海外トレッキング日記  ニュージーランド 南島 トレッキングの旅  2019年

2月20日(水) 
曇り時々晴れ

 昨年の大雪に懲りて、約2週間遅らせての出発だったが、今年は全くと言っていいほど雪は降らない。昨年まであった「関西空港割引切符」が無くなったので、少しでも安くあげようと大阪駅から快速に乗った。旅行客以外の乗客も乗っているので混み合うのが難点だが、時間的には速い。連絡不足で京都駅で別れたYさんを関空の改札口で待ち、無事合流する。

 2月21日(木) 晴れ

 飛行機の到着が30分ほど遅れたので、スーツケースをゴロゴロ引いての国内線ターミナルへの移動だった。出発の1時間以上余裕があれば、国際線ターミナルのカウンターで預かってもらえたのだ。しかし、クイーンズランド行きの飛行機のボーディングも少し遅れていたので何とか間に合った 以前、クイーンズランド近くの上空で乱気流に巻き込まれて、とても怖い思いをしたが、今回はそれほど揺れずにほっとする。しかし山間にある空港なので着陸まで少し緊張する。
 シャトルバスでホテルに行く。チェックインしてDOC(Department of Conversation)へ行き、ルートバーン・トラックの山小屋のチケットを受け取り、バスの出発場所も確認する。いったんホテルに戻り、夕食のため再び外出する。ワカティプ湖の湖畔を散策し、湖畔のレストランで無事到着の乾杯をする。
2月22日(金)
 晴れ

ルートバーン・トラック
1日目
 
 ルートバーン・シェルター(14:05)2番目の橋(14:50)3番目の橋(15:50)フラッツ小屋への分岐(16:20)→ルートバーン・フラッツ小屋(17:30)

朝7時から開いているスーパーマーケットに行き、今日から始まるルートバーン・トラック縦走に必要な食料品を仕入れる。時間に余裕があったので、ゴンドラに乗って展望台に上がることにした。以前にゴンドラや展望台から見るワカティプ湖に大感激したので、是非みんなに見てもらいたかったのだ。目の前に広がるワカティプ湖や対岸の山脈など、予想に違わず素晴らしい光景だった。この立体感は上空から眺めないと実感することはできない。
 大勢の人が歩いて行くので、僕たちも「ベン・ローモンド・トラック」の一部を歩いてみることにした。森を抜けると、ピラミダルなベン・ローモンド山が見えてきた。しかし、まだかなりの距離である。足元には夏の名残の可愛い花が少し残っていた。
 街に戻り、予約してあったバスで登山口にあたるルートバーン・シェルターへ。いよいよ2泊3日の縦走の始まりだ。駐車場からすぐ吊り橋を渡る。下を流れるのがルートバーンだ。バーンとは小川を意味するそうだが、この川がトラックの名前の由来だ。雨が多い地域だからか、地面や倒木の上はびっしりと苔でおおわれている。左手に沢の音を聞きながら、割と平坦な道を進んで行く。道の両側は大きなシダに変わっている。ルートバーン・フラッツ小屋への分岐を過ぎると道は険しくなってくる。木々の間から、ルートバーン・フラッツの広大な平地が見えてくる。
 さらに進むと、今日の宿泊地であるルートバーン・フラッツ小屋が目の前に現れてくる。受付用紙の空いているベッドの番号に名前を書けば寝る場所が決まる。定員以上入れないのが日本の山小屋とは異なる点だ。初めての自炊は、カップラーメン、パン、ソーセージ、トマト等だ。

2月23日(土〉)
  曇りのち晴れ

 ルートバーン・トラック
2日目
 

ルートバーン・フラッツ小屋(8:00)ハリス・サドル(9:50)コニカル・ヒル(10:45)ハリス・サドル(11:30〜12:00)→マッケンジー小屋(15:20)

  夜中に、メガネが無いことにふと気付いた。どこで外したのかどうしても思い出せない。きっとシャツを着替えた時だと思うのだが、無意識にどこかに片づけたはずだ。出発の時間になったので、今日はメガネなしで過ごさなければならない。暗い中、昼食のサンドイッチを作る。
 歩き出すとすぐにルートバーン滝が右手に現れる。高さはそれほどないが、水量の多い豪華な滝だ。このあたりから森林限界を超え、岩混じりの草地になる。思いがけず様々な種類の小さな白い花が残っており、我々の目を楽しませてくれる。急登を行くと、ルートバーンの水源であるハリス湖が見えてくる。標高1200mの所にある湖は、早朝とあってか穏やかな水面を見せている。池塘のある峠に達すると、避難小屋が建つハリス・サドルだ。ルート上の最高地点だ。背後の岩山がコニカル・ヒルだ。オプションになっているので「登らなくていい」と言う人が大勢を占めたが、Sさんの一言で登ることになった。
 荷物を小屋にデポして登り始める。かなりの急登で、ハリス・サドルがすぐに下になってくる。左手にはハリス湖が小さく見えてくる。頂上近くにやってくると、何と雪が舞っていて、太陽の光を浴びてキラキラ輝いていた。標高1515mの頂上部はちょっとした広場になっている。雲がかかっている山もあったが、360度の大展望を楽しむことができた。登り一辺倒のつらい山道ではあったが、天候に恵まれたので登ってよかったと思った。
 ハリス・サドルに戻って昼食を食べた後、ホリフォードの谷に面したメインのトラックを歩き始める。道は斜面をトラバースするようにつけられているので、高低差はほとんどない。眼下の深い谷と氷河を抱いた山々を眺めながらのトレッキングは気分も最高だった。途中には幾つかの小さい滝があり、清らかな音をたてていた。大きな岩を削って造られたトラックを歩いて行くと、眼下に湖とそのほとりに立つ小屋が小さく見えてきた。マッケンジー湖と我々の宿泊する小屋だが、まだかなりの距離がある。絶壁のような斜面に道がジグザグにつけられている。
 樹林帯を抜けるとマッケンジー小屋だ。湖に面した素晴らしいロケーションに建っている。早速水辺を散歩していると、4人の女性が水浴びをしていた。何とも勇敢な女性たちのパワーには脱帽である。
 所でメガネの件であるが、洗面用具入れの中に紛れ込んでいた。ほっとしたが、これから気を張らなければならないと反省しきりであった。

2月24日(日) 
  晴れ 

ルートバーン・トラック3日目

 

マッケンジー小屋(7:50)アーランド滝(9:55)→ホーデン小屋(11:00〜10)キー・サミットへの分岐点(11:25)キー・サミット「ドラマチック・ランドスケープ」(12:05)キー・サミットへの分岐点(12:35)→ディバイド(13:20)

 今日も快晴。雨の多い地区で3日間雨に会わなかったのは、幸運としか言いようがない。この区間は比較的高低差が少ないので、みんなの足も速い。すぐ、オーチャード(果樹園)と呼ばれる広場を横切る。前に来た時は逆コースを歩いたのだが、ここで休憩したことを思い出す。コースにいくつもの木箱が設置され気になっていたのだが、その中にわなが仕掛けられていて、害となる小動物を捕獲しているということだ。
 やがて、前方の岩壁に一筋の滝が見えてくる。落差80mのアーランド滝だ。トレッキングコースの真横に滝壺があるので、見上げればしぶきと共に、大迫力でわれわれを襲ってくる。豪雨の後は水かさが増すので、う回路を歩かなければならないようだ。小さな湖に面したホーデン小屋で一服した後、少し先にある分岐点からメインのトラックを外れてキー・サミットに向かう。日帰りのハイカーも訪れる人気のある展望地だ。幅の広い歩きやすい道で、20分ほどで展望台に着く。(その時は頂上がどこかで議論になったのだが、帰国して写真を見ると方位板や案内板がある所が頂上で、その先は遊歩道になっているようだ。)そこからは大展望が広がり、中でも眼前にそびえるクリスチーナ山の美しさに目を引かれる。山頂付近は池塘が点在する高層湿原になっている。少し歩いて、「ドラマチック・ランドスケープ」と書かれた展望台で引き返すことにした。
 メインのコースに戻ると、どんどん高度を下げ、車の音が聞こえ出し、道路が見えてくると終点のディバイドである。ベンチに座って途中で食べ損ねた昼食を食べていると、ドイツからやってきた夫婦に声をかけられた。毎年2,3週間かけて日本の山に登っているそうだ。四国や九州のマイナーな山の名前も飛び出し、話も弾む。奥さんが日本茶を入れてあげると言って用意をしていると、予定より早いバスに乗れることになり、残念ながらお茶を相伴することはできなかった。クイーンズランドに早く着けると喜んでいたが、ティアナウで2時間待たされて、結局クイーンズランドに着いたのは予定の時刻だった。

2月25日(月)
 晴れ 

ロイズ・ピーク

 

駐車場(11:30)ベンチのある展望台・昼食(12:15〜40)頂上直下の展望地(14:30)→ロイズ・ピーク(15:10〜20)頂上直下の展望地(15:45)ベンチのある展望台(17:00)駐車場(17:40)


 雲一つない快晴である。9時に近くのハーツでレンタカーを借り、一路ワナカを目指す。途中の丘からは、道路が走る平野部とそれを囲む山々を俯瞰することができる。水がまかれていると思われる部分だけが濃い緑をしており、パッチワークのような模様が見られる。所々に羊が放牧されており、まさにニュージーランドらしい風景だ。 平日だというのに、ロイズ・ピークの駐車場には車があふれんばかりで、この山の人気を物語っている。私有地であり、山全体が牧場なので、お金を払い梯子で柵を越える。軽自動車が通れるほどの立派な道であるが、ジグザグにつけられた道は、勾配がゆるい分歩く距離が長くなる。

 ベンチのある展望台で昼食を食べる。柵に囲まれているので、閉じ込められたような感覚に襲われる。眼下にはワナカ湖が広がっている。これから登って行くにつれて、細長く伸びた湖のずっと先までがだんだん視界に入ってくる。しかし、登り一辺倒の道は、昨日までルートバーン・トラックを歩いていて疲れが残っている身にはこたえる。しかも頂上はかなり先だ。
 頂上直下の展望地では、これまで隠れていた左奥の山々も見えてくる。遥かかなたに万年雪を抱いた山脈が白く光っている。あまりにも苦しいので、ここで登るのを止めてもいいかなと一瞬思ったが、先行する仲間に励まされて、力を振り絞って歩き始める。
 頂上からの景色は、苦労に充分見合うものだった。ワナカ湖とそれを囲む山々の全体が見渡せ、まるで鳥になったようである。

2月26日(火)
 晴れ 

フッカー・バレー

 

駐車場(10:45)2番目の吊橋(11:30)フッカー湖(12:10〜45)2番目の吊橋(13:25)駐車場(14:00)

 今日も快晴。鱒の養殖場で一休みした以外は、快調にマウント・クック国立公園を目指す。行き止まりとなる枝線(国道80号線)にはいると、早くもプカキ湖越しにニュージーランドの最高峰であるアオラキ / マウント・クックが見えてきた。アオラキとはマオリ語で「雲を突き抜ける山」を意味するそうだ。降水日数が多い不安定な気象のため、なかなかマウント・クックの雄姿は見られないようだが、頂上まではっきり見ることができた我々はなんと幸運に恵まれていることだろう。
 フッカー・バレー・トラックは人気のあるコースなので、駐車場ではひっきりなしに車が出入りしている。歩き出すとすぐ、左手に氷河におおわれた白い山並が見えてくる。近くに数羽の兎がいて、まるで我々を歓迎しているかのようにポーズをとっている。すぐに第1の吊橋が見えてくる。バックの白い山とのコントラストが良く、多くの人がシャッターをきっている。橋から下を覗くと、川は緑がかった乳白色をしている。氷河湖から流れ出る独特の色だ。
 第2の吊橋渡るとマウント・クックの雄姿が目に飛び込んでくる。眼前に山を見ながら、木道の歩きやすい道を歩くのは何と贅沢なことだろう。ただ、あまりにも人が多すぎて、今まで交わしてきた登山者どうしの挨拶ができなくて、少し残念ではあった。整備された平坦な道を行けば思ったより早くフッカー湖に着いてしまった。湖の対岸にはマウント・クックが大きくそびえ、湖には氷河のかけらが浮かんでいる。申し分のない景色を目の前にして食べるランチの味も格別であった。

 一旦車に戻り、8キロ先のタズマン湖を目指す。駐車場から氷河展望地までは遠くはないが、長い階段が続くので息もあがる。モレーンに囲まれたタズマン湖には、フッカー湖よりもはるかに多くの氷が浮かんでいた。あまりにも氷が多く、観光船も運行が中止になっているそうだ。左手奥に目をやると白いマウント・クックの2つのピークが顔をのぞかせていた。
 マウント・クック・ビッレッジにあるホテルは、1年前に予約でいっぱいになると言われているが、運よくマウント・クック・ロッジに予約することができた。2段ベッドの大部屋を覚悟していたが、個室で雰囲気のいいロッジだった。食堂は大きなガラス張りで、外の山々を眺めながら食事ができる贅沢な造りになっていた。

2月27日(水)
 雨のち晴れ

 コウワンズ・ヒル・
トラック

 夜中に2回の地震があった。5時過ぎから寝られなくなったので、洗面所に椅子を持ち込み本を読んでいた。ニュージーランドに来て初めての雨。本当はセアリー・ターンズ・トラックを歩くことになっていたのだが中止となった。距離が長く急坂が多い上級向けコースと言われていたので、内心ほっとする気持ちもあった(ごめんなさい)。
 雨の中出発したが、ビッレッジを離れると雨は止み、きれいな虹が姿を現した。しかし、振り返るとマウント・クックは黒い雲の中であった。天気はみるみる回復していたが、風が強く、途中で寄ったプカキ湖沿いのインフォメーションでは、羊の銅像が風に震えているように見えた。
 テカポに着くと、本日泊まることになっていたホテルに車を置いて、コウワンズ・ヒル・トラックを歩き始める。住宅地を抜けると牧場跡のような丘に出る。松の幼木がきれいに植樹されている。ここは森の再生を試みているのかもしれない。大きな松ぼっくりが地面一杯に落ちている林を抜け、牧場の柵を越えて道は続いている。小さな池が散らばる気持ちの良い牧草地をゆっくり登って行くと展望地に着く。テカポ湖とその奥に小高いマウント・ジョン・サミットが見える。
 テカポ湖畔に出ると、「バウンダリー犬の像」があり、観光客が周りを囲んでいる。これは、開拓時代の牧草地で、柵のない境界線(バウンダリー)を守った牧羊犬を称えて造られたものだ。その隣に「善き羊飼いの教会」がある。1935年に、ヨーロッパからの開拓民によって、テカポ湖畔の石で建てられたものである。湖と白く輝く山々を借景とした祭壇のガラス窓で有名である。以前に訪れた時は写真も自由に撮れたのに、今は撮影禁止である。テカポの有名な観光地となっているので多くの人でごった返している。
 チェックインまで時間があったので、ギフトショップで土産を買う。ここ以外空港までお土産を買う所が無かったので、後で考えると大正解であった。その後、明日の天気がどうなるかわからないので、明日登る予定のマウント・ジョン・サミットに車で登ることにした。頂上からの景色を撮っておけば、明日登れなくても安心である。入山料を払ってジグザグの道を登って行くとあっという間に頂上である。頂上には喫茶店まであったのでコーヒーを飲もうと思ったが、満席なのであきらめることにした。テカポの写真は何とか撮れたが、あまりにも風が強く寒いので、そうそうに下山した。
 ニュージーランドではシカの牧場があるくらいなので、シカ肉(ヴェニソン)はよく食べられている。牛肉より高いが、夕食に我々も挑戦した。結果、柔らかく臭みも無くとてもおいしいものであった。
 テカポはニュージーランドの中でも晴天率が高く空気も澄んでいて、さらに近くに大きな町も無く夜が暗いため、星空観察にはうってつけの場所である。それでスターウオッチング・ツアーが盛んである。我々も夜中に起きて夜空を仰いだ。ホテルの近くではあったが、こぼれるほどたくさんの星に大満足であった。

2月28日(木)
 晴れ 

マウント・ジョン・サミット

 
 駐車場(8:15)サウス・ピーク(9:00〜10)テカポ湖展望地(9:50〜55)→→駐車場(10:55)

 今回モーテル泊まりが多かったので、初めてホテルで朝食を食べる。昨日車で登っていたが、予定通りマウント・ジョン・サミットに登ることにした。いきなり薄暗い林の中に足を踏み入れる。雲一つない青空からの急激な変化で、余計暗く感じる。
 結構な坂を登りきると金色の世界。岩稜の頂上部が海に浮かぶ島のように見える。あっけないほど早くサウス・ピークに到達する。頂上にはケルンが3つ建っていて、360度の大展望が広がっていた。昨日と違い、風のない湖はコバルトブルーに輝き、山頂の世界最南端の天文台は白く輝いていた。
 帰路は湖岸ルートを歩くことにした。湖に向かって続いている牧場の中の道は、気持ちよく歩くことができる。湖の突き当たりにある展望地には、馬の手綱をつなぎ止めておく所があり、馬に乗ってここまでやってくる人が多いことが想像できる。これほど美しい湖を常に左手に見ながら歩く道はとても快適で、ニュージーランド最後のトレッキングにふさわしいものであった。
 途中で昼食を食べたり、ガソリンを入れたりして、クライストチャーチのモーテルに着いたのは夕刻だった。さっそく観光と夕食のためにダウンタウンに出る。ダウンタウンは僕が覚えていた過去の記憶とは様変わりしていた。路面電車はアーケードをくぐり、中心にそびえていた大聖堂は、2011年の大地震の傷跡を残したままであった。
 余談ではあるが、帰国して数日後、クライストチャーチで50人が死亡するというテロが発生した。僕の行くところいつも事件が起きるようだ。

3月1日(金) 
晴れ
 

 最終日、残っていたカップヌードルで朝食。空港でレンタカーを返して一安心。時差の関係もあって、同日に日本に着いてしまう。予定していた電車にも無事乗れて、今朝はまだニュージーランドにいたのがウソのようであった。