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デフレについて
1.はじめに
最近の(このページを作成したのはは2003年5月)マスコミなどでの経済論議はもっぱらデフレ。多くの方がいろいろな議論を展開されていますし、政府の経済政策ももっぱらデフレ対策、ということになっています。
しかしその根本的なところで、どうもしっくりこないことがあります。これまでの新経済モデル検討の経緯を踏まえて少し整理してみます。関係者の方へ参考になればと思います。
このページは、新経済モデルについての検討を踏まて作成してあります。前のページ(’トップページ’、’ごあいさつと提案’、’需要と供給の法則’、’価格’、’顧客と供給者の関係’、’「共生」「共創」モデル’、’新モデル案’を順に確認の上で、以下の議論を見てください。このページをいきなり見てもわかりづらいと思います。

2.デフレの原因は?
まず、デフレの原因について見ていきましょう。
益田安良氏の「デフレ経済進行中!」『PHP Business Review』 (2003年5・6月号 14〜19ページ PHP研究所 2003年4月27日)
では、デフレの原因として次の4点が挙げられています。
| 1 | 需給ギャップ |
| 2 | 技術革新の進展 |
| 3 | 規制緩和による値下げ |
| 4 | 安い輸入品の急増 |
これらは益田氏の論文に限らず、よく耳にします。つまり、大方のデフレ論議の出発点になっているところです。
しかしです。それぞれの内容をもいちど素直に検証してみると、どうもおかしいのです。
(1)需給ギャップ
益田論文では、’市場経済では価格は需要と供給の関係で決まる’と高らかに宣言しています。しかし、需要と供給の法則はもはや前世紀の遺物であり、現在の経済を説明することはできない、というのが、これまでのページで検証した結果です。
こんな経済学史で紹介されるべき過去のモデルで現代のデフレを論じ始めて、ほんとに収穫があるでしょうか。
さらに、’現在は物余りで需要不足である’とあります。でも物不足だったのは、終戦直後から高度経済成長が始まるまでくらいでしょう。少なくともバブル期は一般のモノは今以上にあふれていました。
このように、デフレの原因の第1は’需給ギャップ’とはいえないのではないでしょうか。
(2)技術革新の進展
これも別に今に始まったことではありません。’90年代以降のIT革命での下でそのスピードが一層速くなった’というのは具体的にどんな商品なのでしょうか。
IT革命の牽引車であるCPUは、’CPUの性能は18か月ごとに2倍になる’という有名なムーアの法則が30年以上成立していて、90年代になっても進化のスピードは変わっていません。
ましてや、例示されている’千円の散髪屋’とはどうしても結びつきません。
つまり、技術革新も今回のデフレを説明するには説得力に欠けるといわざるを得ません。
(3)規制緩和による値下げ
これは、一見納得させられます。たしかに’インターネットの通信料金やタクシー’はそのとおりですね。
でも、’一方で、銀行のATM手数料など、規制緩和により競争が激化し、企業の収益率が下がって値上げに至った例もある’といわれるとわからなくなってしまいます。
そういえば、わが国が規制緩和のお手本としたアメリカの民間航空の規制緩和は、結果としてアメリカの地方路線での大幅な運賃アップや縮小、廃止をもたらしましたね。
ということは、規制緩和、即、デフレの原因とはいえなくなります。
(4)安い輸入品の急増
この部分については、’次号で詳しく述べたい’とのことですので、それを読ませていただいた上で論を進めたいと思います。
以上、一般にいわれているデフレ要因はどうも怪しくなってきました。
(お断り)益田氏の論文を引合いに展開したのは、「たまたま手元にあった雑誌に掲載されていた」という理由だけからです。他の人の論文を目にしていたらそれを使わせてもらったでしょう。
しかし、結論は同じになったと思います。
2.デフレの対策
では、デフレ対策として取るべき対策は何でしょうか

(1)需給調整?
原因の認識が的外れだと、当然ながら対策もピンぼけになってしまいます。
益田論文では、総需要拡大策やマネー拡大策を批判した後で、’供給調整’を提言しています。
そんなこと、今さらいわないでください。これまで詳細に検討してきたように、現代は、'需要=供給'を経済モデルの基本に置くのが現実の経済実態をよく説明できるのです。
需要に則さない供給者は、デフレになる前にも市場から退場させられています。
ですから、行政での需給調整うんぬんと議論してみたところで、デフレ対策としては非常に効果の小さいものになると思います。
(2)グローバル経済での国の役割
しかも、経済のグローバル化がこれほど進展した現在、国が行う経済政策の影響度はきわめて低くなっています。特に自由な市場経済下では、需要は行政が決めるものではなく市場が決めるものです。
また現代の経済は、’需要=供給’とモデル化できますから、需要により供給は自然に決まります。すなわち、供給は市場が決定します。もし、両者にアンバランスがあるとすれば、それは行政がはいりこんでいるからではないでしょうか。
現在のまま何もしないでいると、ますますデフレスパイラルに巻き込まれていくでしょう。しかし、国の包括的な財政・金融政策ではグローバル経済においてあまり効果が期待できないばかりか、膨大な財政出動による財政赤字が発生するので、トータルとしてマイナスになります。
これらを、図にすると下のようになります。
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☆デフレ対策 <供給者の自助努力> −新製品・新サービスの開発−
このように、デフレを政府のせいにし、また対策を迫ったところで解決の糸口は見えて来ません。
その一方で、これまで見てきたように’需要=供給’のグラフは、新製品・新サービスの市場への投入によってどんどん右肩上がりになっていきます。しかも、対象となる市場はグローバル化の進展で全世界となりました。
実際、デフレだ、不況だ、といいながらも、魅力的な製品・サービスを生み出して業績を向上させている企業は枚挙にいとまありません。魅力的な商品を市場に投入すれば、需要は拡大するのです。
なお、益田氏の論文では'需要掘り起こしができる分野にシフトする'ことを対策の一つに挙げてあります。
しかしながら、成長分野へ進出したからといってすぐ需要が得られるほど世の中は甘くありません。成長分野は、参入と撤退がともに多い分野であることを忘れてはいけません。動きの激しいハイリスク、ハイリターンの世界なのですね。
ここで、これまでなかった魅力的な製品やサービスを生み出して初めて市場に受け入れられるのだと思います。
残念ながら、デフレの真の原因は、供給者(企業、人)の努力不足だったのかもしれません。
少なくとも、そう考えなければデフレ克服の道は開けないことは確実のようです。
つまり、それぞれの供給者(企業、人)が自らの手で新しい製品・サービスで需要を作り出していく。ごく当たり前のことがデフレ克服の一番の対策のように思えます。デフレの特効薬などないのではないでしょうか。
新しい製品・サービスによってそれぞれの市場が活性化していく。それらが集まって結果として社会全体の経済が活力を取り戻していく。
このような一つ一つの実直な取り組みが最善のデフレ対策だと思います。
これを下のように図示してみました。
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少し別の観点から見てみましょう。
3.世界経済で見たデフレ
益田安良氏が「デフレ経済進行中!」『PHP Business Review』 (2003年5・6月号 14〜19ページ PHP研究所 2003年)での予告どおり「世界デフレの足音が迫る」と題して同誌7・8月号(2003年6月27日 4〜11ページ)に続編を執筆されています。
この論文では、デフレはわが国だけでなく世界的に見られる傾向であることが詳細なデータで示されているほか、19世紀末の大デフレや1930年代の大恐慌との多面的な比較・分析によって現在のデフレの特色をわかりやすく浮かび上がらせていて大変参考になります。
よく引合いに出される1930年代の大恐慌より、19世紀末の大デフレのほうが今回のデフレに似ていることなど鋭い指摘が随所に見られます。
本論文では、今回のデフレの最大の要因を’未踏の領域に入ったグローバリゼーション’と結論付けられてあります。
つまり
@発展途上国の供給力の爆発的増加が見られる。しかし、これは19世紀末の大デフレでも見られた
ところが
A直接投資の飛躍的拡大(対世界GDP比 1870年、6.9% 1900年、18.6% 1980年、17.7% 1995年、56.8%)
BIT革命による情報のグローバル化
が今回の世界デフレの最大の原因であり、特色であるといえるそうです。
そして、この世界デフレは10年近くは続く可能性が高いと述べられています。
と、ここまではたいへん興味深く、また同感しながら読むことができました。。
しかし、かんじんの最後でわからなくなってしまいます。
「日本の労働生産性は、依然中国を上回ると考えられる」
「生産性を高めることによって賃金の下落には歯止めをかけることが可能である」
これでは、ここまでの精緻な論考はすべてパー。何にも残りません。
まず、益田氏自身が強調しているこれまでに例を見ない大規模な直接投資は、先進国と途上国の貿易構造を急速に水平分業に近づけると同時に、生産性の差を見る見る小さくしています。
もちろん、実際の工場では機械を設置すればすぐ生産が始まるわけではなく、オペレータや工場を運営する組織、つまり人が必要ですから、ある程度の時間は必要です。
しかし、投資があるのとないのとでは大違い。先進国と途上国の生産性の差はどんどん縮まって行きます。
いや、その前に100倍近い差がある人件費を考えたとき、生産性の差が1十分の一くらいになった時点ですでにアウトです。
以前からいわれているように、国内製造業の空洞化は大きな課題です。
「日本の労働生産性は、依然中国を上回ると考えられる」などど安心しているわけにはいきません。
それだからこそ、国内の各企業ではそれこそ必死の努力を続けているのだと思います。
それを、「生産性を高めることによって賃金の下落には歯止めをかけることが可能である」といわれただけでは、読者はうなずけません。
「デフレと共存する術を探さねばならない」と結んでいる益田氏。次号に続稿がはいるそうですから、次はぜひとも【デフレと共存する術】を具体的に一般読者が納得できる形で示していただきたいと思います。
ちなみに、私は繰り返し述べているように、新経済モデルから、新しい製品・サービスを生み出していくことの重要性が帰結されると考えています。
また、多くの企業がこのような取り組みと必死の努力をしていると見ています。
皆様からのご意見、ご指導をお願いいたします。
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