ごろ無

 
オスロの繁華街カール・ヨハン通り

事オスロに着く。荷物の受取所でトイレに行ったYさんがいなくなり大騒ぎ。いくら探してもいないはず、荷物も持たないですでに出国してしまっていたのだ。取りあえずはほっとする。
 電車でオスロ駅に行き、予約してあったベルゲンまでのフィヨルドツアーの切符を受け取ったり、ハーツでレンタカーの返却の仕方を聞いたりして、駅に隣接したホテルに2時半ごろチェックインする。すぐにスポーツ店に行き、トレッキングの地図などを探す。物価が高いのはわかっていたが、ざっと日本の3倍から5倍だった。
 カール・ヨハン通りは王宮へと続くオスロの目抜き通りだ。商店やレストランなどが並ぶ歩行者天国となっている。大道芸人も多く、楽しく歩くことができる。王宮は緩やかな坂道の終点に通りを見下ろすように建っている。王宮前には当時のスウェーデン王が馬に乗った立派な銅像が建っている。ぶらぶらと港の方にまわり、ノーベル平和センターに行く。帰ってから分かったのだが、ノーベル平和賞の授与式はここではなくオスロ市庁舎で行われている。駅に戻り構内のイタリアレストランで夕食。やっぱり高い。ラザニアが5000円もするのだ。

8月5日(水)

曇り時々雨

ソグネフィヨルド


 

 いつもは毎日トレッキングに明け暮れるのだが、今回はせっかくノルウェーに来たので、観光の日も多くとってある。今日はオスロから途中ソグネフィヨルドを通りベルゲンまで行く周遊の切符を予約してある。まずは有名なベルゲン急行に乗ってミュールダールに向かう。始めは森と湖水の北欧らしい景色が続き、ホーネフォスを過ぎると山や谷が迫る登り勾配になる。やがて森林限界を超え、岩と草原の荒涼とした景色に変わり、左奥にハダンゲル氷河が見えてくる。フロム鉄道の乗換駅であるミュールダールで、約5時間のベルゲン急行の旅は終わる。
 約20キロの距離を約1時間かけて下るフロム鉄道は、出発すると間もなくショース滝に停車する。まじかに見る圧倒的な水量の滝は大迫力。ただ、滝が作る風と雨は半端でなく、暴風雨の中にいるようだ。やがて滝の真横の小屋の横で女性の怪しい踊りが始まる。ベリーダンスのようであるが、激しいしぶきの中で踊る女性はけなげというほかはない。列車は幾つかのトンネルや息をのむ絶壁を通り、フェリーの出発地であるフロムに到着する。
 フロムで鉄道博物館などを見学し、いよいよソグネフィヨルドのクルーズ船に乗る。この船は観光船であるが、地元の人々の生活の足ともなっている。このフィヨルドはヨーロッパでもっとも長くて深く、船はその最深部をめぐる。時々雨にはあったが、氷河による浸食によって作られた独特の風景は、いつまでも我々の目を引き付けてやまなかった。 船の到着地グドヴァンゲンからはバスでヴォスに向かう。新道ができているが、つづら折の山道を器用に登りそして下って行く。峠から見下ろせばV字谷になっているのがはっきりわかる。水量の多い滝の横を過ぎれば旧道は終わり、新道を通ってヴォスに入る。駅前の緑の芝生の向こうには鏡のように静かなヴァングス湖があり、山々をきれいに映し出していた。
 ヴォスから再び列車に乗る。暗い空の下に雪原、湖、清流が現れるが、まるで冬景色だ。約1時間半で終点のベルゲンに着く。ホテルについて大変なことが分かった。オスロで送った我々のスーツケースが届いていないのだ。おまけにそのホテルのレセプションは3時で締まり、階下のバーでカギをもらわなければ入ることもできなかった。結局着替えもできずそのままベッドに入ることになってしまった。

 8月6日(木)

 晴れのち曇り
一時雨

 10時にレセプションが開くまで市内観光をすることにした。市場はまだやっていなかったので、7時30分の始発のケーブルカーでフロイエン山に登る。寒かったが、展望台からはベルゲンの市内が一望できて大感激。下が切れ落ちているので、まるで空を飛んでいるかのような迫力があった。頂上にはレストランやお土産店もあるが、早朝なので閉まっていた。
 山を降りて再び市場を訪れ、エビやサーモンがのったパンを食べて朝食。ホテルに戻ってレセプションの女の子に事情を話すと早速連絡してくれ、すぐに届けてもらうことになった。「すぐにといっても、30分後になるか1時間後になるかわかりませんよ。」と念を押されてしまったが。このあたりが日本と違うところだ。日本だったら「15分後」とか「30分までには」と具体的に言ってくれるだろう。
 ホテルの部屋でやきもきしながら待っていると、11時過ぎにようやく待ちに待ったスーツケースが届いた。すぐタクシーに乗りレンタカー会社に急ぐ。幸い、予定の12時にSさんの運転で出発することができた。E29を走り、オッペダルからフェリーに乗り、再びE29を走る。湖の多いノルウェーではフェリーで道がつながっているのだ。
 夕食はシェイで食べ、スーパーで明日の朝食のパンや飲み物などを買う。このあたりの道は坂が多く、道幅が狭い。そのせいもあり、トラックとすれ違った時「ゴツン」大きな音を立てて岩に当たってしまった。どんなに大きな傷がついたかと思ったが、見た目にはわからなくてほっとする。夕刻、湖畔にあるキャンプ場のコテージに到着する。雰囲気の良いロケーションに建つ素敵な宿だ。

8月7日(金) 

曇り時々雨

 あれだけ大きな音がしたのに傷がつかないのはおかしいとは思っていたが、今朝改めて見てみるとタイヤとホイールに傷がついていた。特にタイヤの横側は弱いのでパンクが心配だった。それでタイヤの交換も考えなければならなかった。
 今日のハイライトであるガイランゲルフィヨルドは屹立する山々が迫っている分迫力があった。そして、岩山からは幾筋もの滝が流れていた。船内では日本語を含め、6ヶ国語の案内が流れている。船内は御多聞にもれず中国人が多い。そして彼らの声はどうしてあんなに大きいのだろう。
 ロムのガソリンスタンドでタイヤを見てもらうと「プロテクトされているから大丈夫!」と言われたので、このまま走ることにした。スタンドに併設された店でハンバーガーを食べる。今日の宿泊地であるスピタースツーレンまでは未舗装の道路が延々と続いたが、日本のようにがたがた道ではなく、地質のせいかなめらかで快適だった。
 何棟もからなるスピタースツーレンの山小屋は2人部屋であった。食事もスープから始まってデザート付きの豪華なもので、民族衣装をまとった女の子がかいがいしく世話をしてくれる。ノルウェーでいちばん高いガルホピッケン山の基地だけあって満員の盛況だった。窓から見ていると7時だというのにどんどん下山してくる。山の上部に目をやると、雪渓を滑っている人の姿がはっきりと見える。

8月8日(土) 

晴れ 

ガルホビッケン山

(2469m)

  山小屋(8:20)スベルノウズ(11:45)ガルホピッゲン山(13:05〜50)
 スベルノウズ(14:45)山小屋(17:10
 ランチは朝食の時各自でサンドウィッチなどを作り、レセプションで部屋番号を告げるシステムになっていた。今日はノルウェー最高峰であるガルホピッゲン山に登る日だ。心配していた天気も良好で言うことなしだ。まず、小屋の前の橋を渡り、テント場を通り急坂を登って行く。このあたりは高山植物が豊富で、日本のエゾツガザクラやハクサンフウロに似た花が多く見られる。時々ヤギが草を食んでいる場面に不意に出くわし、驚かされる。背後には雪を抱いた山並が続いている。
 稜線に出ると最初の雪渓が現れる。靴に泥がついているからか、黒い道筋が上に伸びている。そこから頂上までほとんど雪の世界で、時々ゴロゴロした岩が現れる。だんだん足が重くなり、あとから登ってきた人に簡単に追い越されていく。雪の上を歩くか岩の上を歩くか選択を迫られる時があるが、上りは岩の方が少し楽だ。

 やがてガスの中から頂上の小屋が現れ、思っていたよりあっさりと頂上に着いてしまう。別のルートからどんどん人が登ってきて、小屋周辺は大変な混雑。彼らはザイルでつながって氷河の上を歩いてくるが、子供連れが多い。残念ながら、ガスのため視界はあまりよくない。小屋裏の最高地点で写真を撮って下山にかかる。

 下山は岩を避けて雪の上を歩く。飛び跳ねるように降りていく者、ボブスレーのようにU字になったコースを滑り降りる者など、みんな楽しそうに降りていく。若い女の子などは、もう一度登り返して滑降を楽しんでいた。自然を楽しむ彼らのエネルギーと貪欲さに脱帽せざるをえなかった。ガスも晴れ、雄大な景色を眺めながらの気持ちの良い下山となった。

8月9日(日)

曇り時々雨のち晴れ

ヨートゥンハイメン国立公園

 
  イェンデスハイム(10:30)(昼食 12:10〜30)→1743mピーク(13:30)
 二つの湖(14:05)→1300mピーク(15:40)メムルブー(17:50)
 直ぐ歩けるように登山の用意をして車に乗る雨の中、途中のロムでスターブ教会を外から見学したが、イェンデスハイムに着くころはすっかり雨も上がった。期待に胸ふくらませて10時半登山開始。稜線に出るまではキキョウやワタスゲなどの高山植物が多く見られた。眼下のイェンデ湖がだんだん遠ざかって行く。それにしてもなんという青さであろうか。途中に鎖場もあったりして、結構きつい登りであった。
 稜線に出れば、気持ちの良いベッセゲン尾根の縦走が始まる。風の当たらない岩場でのんびりと昼食。日差しが気持ちいい。やがて、このコースのハイライトとも言える、高低差がある二つの湖が見える所にやってきた。左のイェンデ湖はコバルトブルー、右のベス湖はダークグリーンだ。ベッセゲン尾根の岩場に立てば、吸い込まれそうな迫力である。 逆コースから大勢が急な岩場を登ってくる。急峻な岩場は降りる方がスリルがある。幅の狭い鞍部に降り立ち、再び登り返す。そこからはほとんど人に会わず、非常に長く感じた。二つの小さな湖を越していくと、ようやくメムルブー小屋に続く下りの道となった。眼下に小屋が見えてきても、容易には近づいてくれない。急坂で足がガクガクいい出したが、シャワー、トイレ付の部屋に入り、おいしい肉料理を食べれば疲れも吹き飛んだ。
8月10日(月)

曇りのち晴れ

 今日はオスロに戻る日で、メムルブー小屋からイェンデスハイムまで、10時発のボートで戻ることになっていた9時半に船着き場に行ったのに、ボートは大勢の乗客をおろし、すでに桟橋を離れていた。周りには誰もいず、次のボートは16時台だったので、大いにあせった。結果的には臨時のボートだったようで、定時のボートはちゃんと来てくれて一安心。
 小さなボートだったが、定員は100人。昨日歩いた縦走路を左に見ながら快調に走る。あれだけ苦労して歩いたのに、30分足らずで
イェンデスハイムに着いてしまう。内心心配していたタイヤも無事で、ほっとする。休む間もなく、オスロに向かって出発。緑の草原の中の気持ちのいいドライブだ。
 途中で昼食のために休んだが、4時半ごろオスロのホテルに到着する。ホテルに荷物を置いて、レンタカーを返しに行く。到着したに日に場所は確認してあったので迷うことは無かった。駅の事務所に行ってタイヤのことを言ったら、きちんとチェックしてくれた。元の状態に戻すのに、契約した保険の額以上になったら追加金を支払わなければならないようだが、どこかでほっとした気持ちがあった。
 夕食の場所を探してうろうろしたが、結局駅前のレストランでイタリア料理を食べた。

8月11日(火)
雨のち曇り
 予定では市内観光をするつもりであったが、その気力も失せ、ホテルで朝食を食べた後すぐ空港に向かった。免税店で買い物をする時間にあてればいいと思っていたのだ。しかし、チェックインは3時間前からだったので、待つ時間が増えただけであまり意味がなかった。
 8月12日(水)   関空に着いて、粘りつくような湿気の多い暑さに、ノルウェーがいかにさわやかで気持ちのいい気候だったかを思い知らされた。福井駅に家内と娘が迎えに来てくれていて、戻る場所があるありがたさを感じた。