焼岳(2,444m)深田百名山
西穂高岳(2.909m)深田百名山




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2009/8/21(夜)〜8/23

今年の夏は、なんでこんなに雨が降るんだろうって、
蝉が嘆くくらいに、よく雨が降った。

さて、恒例の「ひとりでできるかな」の山は、
遠いところは、乗換えが多くてアクセスが大変だからパスして、
お馴染みの北アルプスからチョイス。
行ってみたいのは、立山の室堂から入って、
佐々成政のザラ峠を越えて、お花畑の五色ケ原、薬師岳を登って、折立に降りるコース。
だけど、2泊3日じゃ、ゆっくり歩けないから、
穂高岳の中でまだ登っていない西穂高岳と焼岳の縦走コースを考えた。
短い休暇にはピッタリのコースだから。


(朝日に輝く笠ケ岳)

泊りは、もちろんソロテントで。
ソロテントはいいね。
薄い布地1枚で、自分の自由な空間が出来上がる。
リッツカールトンのスイートルームほどの広さはないにしても、
気分だけは、ツインルームくらいはあるね。
実際、2人は寝れるし、ザックも入れられるし、
荷物を出して広げたって、まだ余裕あるし、
テントの中で、落ちる夕日を眺めながらディナーだってできてしまうってもんだ。

これが小屋泊まりだと、
自分のスペースがあるんだけど、曖昧な境界線しかない。
基本、1人に1枚の布団だけど、混んでるときには1枚の布団に2〜3人が寝るしね。
着替えるときは、どこで着替えようかと悩むことになる。
早立ちするときは、周りの人を起こさないよう、
物音をたてないよう、そ〜っと荷物をまとめるのに気を使ってしまう。
もちろん、小屋では知らない人たちと出会えて話すの楽しいんだけど、
質問攻撃に遭ったら、
なんで1人で山に登りに来たのかの理由まで説明しなくてはいけなくなってりして、面倒。


(白山?にちょうど日が射した)

小屋泊まりを否定する気持ちは、さらさらないけど、
快適さを求めたいなら、やっぱりソロテントにトドメをさす。
でも、その快適さを享受するためには、
当たり前だけど、そのテントを山に担ぎ上げなければならない。
それが重くて〜って言う人が多いけど、
今のソロテントは、とても軽くなってきて、
フライもポールも含めても、1.3kgぐらい。
これくらいなら、なんとかなるでしょ。


(トウヤクリンドウ。白い蕾が光に透けて、光っているように見えた。)

この頃、若い人たちにアウトドアがブームになってるらしい。
そういえば、山で若いカップルやおひとり様をよく見かけるようになった。
山に登る女性たちを「山ガール」とか「山系女子」とか呼んでいる。
カリスマも出てきて、「kiki」さんや「鈴木みき」さんが、
自分流の山登りや考え方、ファッションを紹介している。
サポートタイツにスカートを合わせてるスタイルがとっても多い。

登りでスカートはいた子の後ろについたとき、
登山道を見上げたら、
スカートの中が見えてしまうんじゃないかと心配するのはオイラだけだろうか。
(←見えたってサポートタイツだし、ドキドキしないぜ。)

これまで、山で深呼吸すると中高年の加齢臭でむせ返ったもんだが、
これからは、きっといい香りがして、
深呼吸が楽しくなるかもしれない。(←変態じゃないぜ。)

話はそれたけど、若い人たちの泊りのスタイルは、
グループで登っても、それぞれがソロテントを張って寝るんだそうだ。
食事もそれぞれが自分の食べたいものを用意して、
寝るのもそれぞれのテントに入れば、
お互いに気を使うこともないでしょということらしい。

なんにしても、中高年の画一的なチェックの山シャツで埋まっていた山には、
近年、遭難事故が右肩上がりで増加してきたぐらいの変化しかなかったけど、
新しいムーブメントが起きたってことだ。


(夜明けは近い)

1日目(8月21日)

福井駅→富山駅→平湯温泉→平湯温泉キャンプ場

福井から富山へはJR、富山から平湯温泉まではバスを利用した。
バスは神岡で乗り継ぐんだけど、
運転手さんが、
富山〜神岡、神岡〜平湯温泉のバス乗車賃を別々に支払うと高くなるからと、
神岡営業所の人に、
乗継ぎ割引料金を適用してくれと、親切にも話してくれた。
ところが、そんな乗継ぎ料金設定はないって神岡営業所の人は言うしで、
どうなることか、自分のことだけどワクワク見守ってた。
結局、乗継ぎ料金の設定はないので別々の料金を支払ってほしいと、
神岡営業所の人が謝ってきた。
こちらは、ちゃんと適正な料金を支払うと答えると、
「なんて、いい人なんだ。
さっき言った料金と違うと言って無理やり安い料金にしようとする人がいるというのに。」と、
感謝までされてしまった。
分かります。
業種は違うけど、そういうクレームは、我々の職場でもよくある話だからね。
んで、旅行行程を話してたら、
それなら富山、平湯温泉間の往復バス券を買ったほうが断然安いって教えてくれて、
即買いですよ。
こちらが感謝です。

平湯温泉バスターミナルから歩いて5分くらいの所に平湯キャンプ場がある。
受付で、オートキャンプ場の反対側の方が静かだからいいですよって、
アドバイスもらってサイトに行ってみたら、
夏休み期間中なのに、だ〜れもいなくて、
好きなところに張り放題さ。
テント張って、風呂に行きます。
先々週、入った「ひらゆの森」に、また行ってきます。
ここのキャンプ場に泊まると入浴料が安くなるからね。


(オトギリソウ)

テントに戻る頃には、ポツポツと雨が落ちてきた。
雨は大した事なくてほしいという願いは、直ちに却下されて、
テントに入ったら、豪雨になりましたよ。
そんでも、明日朝が早いから7時には無理やり寝ることにした。


2日目(8月22日)

平湯温泉キャンプ場→中の湯登山口→焼岳→西穂高山荘

目が覚めると、すごい地鳴りのような音がしてる。
ああ〜、多分、鉄砲水ですぐ近くで土砂崩れが起きてるんだなぁなんて、想像したよ。
音は、近くを流れる川が濁流になったからだった。

雨に濡れたテントをたたんでザックに入れたら、
重すぎ!
きっと、それほどは重くなっていないんだろうけど、
気持ち、とても重くなってる。

平湯温泉バス停から乗った上高地行きのバスは満席だったけど、
途中の中の湯バス停で降りたのは、オイラ1人だった。
バスの中からは、なんでここで降りるのって思ってるのか、
なかなか、注目を浴びてる。

中の湯の登山口は案内板などなく、分かりにくい。
Webで見た登山口の画像がなかったら見つけられなかったかも。

とにかく林の中の登山道をぐいん、ぐいん登った。
前方の木々がなくなり、
またぐいん、ぐいん登ると岩ごろごろに出た。
見通せると、
煙を出す焼岳の山頂が見えてきた。


(溶岩ドームが頭を出した)


(焼岳北峰の中腹からは硫黄?っぽいガスが吹きだしてるけど、大丈夫か?)

焼岳は、北峰と南峰があって、コルに出て、左側の南峰は、現在登山禁止になってる。


(焼岳南峰は北峰より高いから、ホントの山頂なんだろうけど、
崩れやすいから登山禁止になってるのかな)


(火口湖)


(山頂へ登るルートのすぐそばで、何やら噴出してます!)
こんなふうに、あちこちでガスが吹きだしていて、硫黄臭い!


(北峰に登頂)
活火山って緊迫感をよそに、平らな山頂では、みなさんのんびりとお弁当を食べてた。


(北アルプスがぐるりっと。)

笠ヶ岳、槍ヶ岳、西穂高岳、奥穂高岳、前穂高岳が見えてる!!!



焼岳から西穂高岳への縦走路は、
こんなのんびりした風景は少しだけで、
ほとんどが林の中のきついアップダウンが続いて、
もう勘弁してくれと懇願する頃に、ようやく西穂山荘に到着できるのだ。


(西穂山荘前のテラス)

さっき、ソロテントの話をしたけど、
西穂山荘で、幸運なことに山ガールのソロテントが隣になった。
その生態には興味津々なので、行動を注視することにした。

彼女たちは、3人のグループで来ているようで、
それぞれがソロテントを張っていた。
でも、食事は、グループで作ったようで、
3人でポモドーロソースのパスタをパクついて、
「美味しい〜」なんて言ってた。
山メシが美味いのは定説だが、量もメニューも簡素だぞ。
それはそうと、中高年登山者には当たり前の酒盛りがないぞ。
鍋を囲んで、焼酎を酌み交わさないのか?
おかしいぞ?!
食後、少し3人で話をしてたけど、日が落ちたら、おしゃべりの声が聞こえてこない。


(山ガールたちのテントだ。
テントの持ち主が近くにいたので、景色を撮るふりをして写した。
←重ねて言うけど、変態じゃないぞ)

まだ、新しそうなテントだった。
でも、ペグ(テントが飛ばないように細いロープで地面に固定する小さな杭)が
地面に垂直に打ってあった。
ペグは、ななめ45度に打ち込むもんでしょ。
だから、張り綱がペグから外れてるよ。
こんなところが、初心者っぽいね。
基本ができてない。山岳部に入って勉強したほうが良いよ。

翌日、オイラが西穂高岳から西穂山荘に帰ってくると、
もうテントはなかったので、
新穂高ロープウェイで降りたか、上高地に降りたのだろう。
どんなデカさのザックを担いできたのか見たかったな。



テント場は、ほとんどが若い人たちだった。
男女子混合10人ほどのグループ、若いカップル、お父さんと幼児、おひとり様。
中高年はいないなぁ。
なので、1人でアタリメを焼いて赤ワインで酔っ払うことにした。
夏山って、テン場に着いてから日暮れまでのゆったりとした時間がいいね。
疲れと酔いで頭がボヤンとしてて、
日没までの刻々と色が変化する景色を眺めてるなんて。

3日目(8月23日)

西穂山荘→独標→ピラミッドピーク→西穂高岳→西穂山荘→新穂高ロープウェイ
→新穂高温泉バス停→栃尾温泉→富山駅→福井駅

午前3時に起きて、朝食を済ませ、まだ暗い中をヘッドランプを点けて歩き出した。
ランプの明かりに浮かび上がるのは、ゴツゴツとした岩ばかりで、
遠くには、先行者の明かりが点々とあった。


(独標を振り返って。左は霞沢岳、右奥は乗鞍岳)

西穂山荘から独標までは、幅の広い尾根道を歩くのだけど、
独標を過ぎると登山道は手ごわくなるって聞いていた。
そのとおり、独標からは、いきなり両手両足を使っての下りなのだ。


(この先は、こんなふうで、楽じゃなさそう。)

両手両足で3点確保しながらの山登りになる。
といっても、よじ登るとかのハードな道じゃないから、
浮石に乗ったり、つまづいたりしなければ大丈夫。

(ヘルメットを被ってる人は、西穂高岳から奥穂高岳への難ルートを行くんだろう。)




西穂高岳の先は、ジャンダルムを経て奥穂高岳につながっている。
このルートは、たいへん危険で、毎年、滑落などで死者がでているのだ。
9月に滑落した登山者を救助しようとして、
岐阜県の防災ヘリコプターが墜落した事故は記憶に新しい。

(登山道の両側が切れ落ちていて、浮石が多くて、
足場がしっかりしていなくて、滑ったらピュ−って落ちていくのだろうか。)

朝早く着いた山頂では、
今日中に奥穂高岳まで歩く人たちが、食事を摂ったり、気合を入れなおしたりしていた。
60歳オーバーと見られる女性3人組は、裏山に遊びに来たふうな軽装備で先を進むし、
40歳代と見られる単独の男性は、ハーネスを着けながら、
「ホントは嫌なんですけどね」と不安そうだったし。

昨日、焼岳から西穂山荘までで、少し一緒になった中年女性3人グループとも出会って、
オイラが西穂高岳往復の計画だと言うと、
「あら、戻るの?」と、この先へ進まないことが意外だったようだ。
彼女たちは奥穂高岳まで進むそうだ。
西穂高岳、奥穂高岳の間のルートは、最難関ルートで、
装備と経験が十分な者だけが通ることが許されると考えていたけれど、
その実は、ハードルが低いものなのだろうか?
実際に歩いてみないと分からないけど・・・。
高いところ怖いし・・・。

来た道を戻ると、西穂高岳山頂までの往復と思われる人たちとすれ違ったけど、
中には3点確保さえも知らなさそうな、
「新穂高ロープウェイからちょっと足を伸ばして来ちゃいました。」なんて感じの軽装もいて、
オイラの登山に対する考えが慎重になりすぎてるのかなとも思ってしまった。

いや、「山と渓谷」や「夏山JOY」を読んでも、
遭難しない、事故を起こさない特集が毎回のように掲載されてるんだから、
死なないように気をつけなければ。
特に単独行では。


(西穂山荘名物の西穂ラーメン。醤油とトンコツ味があって、こちらはトンコツ味。)

もちろん醤油味は前日にいただいた。
ビールで1人乾杯し、達成感に浸るのだった。

下りは、帰りのバスの時間に間に合うため、
(楽するために、)新穂高ロープウェイで一気に下山し、
バスに飛び乗った。
隣の席のグループは、下山後の打ち上げを温泉で一泊してするそうで、
話が今晩の宴会のことで盛り上がってた。
グループ登山の楽しさは、こんなところにもあるのだろう。

バス乗り継ぎのために降りた栃尾温泉では、
次のバスが来るまでの20分間で3日間の汗を流そうと、
河川敷にある露天の温泉(荒神の湯)まで走り、
石鹸が使えないけど、お湯をかぶってスッキリしたのだ。
ただ、また走ってバス停に戻ったから、汗が吹きだしたけどね。
単独行の楽しさは、身軽な計画変更がきくことにもあるのだろう。

終点の富山駅の近くの繁華街で開いていた焼き鳥屋に入り、
ひとり打ち上げをして、締めくくったのだった。





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