海外トレッキング日記  コジオスコ山とタスマニア 2018年2月

2月5日(月)

時々雪
 あわただしい出発だった。除雪をしているとYさんから電話があり、雪のため北陸線の特急は動いていないという。そこで、たまたま休みだったYさんの息子さんが米原まで送ってくれるという。速度規制はあるものの、北陸自動車道は走れるらしい。今庄当たりでは少し積雪があり心配したが、山間部を抜けるとほとんど雪は無くその差が大きい。ともかく無事米原駅に着き、息子さんには感謝でいっぱいだった。米原から京都経由で関西空港までは時刻表通りだ。
2月6日(火) 

曇り時々晴れ

 

 あまり眠れなかったが、無事シドニーに着いた。しかし、ここでひと波乱あった。キャンベラに行くには国内線に乗り換えなければならなかったが、国内線の空港はシャトルバスに乗っていかなければならない。スーツケースを乗り継ぎカウンターに預けてシャトルバスを待っている時に時計を見ると、飛行機の出発まであまり時間が無い。ターミナル2で下されターミナル3まで走ってゲートに着くと、ボーディングはまだなので椅子に座っているように言われた。何と出発時間だとばかり思っていた時間は、ボーディング時間だったのだ。
 キャンベラでトヨタのSUV車を借りていざ出発。空港を出てしばらくすると、どこまでも変わらない牧場の景色。時々大きな石がごろごろしている。カンガルーの標識がオーストラリアらしく、車を止めて写真を撮る。
 3時間あまりかけてコジオスコ山の登山基地であるスレドボに着く。スレドボはスキーのメッカなので冬はにぎわっているが、晩夏の今は閑散としている。ほとんどの店やレストランは長期休業だ。ようやくインフォメーションの近くに営業しているレストランを見つけた。食事をしてホテルに戻り、家に電話すると福井は「56豪雪」以来の大雪だそうだ。シドニー空港でメガネを忘れたこともわかって、なかなか寝付けない夜となった。

2月7日(水)

晴れ

コジオスコ山 


 リフト終点(9:15)コジオスコ山展望台(9:55〜10:00)クータパタンバ湖展望台(10:30)ローソン峠(10:45〜50)→コジオスコ山(11:20〜45)ローソン峠(12:05〜10)クータパタンバ湖展望台(12:25)コジオスコ山展望台(12:55)→リフト終点(13:20)
 7時に村のパン屋さんに行って、昼食用のパンを買う。7時半からホテルで朝食。前日に朝食のメニューから好きなものを選択しておくことができるので、食卓には、それぞれ選んだものが並んでいる。
 何時にリフトが動くのかはっきりしなかったので、早めにリフト乗り場に行く。昨日下見をした時、ワイヤーに椅子が取り付けられていなかったので、リフトが本当に動いているのか心配だった。しかし椅子の部分は倉庫から順次出てくる仕掛けになっていて、そのシステムに安心し、感心もした。
 「コジオスコ・エクスプレス」と言うリフトに乗れば、終点の標高が1,930 メートルで、頂上との標高差は300メートルしかない。最初は広い石畳の道だが、すぐに鉄製の遊歩道に変わり、それはローソン峠まで続いた。岩が散らばる草原には、まだたくさんの高山植物が残っていた。日本では見かけない種類の花が多い。途中で遊歩道の修理が行われていた。スレドボに入る前に国立公園入場料を徴収されたが、こんなところに使われるのなら文句も言えないと思った。
 最初の展望台から、左手前方にコジオスコ山のなだらかな姿が見えてくる。滑り台のようなスロープの先に、氷河に削り取られたという小さな湖がある。ローソン峠まで行けば頂上は目の前だ。峠には「オーストラリア最高所」のトイレがある。頂上に近づくにつれて岩が多くなり、岩山の上に頂上を示す標柱が立っている。360度さえぎるものは何もないコジオスコ山は7大陸最高峰の一つで、オーストラリア大陸でここより高い場所は無いのだ。ほとんど人の手が加えられていず、うねるように続く山並みは、オーストラリア大陸の広さを実感できる所でもある。風が強く冷たかったので、岩陰に隠れて昼食にした。
 帰路には、高校生の団体や多くの人に会い挨拶を交わした。リフト乗り場に戻ると、マウンテンバイクを抱えた若者いる。リフトの後ろに自転車を固定する金具がついており、自転車と一緒に登ってくることができるのだ。リフトに乗っていると、最下部まで走り降りる彼らの勇ましい姿を見ることができる。 泊まったホテルは、今回一番高かっただけあって豪華だった。1階から6階まで吹き抜けになっており、その周りに部屋が配置されている。部屋の前から下を覗くと、レセプションやバーなどが一望できる。

 2月8日(木)

 曇り時々晴れ 


ホバート
 7時ごろスーツケースを引きずってキャンベラ空港へ。手続きを終えて出発ゲートの近くで朝食を食べる。メルボルンで乗り換え、タスマニア島の州都ホバートには2時ごろ到着。レンタカーを借りて、さっそく街に向かう。
 サラマンカプレイスは、捕鯨全盛時代に港沿いに建てられた倉庫群である。今は、ギャラリーやブティック、美術工芸品店、土産物店などとして使われている。色とりどりのパラソルの下でゆっくりとランチを楽しんでいる人がいて、その近くには芸術的な雰囲気を醸し出しているいろいろなオブジェがある。創造性豊かな文化を感じられる街だ。

 明日の行程を考えて、今日の宿はニューノーフォークという小さな町のモーテルだ。こちらのモーテルは家族用で、キングベッドと2台のシングルベットの組み合わせが多い。そして、自炊のためのあらゆる器具がそろっている。

2月9日(金) 

晴れ 

マウントフィールド国立公園(ターンシェル散策とラッセル滝)

 ドブソン湖駐車場(9:30)スキーロッジ(10:05)ロッドウェイ小屋(10:50)引き返し地点(11:30〜55)ロッドウェイ小屋(12:25)スキーロッジ(13:05)ドブソン湖駐車場(13:30)
 一路、タスマニアでもっとも古いマウントフィールド国立公園へ。ビジターセンターを超えると道はダートになり、交互通行ができないくらい細くなってくる。下ってくる車が一台も無かったのは幸いだった。
 今日はターンシェルフをハイキングすることになっている。ターンとは氷河によって作られた小さな湖の事だ。シェルフは棚を意味するので、ターンシェルフとは、棚のようなところに造られた小さな湖と言うことになるが。最奥のドブソン湖の駐車場に車を止め、入山届を出して湖畔から歩き始める。ドブソン湖はさざ波一つ立っていず、まさに鏡のように周りの森を映している。登山道の周りには、木生シダ類に属するパンダニが多く見られる。

 途中で自動車道と合流し、そのまま登って行くとスキーのロッジが現れる。こんな所にスキー場があるなんて驚きだ。シーズンには多くの人がやってくるのだろうかと心配になるのは、余計なお世話かもしれない。そこから本格的な登山道に変わるが、一汗かいたころ広々とした台地に出る。池塘が散らばる湿原に、白い木道がどこまでも続いている。眼下には三日月の形をしたシール湖が望め、木道に沿って高山植物も見られ、まさに天空の散歩道である。

 木道が終わる所に「ターンシェルフ」の標識があり、右手奥にターン(小さな湖)が棚田のように並んでいるのが良く見える。いったん下るとロッドウェイ小屋という避難小屋とロープリフトの機械用と思われる小さな小屋がある。そこを過ぎるとターンシェルフの核心部である。小さな湖の横につけられた道を、登ったり下りたりする。光の関係か、それぞれの湖が違った色に見える。予定ではニューデゲート湖まで行くつもりだったが、3つ目の湖を過ぎた所で昼食にして、そこから引き返すことにした。

 帰りに、ビジターセンターから20分位の所にあるラッセル滝を訪れた。マウントフィールド国立公園では一番人気のある所だ。苔むした冷温帯雨林のパンダニに囲まれた歩道を行くと、階段状になったラッセル滝が現れる。水量はそれほど多くないが、水煙をあげて階段を滑り降りる滝には、何か幻想的なものを感じる。

 3時間ほど走って今日の宿泊地であるビチェノに着く。ビチェノは東海岸にあるポピュラーなリゾート地である。海岸沿いのレストランでは、ムール貝やエビのフライ、白身の魚などのシーフードが美味しく、満足のいく夕食だった。

2月10日(土) 

晴れ 

ブローホール、ワイングラスベイ展望台
 ワイングラスベイ駐車場(8:20)ワイングラスベイ展望台(8:55〜9:05)ワイングラスベイ駐車場(9:30)
 朝一番で、レセプションの女性に勧められていたブローホールを訪れる。波が打ち寄せると、ある所から間欠泉のように水柱があがる。想像以上の迫力であった。
 フレシネ国立公園でもっとも有名なウォーキングトラックは、ワイングラスベイ展望台までのコースだ。道はよく整備されており、多くの人が登っている。しばらく行くと、右手にきれいな湾が見えてくる。しかし、ワイングラスベイは反対側だ。マヌカの白い花越しに、赤茶けた岩混じりのマイソン山が見えている。

シマウマのようなきれいな筋の付いた一枚岩の横を通ってしばらく行くと、様々な形をした岩が現れる。赤く不思議な形をした岩は、オーストラリアの内陸部の光景を思い出させる。階段を登って行くと、待ちかねたワイングラスベイ展望台である。ワイングラスをかたどったように大きく湾曲した入江。それを取り囲む白い砂浜がアクセントをつけている。いつまでも見ていたい景色だ。

 昼食はロスという小さな村のパン屋さんで食べる。薪で焼き上げるのが特徴らしい。オーストラリアの定番であるミートパイがとても美味しかった。人気店らしく、店内は人でごった返していた。そこ日本人女の子の4人組に会った。タスマニアで日本人にあったのは初めてである。今はファームステイをしている。ワーキングホリデーのビザを延長するためには、一定期間牧場で働かなければならないそうだ。

 クレイドルマウンテンに行く途中でトロワナワイルドパークに寄る。ここでは怪我をした動物を治療して、自然に帰らせる活動をしているようだ。多数のタスマニアンデビルが飼われており、えさの取り合いをする時の鳴き声がすさまじかった。カンガルーは広い広場で飼われており、餌を与えるからか人間によく慣れていた。3時からのガイドツアーでウォンバットの生態の説明を聞いた後、トロワナワイルドパークを後にした。

 今日のロッジでは土曜日と日曜日には食事が提供されないので、スーパーで食材を仕入れて自炊をした。ちなみに今日のメニューは牛肉とソーセージを焼き、野菜サラダを添えた。

2月11日(日)

曇り後晴れ

ハンソンピーク方面周遊

 ダブ湖駐車場(8:05)グレーシャーロック(8:15)ハンソンピーク(9:00〜05)クレイドルの底(10:20〜25)リラ湖(11:00)ダブ湖駐車場(12:35)
 朝、野菜とトマト、ハムをはさんで昼食用のサンドウィッチを作る。朝から空は黒い雲におおわれているので、明日のスケジュールと入れ替えることにした。ダブ湖の駐車場に着いた時あまりにも寒く風も強かったので、ダブ湖一周という案もあったが、意を決してグレーシャーロックに向かうことにした。ダブ湖の左岸を歩き始めると、間もなくグレーシャーロックが現れる。この大きな岩が、氷河によって運ばれてきたのだろうか。岩に登って湖を眺めても、寒々とした風が吹いているだけだった。
 ダブ湖がだんだん下になり湖の全景が見えてくると、ハンソンピークが目の前に現れてきた。穏やかな山容に見えた山が、頂上に近づくとチェーンが現れ急峻になってきた。下を見ると、ダブ湖に吸い込まれてしまいそうだ。急登を過ぎると勾配は緩やかになり、標識のない頂上に立つことができた。

 頂上を過ぎると平らな湿原に出るが、湿原の木道を渡り終えるといったん下り、スミシーズピークの中腹まで登り返さなければならない。途中、岩に手をかけて登らなければならないほど厳しい所があった。クレイドル山とウイルクス湖へ下る登山道の分岐点あたりで、地元の二人組の男性に会う。彼らは「景色の良い秘密の場所」を教えるのでついて来いと言う。彼らに従っていくと、道のない急登をどんどん登って行く。露に濡れ、草に滑りながらついて行くと、そこはダブ湖側と反対側の景色を同時に見ることができる場所だった。そして、クレイドル(ゆりかご)命名された理由も教えてくれた。私たちはクレイドルの底の部分に立っていたのだ。

 天気は急激に回復し、クレイドル山の特徴ある岩峰が見えてきた。ダブ湖越しに見るクレイドル山は格別で、タスマニア島を代表する山に恥じない光景だ。
2月12日(月)

晴れのち曇り一時雨 

クレイドル山
 ダブ湖駐車場(6:50)ウォンバットプール(7:15)マリオン展望台(8:10)→キッチンハット(8:50)引き返し地点(9:15)クレーターピーク(10:20)ロニークリーク駐車場への分岐(11:10)クレーター湖(11:35)→ダブ湖周遊ルート(11:55)→ダブ湖駐車場(12:45)
 昨日のコースと変更したので、今日はクレイドル山を登頂することになっている。しかし、朝からどんよりとした天気で霧雨も降っている。ダブ湖の駐車場に着くと、昨日と同じ冷たい風が吹き荒れていたが、空は明るくなってきたので期待が持てた。
 湖を一周するコースの右岸を歩き、分岐をウォンバットプールに向かう。いかにも近くにはウォンバットの巣がありそうだ。眼下にクレーター湖を見下ろしながら急登を登って行くと、急峻な尾根にあるマリオン展望台に着く。眼下にはダブ湖、右手に目をやればクレイドル山がそびえている。このコース一番の人気スポットだ。しかし、その先の湿原に入る所で急激にガスが涌いてきた。「クレイドル山はこれが見納めかも」と言ったら本当になってしまい、2度とその雄姿を見ることができなかった。
 広々とした湿原に小川が流れ、緑の大地に歩きやすい道が続いている。気持ちの良い道をしばらく行くと、キッチンハットという小さな避難小屋がある。その前から頂上への本格的な登山道が続いている。前方は白の世界だし、霧雨が本格的な雨に変わりそうだったので、30分ほど歩いて頂上への挑戦はあきらめることとなった。
 キッチンハットまでもどって、同じ道を引き返すのはつまらないので、まっすぐ進む別のルートで下山することにした。クレーターピークのすぐ横を通り、原生林の森を抜けて、クレーター湖に出た。やがて、リラ湖とダブ湖が見えてくると、ゴールの駐車場はもうすぐだ。
 そこから一路、今日の宿泊地であり、タスマニア島最後の町であるデボンポートに向かった。デボンポートはタスマニアの北海岸にあり、メルボルンからのフェリーが就航している。
2月13日(火)

晴れ
 14時発の飛行機までに時間があったので、午前中はデボンポートの観光をすることにした。皮肉にも今までで一番の快晴だ。海に突き出たプラットフォームから、大型のフェリーが入港しているデボンポートの港が見える。プラットフォームの先端には「海の精」と言われるオブジェがある。高い台座の上に矢を天に向けている人間の銅像が立っている。海岸に沿ってさらに進むと、灯台があり、白い波が岩場を打ち付けている。遊歩道が伸びており、釣りをしている人もいる。草むらの中でワラビーが我々の様子をうかがっていた。
 その後、ドンリバー鉄道に乗る予定だったが、残念ながら今日は運行していなかった。ドンリバー鉄道は、ドン川に沿った貨物専用の鉄道であったが、現在は観光用に修復した列車が走っている。仕方がないので、乗り場にある鉄道博物館を見学して時間をつぶした。
 メルボルンを経由してシドニーに戻り、羽田行の飛行機に乗る。
2月14日(水) 

晴れ
 羽田からの機上から、富士山を始め、名だたる山々を見ることができた。福井駅の連絡バスも順調に発車したが、市内にはいると大渋滞。2車線の道路が1車線しかあけてなく、幹線以外は除雪も進んでいなかった。大雪の残滓を嫌と言うほど見せつけられた瞬間だった。