昨年に引き続き、10月の第4土日は奈良県の山に登ることにした。昨年と同じ道を辿って行ったので、回りの景色がやけになつかしかった。
岩混じりの山道に根の張った歩きにくい急登が続き、奥駈道の出合いまでがつらかった。しかし、そこを過ぎると紅葉が真っ盛りのアップダウンの少ない天国のよう なプロムナードが聖宝ノ宿跡まで続いていた。
最後の急登を登りきると立派な弥山小屋が見えてきた。小屋の前では学生たちがテントを張っていたが、この寒さでは寝られないのではないかと、人ごとながら心配であった。特にその日は冷え込み、指の先がしびれてきた。寒さでそんな経験をしたのは初めてであった。
翌朝は荷物を小屋に置いて八経ケ岳に登る。立ち枯れの白い木がやたら目に付く。途中に鹿から木を守るためのフェンスが登山道を横切って張られており、金網のドアを開けて中に入らなければならなかった。
頂上には冷たい風が吹いていた。その風に流されて時々スーッと視界が開けるがすぐ白の世界に戻ってしまった。我々が泊まった弥山小屋も姿を見せたのは一瞬だった。
「一日で紅葉はこんなにきれいになるの」と生徒は感嘆していたが、帰りは周りの景色を味わうだけの余裕が生まれるのだろう。今年の紅葉はあまり美しくないと言われているが、この山には当てはまらないようだ。時々切り株の椅子が置いてあるので、そこに座っては心ゆくまで名残の秋を楽しんだ。
振り返ればこんもりとした弥山、そして木々の間からは稲村ケ岳が屏風のように鎮座していた。
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