白井差(しろいさす)口を目指して暗い山道を走っていたら、通行止めの看板があった。もう少し行ってみようと車を進めると「両神山には登れません」と書いてある。仕方なくも一つの登り口である日向大谷(ひなたおおや)に向かい、駐車場泊となった。
翌朝 民宿の横の登り口から登ろうとすると、「駐車代を払ったか」と聞かれた。そういえば何か書いてあったが、どこで払えばいいか分からなかったし、財布は車の中だ。帰りに払うことにしたが、朝から何となく気分が悪かった。
道はすぐに杉林の中に入る。うっそうとしており、ほとんど夜に近いほどの暗さだった。やがて薄(すすき)川に出る。大きな岩がゴロゴロとしたかなり深い谷だ。道はこの川を渡ったり、中州を歩いたり、急な斜面をジグザグに登ったりする。
かなり疲れた頃弘法の井戸に着く。弘法大師の石像があり、その下から冷たい水が流れ出ている。最近作ったと思われる切り株で作った椅子が置いてあり、絶好の休憩場所だ。
そこを過ぎると清滝小屋はすぐだ。こんな所にこんなに立派な小屋が・・・・と思えるような小屋が突然木立の間に出現する。今はやりのログハウス風で、スケールも大きい。
小屋の後ろから急斜面を登って行くと産体尾根に出る。そこで休んでいる人と話をしていると「僕はもう5回ほど登っていますが、ここからが一番楽ですよ」と言う。こちらに回っ て正解だったのかもしれない。そこから神社までに4ヶ所の鎖場があったがたいしたものではない。
両神神社は山上の神社にしては大きく犬が入り口に立っている。この地方ではそれほど珍しいことではないらしい。少し先に進むと立派な東屋があり、そこは両神山の頂上部を眺めるのに絶好のロケーションだった。双耳峰が「早くおいで」と手招きしている。
そこから頂上までは良い旧道の右側に新しい道が作られていた。何でわざわざ変な所を通させるのか不思議だったが、後で聞いた話では「地権者の争いが合って、旧道は通れなくなった」とのことであった。神聖な山に何と生臭い話であろうか。頂上までは鎖場は1ヶ所も無く、覚悟をしていただけになんとなく気が抜けた感じだった。
岩のゴツゴツした頂上からは奥秩父の山々や八ヶ岳、そして昨日登った甲武信ヶ岳も見ることができた。昨日とは逆に、今日は登るにつれて天気が良くなり、本年度最後の百名山に花を添えてもらった感じがした。 |