「ねぇピーチ。他には何かないの?」
カービィが聞いた。
「ないことはないけど、これだけ離れてるととどかないわ」
ピーチが頭を抱えながら答える。リンクが転がりながら言った。
「じゃあ俺がいってくるよ」
「駄目よ!」
ピーチが叫んだ。突然のことにみんな驚いている。
「下手に近寄ってみなさい。あの白い息ですぐに氷付けよ」
みんな黙りこんでしまった。じゃあマリオはよかったのか?と聞いてはいけないことがわかった。沈黙が続く。誰もが何
か策はないか考えている。その間にもペンギンとの差はひらいていく。カービィが思いついた。
「ピーチ!マッチかライターもってない?」
「そんなもんあるわけないでしょ?火炎放射器しかないわよ!」
カービィはなんでそんな物があってライターが無いのかつっこみたくなったが、今はそんな時ではない。カービィは火炎
放射器をピーチからもらうと、それを口に含んだ。カービィの体が赤く燃え上がる。カービィを纏っていた炎が消えると、 頭には氷の帽子ではなく、燃え盛る炎の帽子をかぶっていた。
「ファイアカービィ見参!」
カービィの体の色もひんやりした水色から、熱気あふれる赤に変わっている。カービィがペンギンを確認する。ペンギン
は大分下の方を滑っている。大きく息を吸い込み、火の息を吐いた。それはペンギンが進む道の雪を溶かしていく。こ れはいい方法だ。火炎放射器ではとどかないところも、カービィの肺活量をもってすればこそできる技だ。スピードがつ いている状態で岩肌が剥き出しになったところを滑るわけにはいかない。
「スピードを落とさないとね」
カービィがにやりとした。ペンギンが雪の溶けたところに近づいていく。しかしペンギンはスピードをゆるめようとしない。
ついに一歩手前まできた。
「くぇーーーーーー」
ペンギンが口からあの白い息を吹き出した。
「なにぃ!?」
岩肌がたちまち氷付けにされ、その上をゆうゆうと滑っていく。
「しまった!」
「くぇっーくぇっくぇっくぇっくぇっ」
ペンギンが馬鹿にしたような笑いをする。差はどんどん広がっていく。
「・・・・あの野郎・・・・・・」
ピーチのこめかみが小刻みに震えている。
「いい度胸してんじゃねぇか」
カービィの体が灼熱の炎でつつまれていく
「どりゃーーーーーー」
スピードが上がっていく。カービィを取り巻く炎が尾をひいている。
「すげぇ・・・・・」
少しづつだが、ペンギンに追いついていく。
「ペンギンに凍らせられないかな?」
「あんだけ燃えてるんだから大丈夫でしょ」
ピーチの言うとおりだった。さすがにペンギンもあせって白い息を吹きかけるが、炎の勢いはとまらない。むしろ強くなっ
ている。ついにペンギンに追いついた。
「くらえーーーー」
しかしこれで決着がついては面白くない。炎が急に消えてしまった。ピーチ達はなにがおこったのか理解できない。そこ
にはカービィが倒れているだけだった。ペンギンは何事もなかったように滑っていく。
「カービィ。どうしたの?」
カービィに追いついたヤングリンクが聞いた。ピーチとヨッシ-も同じ事を思う。
「スノボーが燃えた」
「えっ?」
ヤングリンクが思わず言ってしまった。
「さっき燃えてたでしょ。あれはボク自身が燃えてるからボクは大丈夫だったけど、スノボーは耐えられなかったんだよ」
「なるほど」
とりあえず納得した。しかし納得している暇はない。
「カービィ。私に乗ってください。」
「ありがとう」
カービィは燃え盛る炎の帽子をとった。カービィの体が元のピンクに戻る。そのまま乗ったらヨッシーが火傷を負ってし
まうところだ。カービィがヨッシーに乗るとまた滑り始めた。ペンギンの位置を確認する。
「このままじゃやばいかもしれません」
ヨッシーが言った。
「なんで?」
「よく見てください」
ヨッシーが下をさした。かすかに光が見える。
「あれがなにかわかりませんが、洞窟の外というのは確かです」
「なんとか追いつかないと」
「でもどうやって?」
「簡単よ」
ピーチがにやりと笑った。
「下りるのよ!」
頭上で投げ縄をまわして、ヨッシーとヤングリンクにかける。そして飛び降りた。ピーチのもっている縄に引っ張られて、
他3人(1人+1匹+1個)が道連れになる。
「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー」」」
3人(1人+1匹+1個)が叫ぶ。魂を上においてきた気分だ。その時の様子は本気と書いてマジを読む状態だった。ペ
ンギンが滑っていると、前方に何か突き刺さっていた。とりあえず横を滑って避けていった。
「ねぇ。さっきより離れちゃったよ」
「あんた達がとろとろやってるからよ」
「さっきのは下りるじゃなくて、落ちるでしたよ」
ヨッシーやヤングリンクに雪がついている。
「だいたい1人だけパラソルなんて・・・・」
「第弐作戦決行よ」
カービィが抗議すると、ピーチがつぶやいた。
「で。これなに?」
ヤングリンクが紐をもって聞いた。大きな腹に紐が巻かれている。ピーチがきっぱりと答える。
「紐よ」
「それを俺に巻いてどうしろと?」
「引っ張りなさい」
ヤングリンクが何か言おうとした瞬間。思いっきり引っ張られていった。紐の先がペンギンについている。ヤングリンク
が雪に埋もれている。
「なんでもっと早く助けてくれなかったのさ」
真っ白になったヤングリンクの拳が震えている。
「いやぁ。あまりにもいい引っ張られぶりだったんで・・・・・」
カービィの言葉にピーチとヨッシーが頷く。
「あーもうすぐ下に着きますよ」
ヨッシーが下を覗き込みながら言う。全員がもう諦めていた。
「あっ!」
ヨッシーが言うか言わないかのところだった。突然爆音がして洞窟全体が揺れた。爆音は下から聞こえた。全員が下を
見ようとすると、真っ黒な物体が上昇してきた。そしてもう1つ巨大な影が上昇する。
「メテオアタッッッッッッッッック!」
あとからきた影が真っ黒の物体を叩きつける。衝撃波が出るほどの攻撃で、先ほど上昇した物体が、空気の渦を巻き
ながら降下した。床に思い切り叩きつけられた姿はペンギンのものだった。ピーチ達が唖然としていると、巨大な人が 話し掛けてきた。
「よっ」
Mと書いてある赤い帽子をかぶったそれは、前回あっけなく落ちていったマリオだった。巨大になったのは、スーパーキ
ノコを食べたせいだった。ピーチ達は言った。
「生きてたんだ」
下に見えた穴は、ヨッシーの言うとおり洞窟の外につながっていた。外は林で、林を突き抜けると、そこは山の上だっ
た。下にはペンションが見下ろせた。すると肩の力が一気に抜け、全員がその場に座り込んでしまった。
「疲れた・・・・・」
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