No.8           剣 岳(2998m) 

                    平成8年7月21日(日)〜22日(月)  晴れ

   1日目 = 室堂(13:30) → 剣山荘(16:30) 
   2日目 = 剣山荘(5:20) → 剣岳山頂(8:30〜50) → 剣山荘
           (11:45〜12:15)
 → 室堂(15:10)

 剣岳は上級者の山であるような気がして、今まで登ろうと考えてもみなかったが、近所のKさんが2回も登っているので、案内してもらうことにした。日曜日だったのでケーブルカーで待たされ、室堂で食べるはずだった昼食は駅前の芝生の上で食べることになった。
 さっそくコンクリートで固められた遊歩道を歩き始める。みくりが池も今年は雪が多く、周りは雪で囲まれており、いつもはテントでにぎわっている雷鳥平もほとんど雪で覆われていた。大学の合宿であろうか、スキーヤーが多く、ちょっと見ると冬のゲレンデと見間違うほどであった。
 別山乗越から見る剣はいつもは大きくて堂々としているのだが、今日は頭に雲を載せてまだ全貌を見せていなかった。厚い雪の上を歩いて今日の宿に着いたが、風呂に入れたのはラッキーだった。
 翌朝、小屋の近くから北アルプスの山々を眺めた。朝日に輝く五竜岳、そしてその右に端正な姿の鹿島槍がそびえている。 
 いよいよ剣岳に向かって歩き始める。山腹の道をたどり、まず一服剣に着く。目の前に堂々と立ちはだかる山塊は剣の本峰ではない。頂はその裏に隠れているのだ。そこからは鎖あり、はしごありの岩登りである。あんな急なところへどうやって登るのだろうと思える断崖も、近づけばちゃんとてがかリがあり、遠めに見るほど急でもない。そして岩登りが楽しく感じられる自分に少々驚いた。
 あんな所に人が・・・と思えるほど絶壁の所に人が立っている。いよいよ最大の難所であるカニのタテバイである。最初の1歩が出ない。歩幅がありすぎて鉄杭に足がかからない。下を見るとぞっとするような高度感。さすがの僕も冷や汗が出た。
 ピークの時は1時間待ちもざらだという難所を切り抜けると、頂上はすぐである。頂上に着くと小さな神社の前に思わず座り込んでしまった。安心感で力が抜けたような感じだった。
 我に帰って周りが見えてくると、大展望が広がっていた。前方に立山、奥に薬師、左に笠、そしてなだらかな白馬連峰。この時次は薬師岳と笠ガ岳に登ることを密かに決意したのだった。
 帰りの難所であるカニのヨコバイは、足元が見えないのでどこに足を置いていいのかわからない分恐怖心がつのったが、他の人に指示してもらうとわりあいスムーズに進むことができた。そして行きには気づかなかった高山植物を愛でる余裕も出てきたのだった。