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灯台守
 じゃあ、アナタには“警告”を。
1.
 山口は待合室に設けられたベンチに、数分前から座っている。
 人を待っていた。
 今日こそは、と思いながら、結局のところ、今日も。
 そんな無限回廊のような靄とした感情を、いつまでも水面下に留めていた。

「……あ? 何だこりゃ」

 気がつくと、山口はベンチに座っていた。
 病院の待合室に設けられた白いプラスチック製の、座り心地の悪いベンチ。
 数分前から腰を下ろしている、それは確かだった。

 だが、目の前の光景は、病院の白い室内ではなかった。
 今や病院ではなくなった、との言い方が正しいのかもしれない。

 まず、屋外であった。
 周りは閑散とした住宅街であり、床はアスファルトの舗装道路であった。
 住宅街はほとんどが塀に囲まれていて、内にも外にも、人の気配は全く無い。
 暑くは感じないが照り返す陽射しが強く、思わずして目を細めた。
 室内にいたはずの自分が、何を眩しがっていると言うのだろうか。

 訳も分からず、ふと横を見てみると、すぐ近くにバス停があった。
 まるで、今座っている白いベンチが、バス停備え付けのもののように見えてしまう位置である。

「……バスを待っている、夢か?」

 ぽつりと口にした台詞に、驚く。
 夢と自覚している夢なら覚めてもいいものだが、すっかり形を持った白昼の幻は、当分消えそうに無い。

 このまま待てどもバスは来ないことを、山口は無意識のうちに理解していた。
 とりあえずは、夢のシナリオ通りに、バス停の時刻表を確認する。
 平日は1時間に1本。
 携帯電話の時間を見ると、運の悪いことに、1時間1本のバスはほんの5分ほど前に出発してしまったようだ。

 唐突に、次のバスが到着するまでの間、どこかでヒマ潰しをしなければ、と思った。
 何か店でもあれば良いのだが、あいにく周囲は住宅街。
 そう都合の良い場所に、ヒマを潰せる店は、

「あった」

 あった。

 住宅街の正面、路地を50m進んだ先の行き止まりに、明らかに普通の住宅ではなさそうな外観のロッジハウスが立っている。
 整然とした住宅街にあって、塀に囲まれていない木造建築の建物は激しく景色から浮いている。
 今の今まで気付かなかったことが、自身で可笑しくなるくらいに、これ見よがしに立っていた。

 まぁこの際、建物が周りから浮いているとか、は、たいした問題ではない。
 バスの時間まではまだあるだろうし、と、山口はロッジハウスに向かって歩き出した。
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