翠鬼に関する裏話(あくまでも団長 下村の個人的な意見だよ) 1998.11/09 UP

そもそも「翠鬼」を上演しようと思ったのは「夜の客人」が終わった直後。要するに旗揚げ直後から、この企画自体は
あったのです。ですが、当時主役の女鳥にと思っていた女優が、本読み後に「ああ、これキツい、体に残るわ。」と
のたまった。確かに、2時間全力疾走の役だから、疲れるんだけれども、確かに、女鳥の感情は役者の肉体の
奥深くに根を張って、じわじわと役者を追いつめるのだけれども・・・それが、役作りの醍醐味なのではないか!!!
そんな訳で暫くお蔵入りした「翠鬼」なのですが、意外にも、松本の「玉手媛演りたい」という言葉で上演へと急浮上。
しかし、当時のキャスティングは 女鳥:松本 / 玉手媛:姫 / 隼別:安川 というもの。しかし姫の御懐妊により、玉手:松本決定!
「泡沫の寓話」でアゲハを演じた竹田なら、もう少し追いつめれば女鳥が出来る。という計算の元に、女鳥を竹田に配役。
竹田は受け身の役者なので、隼別も受け身の安川では無理だと判断、下村:隼別になる。(押熊がキャラクター的に合ってる
のは解ってたんだけど「たまには主役を演ってもいいだろ」的軽いノリもあった)大好きな押熊は廷々に決定、安川は真崎に。

そんなこんなでキャスティングも決まり、稽古に入る。それに伴い口調は厳しくなる。さようなら、ですます調。
さあ、これから3ヶ月、頑張りましょう!!ところが、こんなキツい芝居、3ヶ月も稽古すると死んでしまう!(過去に故・妻夫木師匠
の演出の元、4ヶ月稽古して私生活と肉体がボロボロになった経験アリ)最初2ヶ月で台本の解釈と役作りを平行して読み稽古。
残り1ヶ月で暴力的に作り上げる事にする。それが、ひいては役者達の私生活と肉体を保護する事になるのだ。皆は未だこの戯曲
の恐ろしさを知らない。ふっふっふっ・・・今のうちだぜ、楽してられるのは・・・

さあ、残り1ヶ月、スパートかけて地獄の追い込みよ〜ん。あら、音探さなきゃ、明かり決めなきゃ、野外でもパンフ作るのね、
えっ、衣装のデザインは・・・神原さんに聞いた通りで、はい。・・ん?舞台?そうだよなあ、舞台タイル張りだもんなあ・・・
安川、投げ飛ばされるんだもんなあ・・・結構する事あるじゃん。・・・は?勾玉?・・・作りましょう。翡翠の腕輪?・・・作りましょう。
押熊の大太刀?・・・俺が作る!任せとけ・・・ってな感じで演出下村は、時には舞台屋牛田猛〜になり、小道具屋矢田麻呂になり、
役者下村に戻り、演出して・・・と大忙し。はぁぁ・・・スタッフ欲しい・・・。
そんな下村のストレスに狙いすましたかの様に下村家に納車されたZX-10!大阪に衣装の買い出しに行く途中に、早くも250を
たたき出す。ナイスZX-10!凄いぞZX-10!その後、一般道では、スピードが乗ってしまうと、急には止まれない事に気付き、
「出せるのに、出すと恐いメに合う」事が余計に下村のストレスを加速させて行く・・・

その頃、役者達の間には、下村の厳しいダメ出しに対するストレスがピークを迎えつつあった。稽古後の飲み会(半ば恒例)の時に
爆発する廷々。泥酔する竹○、○岡、○村・・・。以後泥酔者をトコロテンと呼ぶ事になる。(だって、次から次へと現れるんだもん)
稽古後に路地裏で愚痴を言い合う○々、○川、○本、坪○・・・人は彼等の事を「第2幻臓団」と呼んだ・・・。酔っぱらった○々
が下○に殴り掛かり、逆に羽交い締めに遭い、気を失いそうになるが、先に手を出した事を忘れ「それしか(暴力しか)無いのか!」
と一節ぶるのだが、下○の頭の中には既に「アントニオ猪木のテーマ」が流れていて、○々の言葉は耳に入らなかったなどと
いう事実は存在する。

とにもかくにも無事に(!?)本番を迎える事になったのだが、天気予報は台風の接近を告げていた。前々日の夜、仕込みは突然に
開始された。静まる中央公園に、得体の知れない一団が 某アイスクリーム卸屋のトラックで乱入。ここから悪夢が始まった・・・
順調に作業は進み、当初朝6時と目されていた完成時間は、意外にも朝4時頃だった様な気がする(記憶曖昧)。器材の保全の
為、泊まり込む事になったのは、腕っ節が買われてか、ストレス発散を狙ってか下村、と大阪からの刺客、弱連者の2名。
かつて、大学時代に構内に無理矢理芝居のテントを張って、警備員と戦い乍ら、泊まり込みの番をした黄金コンビだ!
さっさとウィスキーを呷って眠りに就く下村。空には満点の星。流れる黒い雲。コンクリートの舞台の上で、男二人が大の字。
何て無粋なんだろう・・・ふと隣の弱連者を見ると、向こうの酔っ払い達を牽制して上半身を起こし身構えている。「攻めてきたら
起こしてね」と呟き、眠りに就く下村・・・。・・・・?・・・朝の目覚めは人の気配でした。ウォークラリーか何かの出発式に集まった
オヤジ達の気配に起きる二人。急いで舞台上を空けて使用可能にする。劇団員の集合時間まではまだ大分ある、二人だけの
作業は効を奏し、客席の隅から様子を窺う。何故かラジオ体操を一緒にやったら、一団は出発。再び安息の時間が訪れる・・・。

初日は心配された台風の影響も無く、無事終了。今日の泊まり込みは廷々、安川コンビ。今夜は台風の予報。頑張れ!
下村は自宅で眠りに就く。爆睡。
翌朝、天気雨。心配になり早く行くと、廷々・安川が泣いている・・・?一晩中雨風の音をテントで聞いていたせいで、帰りたがる
二人、泣きが入っている。何とかなだめようとしていると音響のみのーん到着。器材の撤収をすると言い出す。下村の頭の中に
「アントニオ猪木のテーマ」が流れる。下村の自前の器材だけで音響をする事に決定。テーマ曲が鳴り止む。
本番は雨の中。観客は傘をささない?何故?後ろの人が見にくくなるから・・・? だとすればこれ程有り難いお客さんはいない。
出番しょっぱなのすっ転びでパンツもぐしょぐしょ、でも、これでテンションが一気に上がる。わ〜い、雨も楽しい〜!!!で無事終了。
あっ、松本が舞台から落っこちたけど、何とかフォローできたし、仔細無しとする。

千秋楽は、酔っ払い登場。中坊が酒飲んでんじゃねぇ!自販機蹴るな!うるさい!オヤジみたいにクダ巻くな!
で、下村、衣装のまま本番中に「只今芝居中ですので、お願いですから、お静かに願います」と交渉。中の一人が「芝居〜?
俺も出してくれ、俺も出る、俺が主役じゃ〜」と言うのを聞いて、またもやアントニオ猪木のテーマが流れる。とりあえず、正気の
坊主が、平謝りで酔っ払いを取り押さえるのを確認し、一ガン飛ばして、舞台へ戻る。何故かポケットには大量の小銭を握って
おいた下村でありました・・・。

千秋楽も無事(?)終了。バラシと搬出と借り物をお返しするのが全部終わったのが午前4時・・・打ち上げもそこそこに
くたばりましたとさ。

戻る 感想