健康保険は、疾病、負傷もしくは死亡または出産に関して保険給付を行うことで、国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的としていて、国民健康保険においても、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、被保険者の疾病、負傷、出産または死亡に関して必要な保険給付を行うことで、社会保障および国民保健の向上に寄与することを目的としています。
このほかにも「船員保険」「共済組合」「高齢者」などの公的医療保険がありますが、これらの各種健康保険(医療保険)のすべてが、労働者またはその被扶養者の業務災害や第三者の過失行為による傷害は保険給付の対象外で、
労働災害補償保険や損害賠償により治療などを行うことになります。
なお第三者とは、保険給付を必要とする人以外の人(家族を含む)のことですから、注意が必要です。
急性・亜急性の「運動器の外傷」に対する施術は、健康保険の取扱いが認められています。
柔道整復学では、外からの力を「一撃で運動器が耐えることができないであろう強い力」と「反復的に加わることで運動器が耐えることができないであろう弱い力」の2種に分けています。
1回の強い力で骨折する(急性)だけでなく、弱い力が反復して加わる事でも骨折を引き起こす(亜急性)のもこのためですが、このようなことは、すべての運動器に起こり得ることです。
外からの力にどれだけ耐えられるかは、人それぞれに違いがあるのはあたりまえですし、「同じ目的のための動作」も人それぞれに多種多用で、「自分の身体に合わせた危険の少ない効率的な動作」が行われていないことでも、日常生活の中で当たり前に繰り返している単純な動作だけで外傷を負います。
起き上がろうと頭を持ち上げる動作で頸を痛めてしまったとか、床に落ちている埃を拾う動作で腰や背中を痛めてしまったとか、座っていて横にあるものを持ち上げる動作で肩や背中を痛めてしまったとか、立ち座りの動作で腰や膝を痛めてしまったなどよく耳にする話ですし、花に水をやろうとジョーロに水を入れて持ったら腰の骨が潰れてしまったなどの重症例もあります。
特に、何らかの違和感を感じていた人ほどその危険性が高いにも関わらず、新たな状態の変化を以前からの延長と考えてしまいがちです。
また、日常生活で当たり前に繰り返している動作で外傷を負っていても、原因を自覚できずに放置をしてしまうこともあります。
しかし、何らかの要因が加わらない限り、状態の変化は起こり得ないことです。
このように繰り返し引き起こされる状態の変化が、「歳」とか「体型を含めた体質」とか「疲労」や「ストレス」だと放置していては、悪化することはあっても改善することはありません。
また最近では、肩こりや筋肉痛を「疲労性」や「ストレス性」と決めつけ、健康保険が使えないとよく聞きますが、これらは症状であって、疲労だけで起こるものではありません。
健康状態の判断を行う資格がなく、発言に法的責任を負わない一般の人(民間資格者を含めた法的な医療にかかわる資格のない人)の話を鵜呑みにして、大したことはないと自己判断をすることがないよう、くれぐれもご注意ください。
病気や外傷などは、「姿勢」や「ゆがみ」云々ではなく、そのものの治療などが必要です。
早期に治療などを受ける機会を失ったり、長期の治療などを受けなければならなくなったとしても、誰も責任を負うことはありません。
当院では、症状を引き起こす動作の確認や発生前後の状態(症状変化の有無)の聞き取りおよび視診や触診などで、健康保険が使用できるかどうかの判断をしています。
なお、保険医療機関を含め、判断に必要な行為は保険給付の対象となりますので、積極的にご利用ください。
判断の結果として、保険給付の対象とならない場合には、治療などの必要がないと解され、判断後の行為は保険給付の対象となりませんので、以降の治療などを希望される場合は自費で負担していただくことになります。
また、当院での施術対象でないものの、健康を害している(病気)と考えられる場合は、専門医を紹介します
症状を引き起こした原因を追究し、適切な施術を受けて、適切な知識を身に着けることで自己管理できるようになることが大切です。
なお当院では、 保険給付の対象とならない場合も健康管理に必要な情報提供をしております。
健康保険の加入者として、堂々とご来院ください。
当院での健康保険の使用は、病院などの保険医療機関と違い、療養費のによる「受領委任払い」による給付となります。
これは、被保険者から受領委任をしていただくことを前提としており、療養費の支給を申請する書類に「被保険者の氏名」と「連絡先(電話番号)」の記入をお願いしております。
【記入用紙】の説明を読んでいただき、ご納得できない点がありましたら、窓口でご確認ください。
また当院の利用の際は、療養費給付の一部負担金を記した領収書が発行されます。
ご自身の利用額の確認や各種保険者によるアンケート調査の回答資料などにご利用いただくためにも大切に保管してください。
加入している健康保険者からのアンケート調査について
各種保険者は、受領委任払い制度の適正な運用と制度の周知のため、被保険者に対して「アンケート調査等」を行っています。
整骨・接骨院の利用を否定するための「アンケート調査」ではありませんが、「筋肉痛」や「肩こり」などを「疲労性やストレス」と考えるように誘導し、これらは療養費給付の対象とならないなどの記載がされているようです。
しかし、これらはあくまでも症状で、外傷によっても引き起こされます。
当院が外傷と判断し、健康保険を利用して施術を受けられた場合、当院が説明した内容を正確に記載して回答していただければ何の問題もありませんが、「健康保険の取扱い」にも記載した「柔道整復学」に基づく説明を理解しないままに間違った回答をした場合には、療養費の給付を受けることができずに全額自己負担となりますのでご注意ください。
運動器に対する急性や亜急性の外力と外傷性症状が確認できなかった場合は、健康保険を取り扱うことはできませんので、自費で負担をして施術を受けていただくことになります。
施術料金は、健康保険で定められている料金(10割)を目安にご負担いただいています。
また、民間資格者のように「病気ではない人は誰でも来てください。ストレスや姿勢とゆがみのせいですよ。」と言いたいところですが、柔道整復師が専門とする、骨・筋肉・腱・靭帯・関節などの運動器に対する健康維持や増進を目的とした施術を自費で負担をしていただいて行っています。
なお当然ですが、健康を害している(病気)と疑われる場合は、「ストレスや姿勢とゆがみのせいで〜が弱っている」などと言う前に、専門医での検査をお勧めしています。
30年あまりの経験で、大した症状がなくても、服薬や手術を要した方をたくさん経験しています。
当院は、所属する団体を通じて「協定」を結び、労働災害補償保険の取扱いに必要な「指名柔道整復師」として登録しており、各種健康保険に準じて可能です。
労働災害補償保険は、労働者の保護と安全および衛生の確保などを図るという観点から、職場内や勤務中に起こった労働者の業務上の負傷、疾病、障害または死亡(業務災害)に関する保険給付および労働者の通勤(住居地の敷地を出た時点から)による負傷、疾病、障害または死亡(通勤災害)に関する保険給付ならびに二次健康診断等の給付が行われています。
なお、労災と認められない場合や第三者の過失行為による災害における事案ごとの対応が必要な場合があります。
労働災害補償保険の取扱いには、目撃者の証明と会社への提出が必要です。
また、自分では労働災害と思っても労働災害と認められない場合があります。
例:
業務上の負傷で腰痛が発生した場合は、次の2つを満たす必要があります。
(1)
業務遂行中に、通常の動作と異なる動作で、腰部に急激な力が作用して生じたと明らかな場合。 つまり、通常の労働作業での腰痛は労災となりませんが、通常は2人で持つて運ぶ物を他方のトラブルで急に重量負荷が増した場合や通常の重さより予想に反して重かったり軽かったりしたことで予想しえない負荷が加わった場合は労災となります。
(2)
腰部に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症もしくは基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められる場合。 つまり、もともと腰痛があった(慢性症状=変形性腰椎症など)人が、明らかな症状悪化が(1)に起因すると認められ場合は労災となります。
根拠となる条文
(労基則別表第1の2第1号または第3号1および2の原文=第三十五条関係)
一 業務上の負傷に起因する疾病
三 身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する次に掲げる疾病
1 重激な業務による筋肉、腱、骨若しくは関節の疾患又は内臓脱
2 重量物を取り扱う業務、腰部に過度の負担を与える不自然な作業姿勢により行う業務その他腰部に過度の負担のかかる業務による腰痛