インターネット博覧会(インパク)参加パビリオンでした


新モデル案
  

 これからの一般的な経済認識として、次の3つで記述するモデルを提案します。
 個々の内容は、これまでのページでも述べましたように専門家には既知の部分もあります。しかし、経済入門書の最初のページに載せるべき内容としては、おそらく初めての試みだと思います。

1.需要と供給の関係 : 需要=供給
2.需要 : 価格、品質、納期、その他で動的に決まる。
3.経済の発展 : 技術革新などによる新製品、新サービス

1.需要と供給の関係 : 需要=供給
 日常生活から見て、ごく素直に受け入れられるものだと思います。また、消費者と供給者がともに最大のメリットを享受できる究極の姿です。
 従来の経済学教科書とは大きく違っていますけれど、よく考えてみてください。

 「ごあいさつ」の「需要と供給の法則」で述べましたように、
  ・需要と供給は互いに独立。共に価格により決まる。
  ・両者がバランスしたところで価格が決まる。
というモデルは、自動車も電話もなかった200年前ならいざ知らず、現代には全く当てはまりません。
 デパートやスーパーで、毎日商品の値段が変わっていますか?
 そう遠くないうちに、各種の財・サービスはすべてリアルタイムで需要量だけ供給されるようになるでしょう。需要量だけ供給されれば、消費者は安心して購入できます。供給者も販売の機会損失や売れ残り在庫から開放されることになると思います。
 
 このような時代では、需要量と供給量のバランスうんぬん、といった議論は意味がなくなります。両者は、静かにのんびりと天秤で釣り合うのを待つのではありません。「ごあいさつ」の「顧客と供給者の関係」に書きましたように、ダイナミックに適応していくのです。
 
 なお、「これって、あの'ニューエコノミー'のこと?」とおっしゃる方はこちらをご覧ください。

これらをイメージ図にすると下のようになると思います(申し訳ございません。文字サイズやスクリーン範囲を調整してご覧ください)。

新経済モデルイメージ





2.需要 : 価格、品質、納期、その他で動的に決まる。
 上記2.より、需要=供給ですから、経済は需要により動きます。となると、需要はどのように決まるのか、ということになります。
 従来の需要と供給の法則では、
・価格で需要が決定する
となっています。しかし、今日はそうではありません。
 「ごあいさつ」の「価格」で説明しましたとおり、確かに'価格は需要の重要な要素’ではあっても、それですべてを説明することはできません。私たち消費者は、品質や納期のほか、販売方法、アフターサービスなども考えて購入品・店を選んでいるのです。また、企業や業界のの環境問題に対する姿勢なども間接的に影響しています。

 一方で、これらの要素も価格に置き換えることができるのではないかとの考え方があります。しかし、これらは人・企業ごとによって判定基準が異なり、また、その時々で変化するものです。現実には限定合理性での換算しかできません。完全合理性を持った普遍的な判定は不可能です。しかも、個別の内容に要素還元するのもむずかしく、全体的な視点が求められます。これからの経済ではこの部分がますます大きな比重を占めることになるでしょう。

 経済行為に価格以外の決定要因、しかも数式化がむずかしいものがはいるのはあまり歓迎されないかもしれません。でも、私たちに必要なのは数学的に便利なモデルではなく、現実の生活をうまく表現した心理的に現実味のあるモデルです。



 
3.経済の発展 : 技術革新などによる新製品、新サービス
 これまでの結論をもう一度書き出して見ます。
 @需要=供給
 A需要は価格、品質、納期、その他で動的に決まる
 
 それでは、私たちの経済行為はいったいどのように生成、発展してきたのでしょうか。また、これからどうなっていくのでしょうか。

 煎じ詰めれば、新製品、新サービスといえると思います。各種製品・サービスや経営管理手法、これらが価格、品質、納期、その他を革新していきます。そしてその結果、新たな需要が発生する。また、その需要が次の技術革新を求めていく。このような需要と供給の相互作用が経済の原動力ではないでしょうか。

 コンピュータや携帯電話といった製品、それにネット販売、コンビニの製品仕入れ販売方法など、これらの登場と活躍が現実の経済を成長させているのです。

 もちろん、全く新しい製品やサービスなどというのはまれで、実際には従来のものにちょっとした工夫をほどこしたものが大半でしょう。また、いわゆるアイデア商品といったものもります。
 商品自体は変わらなくても、PR方法を変えてみたり、別の市場へ売りこんでみる、といったことも含めていいでしょう。
 また、
☆生産管理を革新して納期がよくなった.。
☆生産技術が向上したので品質が安定してきた。
☆材料や生産を合理化で価格が下がった。
というような面も重要です。
実際それぞれの企業では、これらを少しでもよくすることに日夜奮闘しているのですから。

 このような小さなことの積み重ねがふつうは経済、つまり需要の原動力となっていることを忘れてはいけないと思います。これまでなかった全く新しい製品やサービスというものは、いわば突然変異のように偶然起きる、くらいに考えたほうが現実的にはしっくりきます。
 小さな変化は、最初は単なるばらつき、ゆらぎです。しばらくすると元の姿に戻っています。ところが、そのうちのいくつかは需要と供給の相互作用の中で、戻らずにさらに新しい方向へ進んでいきます。それが、いつしか全体を変えていることになります。少し時間軸を変えて見ると、突然変異に見えるかもしれません。全く新しい製品といっても、少し詳しく見てみると、ちゃんとその前の連続した積み重ねがあります。
 いろいろいっても経済の基本モデル-需要と供給の継続的な相互作用-は、何も変わっていない。ただ、IT化などによって相互作用のサイクルがどんどん短くなっている、といえると思います。これが、過去の時間軸から見たとき、不連続、突然変異的な変化に見えるのでしょう。

 これは、後で述べる経済活動と自然の森とのアナロジにつながるものです。

 上で述べた日々の需要と供給の相互作用の積み重ねが、すなわち経済の発展であるといえると思います。

 複雑系科学の成果を応用した形で、経済誌には「共生」「協創」ということばがよく見られます。響きがよいし、いわゆる東洋思想にも通じるものが感じられるので、とりわけ日本では好まれています。
しかしながら、何となく使われているだけでファッションの域を出ていない、というのが実態のようです。これでは一時的なブームで終わるだけですね。

 ところが、これまで見てきたように経済活動、つまり私たちの日常生活は相互作用の繰り返しです。これこそ「共生」「協創」にほかなりません。
ということは、このページで提案している新しい経済モデル −現代の日常生活に根ざした見方− が、「共生」「協創」を具体的に指し示しているといえるのではないでしょうか。
「共生」「協創」は、一時の流行ではなく、その本質的な意味でこれからの経済、社会を考える上でのキーワードになると思います。
しかしながら、「共生」「協創」は経済再生の魔法の薬でも何でもなく、需要と供給の相互作用の繰り返し、つまり顧客と供給者の日常的なコミュニケーション、愚直な努力の積み重ねの大切さを改めて述べているにすぎないともいえます。


 当然ながら、新製品、新サービスを投入しさえすれば需要が増えるなどどいうことはありません。需要になるかは、市場、つまり人の心に同期できているかににかかっています。

 人間という知性を持った、しかし全能ではない生命体の活動。経済は、これからこのような理解を基礎におきたいと思います。

経済行為の構造について、日常生活の視点をベースに需要と供給の法則への素朴な疑問から出発して、最近の複雑系科学の成果も援用しながらさまざまな考察を加えてきました。
その結果としての新経済モデル案。ずいぶんいろいろ考えた結果が、あまりにも当たり前のことを述べているだけなので拍子抜けされたかもしれません。
しかし、当たり前であるからこそ、全体の基礎となるモデルとしてふさわしいことの証拠になっているのではないか、と思っています。
少なくとも、全く現実に則さなくなってしまっている需要と供給の法則からの卒業の必要性は、理解していただけたのではないでしょうか。

 次に、このモデルの理解を深めていただくため、例で考えてみましょう。 
 グラフイメージでは、たとえば下のようになります。このグラフでは技術革新が原因で、需要量が結果のようになっています。しかし、厳密には結果がまた原因に影響をおよぼす再帰的関数です。



実際には、下図のようにさまざまなバリエーションが考えられます。




A:曲線になっています。
B:’X’の部分での技術革新の影響はきわめて大きく、不連続な線になりました。
C:’Y’の部分で、他カテゴリに大きな技術革新が起こりました。その結果、これまで当カテゴリの需要だった分まで取ってしまいました。新経済モデルは、限られた範囲だけで考える閉鎖系システムではなく、他系との関係が存在する開放系システムで考えているので、このようなこともおきます。
 
 以上、3つの議論を、多少数学的表現を使って旧モデルと比較するとこのようになるかと思います。興味がある方はどうぞ。


 具体例として、複雑系の重要概念である収穫逓増、ロック・インおよび自己組織化の説明で引合いに出されて、わが国でも再び目を向けられたビデオ規格争いを整理してみましょう。
 『複雑系』(M.ミッチェル.ワールドロップ著、田中三彦、遠山俊征訳、新潮社、1996  別に文庫版(同 2000)がある)では、ベータ方式とVHS方式について、
たまたま、最初VHSのほうがわずかに売り上げがよかったので、ビデオ販売店はVHSテープを置くようになり、しだいに消費者もVHSデッキを買うようになっ た。これがやがて、VHSの大きな勝利になった、と説明しています。
 『複雑系』は、複雑系ブームの火付け役になった本だけに、この部分も実にわかりやすく、また説得力のある説明です。

 ただ、少し補足しておかなければならないことがあるように思います。
例えば、最初VHSのほうがわずかに売り上げがよかったのが【たまたま】なのか、という点です。
ほんとうに【たまたま】だったとすると、企業の命運を含めた経済活動は、結局【たまたま】の偶然で決まることになります。もしそうなら、企業戦士は、単なるバカ。パチンコでもしてたほうがよほど賢いということになります。

 ところが、【たまたま】ではなかったようです。
 『SONYの旋律』(大賀典雄著、日本経済新聞社、2003)で、ソニーの社長、会長などを務めた大賀氏は、次のように説明しています。
・ビデオの方式を比較する「鳴き比べ」で当時松下電器会長の松下幸之助氏が、’軽いVHSデッキ'を推薦した
・標準録画時間が、ベータは1時間なのにVHSは2時間。VHSはさらに3倍録画モードも出した。VHSテープはベータより2まわり大きく、画像も劣ったが、録画時間で消費者の支持を得た
・VHS陣営は、技術仕様を公開して積極的に他社を仲間に入れた。対してベータ陣営は消極的だった。

 確かにテレビや新聞、雑誌では、画質はどうやってもなかなか説明できません。ところが録画時間は、一言で消費者を納得させられるます。
実際、私も録画時間でVHSを選びました。

 このようにちゃんと理由があるんですね。これが【たまたま】に見える人は、消費者との対話ができない人ですから、さっさと企業経営から身を引くべきでしょう。
 『複雑系』は、経済関係にも大きな影響を与えましたし、事実、『複雑系』を丸写ししたと思われる経営書の類も少なからず見られます。しかし、経営を語るからには、これくらいの調査はした上で出版してもらいたいものです。繰り返しますが、【たまたま】で決まるなら、経営努力なんてカンケイありません。


多様な心を持つ人間の活動である経済を静的物理モデルで説明できないのは、もはや明らかです。しかし、その一方で、カオス、経路依存性などどいうことばを聞きかじったからといって、'経済は、不確実で、突然変異する'などど、したり顔でいるのは愚の骨頂です。
消費者との対話を短サイクルで繰り返し、需要と供給のタイムラグを極限まで縮めていく中で、お互いに新しい方向が見えてくるのではないでしょうか。自己組織化などどいうと、何か、むずかしい新しい概念に聞こえます。でも、その本質はこんなところにあるのではないでしょうか。




☆ 経済と森のアナロジ




 森の中の無数の動物や植物は一見それぞれ無関係に存在しているように見えます。しかし、実はそれぞれが非常に複雑でダイナミックな関係を保って成立しています。
 また、森は静かです。ところが、実際には森自体、または外からの変化によって絶えず相変化を起こしています。非平衡で非可逆的、しかもきわめて大きな変化です。
 多くの要素の相互作用によってダイナミックに成立している生命体。内部での、また時には外部からのエネルギーで絶えず変化している森。「ごあいさつ」の「「共生」「協創」モデル」で触れたような生命を基軸においた視点。
 経済を森のように考えることができるのではないでしょうか。

 洋の東西を問わず理解されやすいのではないかと思います.。


 では、経済と森とのアナロジをわたっていただくために、これまで考えてきた経済モデルをもう一度整理してみましょう。
まず、顧客と供給者の関係で見たように、顧客と供給者は、相互作用で動的な関係です。
また、このページで考えてきたように系内部での相互作用や外部からの情報での技術革新により、需要(=供給)は絶えず変化し続けています。
 これらをまとめると、次のように表現できると思います。
なお、顧客と供給者では顧客が一人だったのを、2人してみました。また、相互作用による収束を、複雑系のことばより自己組織化と表現しています。


これを森の様子と比較してみましょう。
森は、樹木や動物など森を形成する要素の活発な相互作用の世界です。エコシステムの研究成果から、かつての食物連鎖のイメージは、経済の静的モデルと同じように今や過去のものとなっています。

 当サイトを最初から読んでくださった方は、この両者のアナロジイメージをごく自然に受け入れられたのではないでしょうか。


以上の考察をもとに、現在の経済テーマであるデフレについて少し考えて見ました。ぜひ、読んでみてください。


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