No.79          トムラウシ(2141m)

             
 平成13年8月11日(土)    晴れ 
  短縮登山口(4:05) → 本道との分岐点(4:30) → カムイ天上(5:10) →
  前トム平(7:30) → 十勝岳分岐点(8:35) → トムラウシ山頂上(9:00〜
  30) → 十勝岳分岐点(9:45) → 前トム平(10:50) → カムイ天上
  (13:00) → 本道との分岐点(13:35) →
 短縮登山口(13:50) 

 トムラウシ温泉までの道は、果てしなく広がる原野を走り「こんな所に・・・・」と思えるような奥深い所に牧場がある。隣に行くのも大変だろうなと、生活の厳しさが伝わってくる。道はやがてダートになり、おまけに他の車の後に付いてしまったので、土埃がすごい。周りの草木も埃で真っ白だ。
 短縮登山口の駐車場で夕方7時頃戻ってきた人の「下り口の笹の中で大きな笹音を聞いた。きっとあれは熊にちがいない」「朝5時半に登山を開始したのに暗くてライトを点けなければならなくなった。」といった話を聞いて一気に不安になってしまった。
 そこで翌日は、熊と会わないように、明るいうちに帰ってこれるようにと念じつつ、夜明けと同時に歩き始めた。長い間雨は降っていないはずなのにぬかるんでいる個所がある。雨が降れば沼田のようになるであろう。木の根が張った急坂を登って行くと、右手前方の木立ちの間から目指すトムラウシ山の全景が飛びこんできた。
 カムイ天上と呼ばれる所には思いがけなく早く着いた。どうしてその名がついたのかわからないほど何の変哲もない所である。きれいな双耳峰を見せているトムラウシ山はまだ遥か彼方である。
 道はやがて水の無い川を何度も渡渉し、こまどり沢をつめていく。大きなガレ場を横切りハイマツの急登をジグザグに登って行くと平らな広場に着く。最初そこが前トム平かと思っていたが、調べてみるともうひと登りした岩でゴロゴロした尾根の所を言っているのだった。
 やがて奇妙な形の岩や地塘が点在し、小川が流れ高山植物が咲き乱れるトムラウシ公園と言われる所にやってきた。そこはまさに楽園、天上のプロムナードであった。前方には黒い岩で光るトムラウシ山がデンと控えている。
 十勝岳への分岐を右に分けてひと登りで待望の頂上である。頂上には思ったよりたくさんの人がいて賑わっていた。とくに女子大のワンダーフォーゲル部の元気な声に和やかな気分になった。十勝や大雪の山々は意外なほど近くに見えた。日高の峰々が連なっており、いつかは訪れたいニペソツ山も確認できた。とうとう「大雪の奥座敷」に来てしまったのだ。
 帰り前トム平から下を見るとキタキツネが歩いているのが見えた。音を出さないように鈴を手で押さえて近づいたが、それほど警戒はしていない。こんな山の中でキタキツネに出会ったのは初めてである。
 カムイ天上に近づくと又背後にトムラウシの全景が見えてきた。念願がかなったという充足感と数時間前まではあの頂上にいたんだという感傷で、なんとも去りがたかった。
 帰りに入ったトムラウシ温泉「東大雪荘」は、露天風呂の下に渓流が流れておりとても情緒があった。