KenYaoの天文資料館


1997/6/21制作
1998/6/28更新

古代人の宇宙論

人類が初めて宇宙像を創出したのは、おそらくメソポタミアの肥沃な三角地帯に文明を築いた、バビロニア人たちでした。


古代バビロニアの宇宙

●シュメールの宇宙
5000年前、シュメール人は天地創造の神マルドゥクが創った「天球」と呼ぶ巨大な丸天井に星々が張付いていると考えた。毎日、太陽神シャマシュが朝になると東の青銅門を開けて山の彼方から現れ、夕方西の門から去っていく。
地上の中央には、人間が住む巨大な一つの大陸が横たわり、その中央には雪をいただく高い山がある。大陸の周囲は海で隔てられ、その外周にはアララット山が取り囲み、神々の住む外側の世界と隔たっていると考えた。

●暦と占星術
太陽・月・星の動きを観測して、その規則性を見つけ出して暦を作りはじめたのは、バビロニア人が最初だといわれている。

彼らが最も注目したのは、天球をさ迷う惑星であった。惑星の行動を記録するために、太陽の通り道である黄道の部分を約30度づつ12宮に分けて、各宮ごとに星座を考えた。
彼らは天体観測の記録を残しただけでなく、月の満ち欠けや惑星の行動を星座と結び付けて吉凶を占う占星術を作り出した。BC1000年ころには、占星術のテキスト「エヌーマ・アヌ・エンリル」というものがあったと伝えられている。


古代エジフトの宇宙

●太陽神ラー
4000年前、エジプト人は丸天井から個々の星が吊るされていると考えた。 船に乗った太陽神ラーが、昼間は天上、夜は地下世界をめぐる。天空は女神ヌートの体であり、星々はここから垂れ下がる飾りとされた。

●シリウス・サイクル
古代エジプトでは太陽の果たす役割が大きい。太陽暦が初めて採用されたのが、エジプトであることからもわかる。星の運行についてもかなり詳しい知識を持っていた。特に北半球で一番明るい恒星シリウスが太陽との位置関係で、同じ季節の同じ時間に昇ってくるのには、1461年という周期がかかることを知っていたようだ。
▼関連資料:シリウス


古代インドの宇宙

●須弥山
5000年前、インドでは、世界はとぐろを巻いた巨大なヘビの上に巨大なカメが乗っていて、その上に巨大な3匹の象が半球状の地球を支えていると考えた。地球の中心には須みせんという神々の住む山が聳え立ち、太陽と月がその周囲をめぐっていた。

インド最古の文明はBC1500年〜BC1500年ころ栄えたらしい。医術や暦術がかなり進んでいたらしいが、記録はないようだ。


古代中国の宇宙

●28宿と蓋天説
中国最古の王朝・殷(いん)の時代から天体や気象に基づく暦があったという。その後春秋・戦国の時代を経て、BC5世紀頃(諸子百家の時期)に占星術と共に天文学が発達し、天の赤道上の星座「28宿」が造られた。BC4世紀には甘徳(楚)、石申(魏)の2人が観測に基づいて全天の星を体系的に分類。星の一覧表「甘石星経」として後世に伝えられた。
中国最初の宇宙構造論は「蓋天説」(がいてん)と呼ばれた。天体はすべて北極を中心に東から西へ1日1回転し、太陽が天で描く円は夏至で最小、冬至で最大となる。

●蓋天説と渾天説
後漢時代になると蓋天説にかわって「渾天説」(こんてん)が唱えられた。 渾天説は実際の天球運動に一致する説で、張衡(後漢)が著した「渾天儀」に詳しいが、天地が全体として水に浮かんでいるという考えに問題があった。
この議論は後世になって、蓋天説と渾天説は結局同一であるといった方向に収束する。

●淮南子の宇宙論
BC2世紀頃、前漢の一族であった淮南王安(中国安寧省あたりの小国)の、諸説をまとめさせた書物「淮南子」(えなんじ)のには次のように書かれている。

・第1巻(斉俗訓):「往古来今を宙といい、四方上下を宇という。」

・第1巻(天文訓):「道は虚廓に始まる。虚廓は宇宙を生じ、宇宙は気を生ず。」

宇は3次元空間、宙は時間を意味している。
道は老子の流れを汲む根本思想であり、気は諸子百家共通の根本物質を表す言葉である。気が具体的にどういうものであるか明確に表現した文章はないが、現在の中国に生きている言葉で、物質であるとともに自ら動くエネルギィーをもつ。(現在の物理学で言う原子や素粒子といった発想はなかった。)



古代遺跡からのメッセージ

最近の研究で、世界各地にある古代の遺跡からも生活が想像できるようになってきました。古代人の天文上の知識がわかれば、当時の人たちの宇宙観がわかるかも・・・しれません。


▼参考文献
  • Edward Rosen/Lloyd Motz著「宇宙論全史 」1987(菊池潤/杉山聖一郎)、平凡社
  • 磯部王秀三著「宇宙を意図したのは誰か」1995、PHP
  • 桜井邦明著「天文考古学入門」1982、講談社現代新書
  • 舟山良三著「続・身近な数学の歴史」1996、東洋書店
  • 藪内清著「中国文明の宇宙観」(銀河宇宙オデッセイ4巻)1990、日本放送出版協会

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